ローズマリーの赤ちゃん

1968年アメリカ製作の映画です。

 

ローズマリーの赤ちゃん (字幕版)

 

ざっくしあらすじ

ローズマリーと売れない役者のガイの若い夫婦がアメリカのアパートへ引っ越してきます。お隣のカスタベットとミニー夫婦はかなりの世話焼きでローズマリーは若干疎ましく感じますが愛想よく振舞います。そんな生活の中でローズマリーとガイは計画的に子どもを作ろうとしますが、ローズマリーは急に気分が悪くなり失神。失神している中でローズマリーは悪魔に犯される夢を見て気分は最悪でしたがなんとか懐妊します。新しい命に喜ぶローズマリーでしたが、隣人のカスベットとミニー夫婦のお節介は度を越してきており、よく分からない液体を「妊娠用ジュース」としてローズマリーに無理やり飲ませたり、産婦人科まで強制してくる始末。周囲の異常な行動に疑問を持ち、唯一信頼できる童話作家エドワード・ハッチに相談をしますが、その後彼は不可解な死を遂げてしまいローズマリーは得体のしれない恐怖へと押し進められてしまいます。

 

監督は皆さんご存知のロマン・ポランスキーポーランド出身のユダヤ人で、幼少期は第二次世界大戦真っ最中。家族はアウシュヴィッツ強制収容所へ収容され、自身は父がゲットーの有刺鉄線に穴をあけてくれたおかげで収容所行は免れましたが、ナチスの「ユダヤ人狩り」から逃れるための生活を強いられました。ゲットーでユダヤ人が一斉に逮捕された当時、ポランスキーの母親は妊娠していたそうです。なんだか、この作品に少しばかり影響しているような気もしなくはないですね。

ローズマリーを演じるのは、子供大好きでお馴染みミア・ファロー。彼女は最終的に14人の子供の母親になったそうで、その中の4人が実の子で後の10人は孤児で身体に障がいを持つ子も多くいたそうです。このように書くと印象が良いのでここで止めますが、もっと深く知りたい方はWikipediaへ飛んでみてください。この作品に劣らずなかなか不気味です。

 

お化けや怪物、幽霊なんてものは一切出てきません。(悪魔っぽいものはちらっと出てきますが)出て来るのは人間のみ。しかも、みーんな優しくて世話好きないい人達ばかり。怖いものなんて何一つないのです、信仰しているのが神ではなく悪魔ってだけなのです。

 

「人怖い系ホラー」の走りといった作品で、当時は特殊効果やスプラッタな演出が最大に盛り上がっていた時代だったと思いますがそれとは逆行するような演出だと思います。なんですが、まあ怖い。何が怖いって「これをやってあげるのが当たり前。」をドンドン押し付けてきくるところが気持ち悪いんですよね。あの「妊娠用ジュース」は強烈でしたね、だってヘドロじゃん!あれを断らずに飲むローズマリーも凄いですけどね。私なら絶対飲まない。

 

あと、妊婦っていう設定も巧妙でしたね。精神的・肉体的にもっとも不安定なりやすい時期のあの異常に神経質になる感じがたまらなくこの作品の世界観にマッチしていて更に不気味度を上げていた印象でした。ミア・ファローのあの痩せすぎなギスギスした感じもノイローゼ感が出ていましたね。

 

人間が悪魔の子を産むというトンデモな発想の映画なので、B級作品へ落ちてしまいそうなのですが、あえて「悪魔」という物体を表に出さないことで恐怖を煽ったのは素晴らしいと思いました。想像力が最大の恐怖ということなのでしょうが、その「想像させて怖がらせる」ところまで持っていくのを誤ると「ナニコレ(´Д`)?」となってしまいますが、その恐怖に陥れるまでの塩梅がとても上手くいった一例でしたね。

 

カルト的な人気を博した作品ですが、この作品が公開された翌年、ロマンの身に衝撃的な事件が起こってしまいます。犯人は特にロマンやシャロンに何一つ恨みはなく、人違いで殺害したとも供述していますが、この作品が引き金になった訳ではないというのも非常に気持ちの悪いタイミングです。

 

2019年8月30日にはクエンティン・タランティーノ監督作品「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」が公開されます。この作品ではシャロン・テート殺害事件のことも描かれているようです。「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を鑑賞する予定でまだ「ローズマリーの赤ちゃん」を未鑑賞であるのであれば合わせてご覧になることをお勧めします。きっと気味の悪さが増すと思われますよ。

 

是非是非。