ブリグズビー・ベア

 

2018年に公開された作品です。

 

ブリグズビー・ベア (字幕版)

 

ざっくしあらすじ

沙漠化した地球で父と母と小さなシェルターで暮らすジェームズ。彼の楽しみは毎週ポストに届く「ブリグズビー・ベア」のビデオ。日常に潜むあらゆる不思議なことは全てブリグズビーが教えてくれるので、ジェームズは何の疑いも持たず25歳になろうとしていたそんなある夜。警察がシェルターに押し寄せジェームズを保護し、両親は逮捕されてしまいます。実際は、25年前に誘拐され外の世界とは隔離し育てられていた被害者だったのです。初めての「外の世界」に困惑しっぱなしのジェームズ、そんな彼の唯一の望みは「ブリグズビー・ベアの最新作を観ること」それだけだった。

 

監督のデイブ・マッカリーと脚本のケヴィン・コステロと主演のカイル・ムーニーは中学校時代からの幼馴染だそうで、監督のデイヴ・マッカリ―はコメディユニットとしてyoutubeのチャンネルも持っているそうです。

偽父を演じたのは、あのマーク・ハミル!「ブリグズビー・ベア」のビデオの内容が若干SFチックなので、このキャスティングにはニヤリとしました。

 

誘拐・監禁モノと言えばブリー・ラーソンがオスカーを受賞した「Room」が記憶に新しいですが、本作はポップな誘拐・監禁モノとなっており、恐怖感はゼロです。主人公のジェームズの部屋なんかブリグズビーグッズで埋め尽くされており、とっても可愛い部屋なので私もここに住みたいと思ったほどでした。ジェームズが着てたブリグズビーのTシャツも可愛かったなぁ、結構本気で欲しいです。

 

25年も隔離されて生きてきた人間が、いきなり外の世界と触れ合わなければいけないなんて考えただけでも難しいですよね。ジェームズも最初は困惑してしまいますが、ここでも「ブリグズビー・ベア」の存在が彼を支えてくれます。

このブリグズビーは偽の両親の「愛の形」なんだと思うのです。方法は悪いのですが、ジェームズを純粋で想像力豊かな賢い子に育て、しっかり愛情を注いでいたことはジェームズというキャラクターがしっかりと表していましたし、逮捕されるときにマーク・ハミル演じる偽父がジェームズに掛けた言葉もジーンと来るものがありました。

 

スターウォーズシリーズでおなじみのマーク・ハミルですが、今作の演技は最高に良かったと私は思っています。何なら、スターウォーズよりいいと思います。短い出演時間ですがきっと記憶に残ります。

 

一つのことに向かって沢山の人の協力を得ながらドンドン突き進んでいくジェームズの姿は観ていて心がほっこりします。「ブリグズビー・ベアの半分は優しさでできている」と言っても過言ではないと思います。観終わった後はニッコリしたいなという気分の時にはもってこいの作品です。

 

是非是非

 

ジュリー&ジュリア

2009年公開の作品です。

 

ジュリー&ジュリア (字幕版)

 

ざっくしあらすじ

1949年アメリカ人のジュリア・チャイルドは食べることと料理が大好き。彼女は外交官の夫がパリに転勤になったのをきっかけにフランス料理を学び、その後500以上のレシピをまとめた料理本を出版し大ベストセラーになった女性です。レシピ本出版から約50年後、このジュリアのレシピを1年かけて制覇し、それをブログにしようと奮闘しているOLのジュリー・パウエル。彼女は刺激もなく、冴えない日常を少しでも変えるべく始めたブログはジワジワと人気になっていきます。

 

監督は、「ユーガットメール」「めぐり逢えたら」などのノーラ・エフロン

キャストは、粘り強く周りを明るくしてくれるジュリア・チャイルド役に「ディアハンター」「ソフィーの選択」「永遠に美しく」のメリル・ストリープ

冴えない派遣OLのジュリー・パウエル役に「魔法にかけられて」「メッセージ」「アメリカンハッスル」などのエイミー・アダムス

 

私も食べることが大好きで、映画や本を読んでいてもその作品の内容よりほんの少ししか出てきていない食べ物のことしか記憶していないときがあります。

例えば「戦場のピアニスト」は、パンとジャムをむさぼっているシーンや「ひまわり」では卵をたーくさん使ったオムレツ、「サンキュースモーキング」は星条旗が刺さったパイしか記憶に残っていなかったりします。

なので、ジュリアとジュリーが美味しそうに料理を食べているシーンは食いしん坊な私には最高でした。

 

