ポップ・アイ

2017年シンガポール・タイ製作の作品です。

 

ポップ・アイ(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

大型商業施設などを設計してきたベテラン建築士のタナー。そんな彼も今は若手が台頭している会社では居場所がなく、妻ともマンネリ化。しょぼくれた毎日を送っていたとき、偶然にも路上で小さな頃に飼っていた象のポパイと出会います。すぐさま象使いからポパイを買い、自宅へ連れ帰りますが妻は大激怒。そんな状況が嫌になったタナーは、故郷にポパイを連れ帰ることを決意します。1人と1頭は無事に故郷へたどり着けるのでしょうか?

 

監督・脚本は、カーステン・タン。短編映画で様々な賞を受賞している今注目の若手監督です。現在はニューヨークへ拠点を移し、ジョルジオアルマーニのCMなども手掛けているそうです。

 

くたびれた人の好いおじさんのタナー役に、タネート・ワラークンヌクロ。元々は音楽関係の方で歌手や作曲、プロデューサーなどを行っており、タイ国内におけるプログレのパイオニアとしても有名な方のようです。

そしてなんといっても今作で大変重要な役ポパイを演じるのは、長年セレモニーの象としてキャリアを積んできた芸達者なボンちゃんです。今回が初の映画デビューとのことですが、物怖じせず堂々とした演技を披露しています。

 

ロードムービーで象が相棒役って凄いですよね、象にゆかりがあるタイだからこそ出来たって感じの作品でした。ストーリーもざっくり聞くとよくある感じなのですが、登場するキャラクターや出来事が中々面白く、不思議でもありちょっぴり悲しくて、だけど気分は爽やかになる。ロードムービーとして私が絶対に押さえてほしい箇所をしっかり押さえてくれた最高の出来栄えでした。

 

あと、なんといっても象のポパイがすっごく可愛いくて優しくて賢い‼

よれよれなタナーとさとうきびっぽいものを食べながら歩いているシーンは、象のはずなのに何故か妙に人間臭く感じて可笑しかったですし、タナーに直射日光が当たらないように日陰を作ってあげたり、倒れたタナーに鼻から水をぶっかけてあげるなど本当に優しく賢いのがもうたまらなく可愛かったです。

 

この映画に出てくるキャラクターたちは皆、暗いものを持っていて、それは安易に他人が触れてはいけないような代物です。ですが、この映画ではその代物をどうにかしようとするわけでもなく、只々その代物を持って歩いていくだけ。捨てることもせず、よいしょっと持っていくだけなのです。ロードムービーにありがちな自分を見つける的な出来事や解釈みたいなのが一切ないところが現実味があって私はよかったなと思いました。

 

象可愛い!という軽い気持ちで観た作品だったのですが鑑賞後は意外にも結構心に残りましたし、考えさせられる作品でした。考えさせられますが、後味が悪いとかそういった作品ではありませんのでその辺りはご安心してください。

 

日本ではあまり馴染みのない象と人間のダブル主演の作品、鑑賞後はきっとあなたも象が飼いたくなることでしょう。是非是非!