料理や食べるだけではなく、一人の女性が自分の力でぐいぐいとステップアップし社会に出ていく過程やその難しさや葛藤も丁寧に描かれていました。特に、ジュリアが男性しかいない名門の料理学校へ入学し、周りからなんと言われようが持ち前の明るさとユーモアのセンスでどんどんと周囲の人間を虜にしていく姿には尊敬してしまいました。辛いときにユーモアで乗りきれる人ってなかなかいないと思います。

一方のジュリーは焦りや惨めさがダダ漏れなOLで、失敗するとすぐに泣きだすような女性です。ですがジュリアのレシピを作っていくにつれ、少しづつ明るい方向へ進みだしていくのですが、どうも私はこのジュリーに共感することができなかったのですよねぇ。

 

最初はブログでちょいと有名になりたい!という目的で始め、試行錯誤しながらレシピをクリアしていく姿は応援したくなるのですが、徐々にジュリアにも認めてほしい的なことをほのめかしていくのが卑しいなぁとしか思えませんでした。そりゃ、ジュリアに「不愉快だ」と言われても仕方がないですよね。

 

ジュリアはいろいろな困難を乗り越えてレシピを世に出したのに、その努力の結晶をドブに沈めるようなやり方で面白おかしくブログにされたらたまったもんじゃないです。(映画の中ではきれいな感じでブログを書いていましたが、実際はあまり品がいいとは言えない言葉を並べていたようです。)

 

ただ、メリル・ストリープはいつものように上手かったですし、エイミー・アダムスのショートヘアもとってもキュートで、「魔法にかけられて」の時よりも可愛かったです。海鮮モノが苦手な私ですが、この作品に出て来るロブスター?オマールエビ?(失念!)料理は食べてみたくなりましたし、カラフルなオーブントーストも捨てがたいです!

 

料理は苦手だけど、食べることは大好き!という人もこの作品を観たら簡単なものでもいいから何か作ってみようかな?という気分にさせてくれます。「失敗したって大丈夫!なんとかなるわ!」とジュリアが背中を押してくれます。

 

ボナペティ!

 

 

赤い風船

1956年公開の作品です。

 

 

ざっくしあらすじ

登校中のパスカル少年が街灯に引っかかっていた真っ赤な風船を見つけ、その風船を手に取ります。パスカル少年はその風船を大切に扱い、雨にも濡らさぬようにします。すると、赤い風船は感情を持ち合わせているかのようにパスカル少年の後をついていくようになり、パスカル少年と赤い風船の間には不思議な友情が芽生えます。

 

監督はアルベール・ラモリス。商品詳細にもあるように「白い馬」の監督でもあります。この監督、結構凄い方で、ヘリコプターでの撮影中の振動によるブレを起こさないようにしたシステムを開発したり、ボードゲーム「リスク」の発案者でもある方です。残念ながら、1970年に撮影中の事故でお亡くなりになっていますが、その撮影していた作品は奥さんと監督の息子でこの作品の主人公でもあるパスカル氏が引き継ぎ完成させています。

 

ジャケットや大まかなストーリーだけだと、とっても可愛らしい作品と思っていましたが、実は結構怖い作品なんです。

 

確かに、途中まではほんわかした可愛らしい展開なのですが、近所の悪ガキ達が登場してから物語は一変し、風船が攻撃されてしまうというなんとも非情な展開になります。必死に風船と少年は逃げるのですが風船は割られてしまい、少年はひどく悲しみます。

問題はこのあとなんですが、なんと!街中の風船がパスカル少年の元へ集まり、少年を空高く舞い上げ、飛び去ってしまうのです。

 

ハーメルンの笛吹き男」を彷彿とさせるラストシーンが妙に不気味でした。可愛らしいパスカル少年と健気な赤い風船が尚更そうさせてしまうのですが、無茶苦茶複雑な気持ちになりました。

 

一つ一つのシーンはとてもビビットな質感でどこをとっても絵になるシーンばかりですし、こんな不思議で不気味なストーリーを考えつくなんて凡人ではできないです。凡人であれば、きっとラストは誰もが「よかったぁ!」と思えるようなベーシックなものにすると思います。それをあえてしないところが凄いですよね。

 

外側は綺麗で可愛いけれど、中身を見たら声にならないほど気味の悪いおもちゃ箱のような作品、と私は思っています。これは、貶しているわけではなく最高の誉め言葉です。実際「ハーメルンの笛吹き男」の話だって、何世紀にも渡り伝え続けられていることでもわかるように、パッと見は可愛らしくてもよく見ると不気味で恐ろしいものに人は惹きつけられるようになっていると思うからです。

 

是非是非

 

 

 

 

アザーズ

2001年スペイン・フランス・アメリカ合作の作品です。

 

アザーズ [DVD]

 

ざっくしあらすじ

チャネル諸島ジャージー州。第二次世界大戦後、夫の帰りを待ち続けるグレースと娘のアン、息子のニコラス。3人は大きな屋敷で使用人不在の中ひっそりと暮らしていました。そこへ、3人の使用人が屋敷へ訪れます。その3人にグレースは屋敷での注意事項を話します。日光の光に弱い色素性乾皮症を患う娘と息子がいるためカーテンは絶対に開けないこと、部屋を移動するときは鍵を必ずかけること。この注意事項に不思議な顔をしながらも使用人3人は承諾します。しかし、この使用人たちが訪れてからというもの、屋敷では不可解な出来事が頻発。口酸っぱく言っていたにも関わらず、カーテンが全て取り外されていたり、物音や見知らぬ子供の泣き声などが聞こえるようになったため、グレースは神父を探しに村へ向かいます。その途中で出征したまま連絡が途絶えていた夫と遭遇し、そのまま屋敷へ戻りますが、翌日夫は忽然と姿を消してしまいました。何かかおかしいと気づき始めたグレースは驚愕の真実へ向き合い始めます。

 

監督は、「バニラ・スカイ」の元になった「オープン・ユア・アイズ」のアレハンドロ・アメナーバル。今作は、トム・クルーズが製作総指揮で参加しています。

完璧主義で神経質なグレース役に「誘う女」「アイズ・ワイド・シャット」「めぐりあう時間たち」のニコール・キッドマン。グレースのように厳しく、神経質な役が見事にハマっていました。

 

海外ホラーでは珍しくスプラッターな表現が一切無く、和製ホラーのような薄暗く精神的にくる感じの演出をしているのが斬新でしたね。特に、物置として使用している部屋でグレースがシーツを剥ぎ取っていくシーンは素晴らしかったです。あと、子供たちが色素性乾皮症という設定も良かったですよね。昼間なのに薄暗いと不自然になるところを見事クリアしていました。

 

私はニコール主演の作品の中でこの作品が一番好きです。若干充血している疲れ目の感じや、クラシカルで落ち着いたスーツは本当に素敵でした。ストーリーや世界観もドンピシャで大好きです。ミステリーの要素も入っている脚本なので、グレースと一緒になって謎を解いてく感じや、ホラーの展開もしっかり入っているのでダレるところが全くなかったのもよかったです。

 

単純な私は悪霊を退治するには一体どうしたらよいかとずっと考えていたのですが、あっさり裏切られましたね。監督の思うつぼでした(笑)。私的には大どんでん返しな展開だったので、観た当時は非常に心躍りました。

 

シックス・センス」も最後はどんでん返されましたが、「シックス・センス」とはまた違った世界観ですし、作中では終始霧がかっているので、夢の中にいるような幻想的な雰囲気がまた不安で不気味な印象を与えてくれます。

 

たった一人、現実を受け止められず困惑しっぱなしのグレースに対し、使用人たちが徐々に徐々に真実を知らせていく過程にゾクゾクが止まらなかったです。パンドラの箱を開けるときってきっとこんな感情なんだろうなと思いました。恐怖と真実を知りたい気持ちと不安が入り混じった、みぞおちがグッと底上げされるような感覚でしたね。

 

今日のように、悪天候で部屋が薄暗いような日にはもってこいの作品になっていると思います。作中と同じような薄暗い中で観ることをお勧めします!

 

是非是非!

 

 

メットガラ ドレスをまとった美術館

2017年公開の作品です。

 

メットガラ ドレスをまとった美術館(字幕版)

 

2015年にメトロポリタン美術館にて開催された「メットガラ」開幕までの8か月間に密着したドキュメンタリー映画です。

 

主な登場人物は、巷では「氷の心を持った女」などと言われている米ヴォーグ誌編集長のアナ・ウィンター。今回も凍てつくような言葉でビシビシとスタッフにダメ出ししています。

そして、メトロポリタン美術館衣装研究部門のキュレーター、アンドリュー・ボルトンは今回一番奔走しています。主役といって良いほどの活躍ぶりでした。

その他に、映画監督のウォン・カーウァイやデザイナーのジャン=ポール・ゴルチエカール・ラガーフェルドジョン・ガリアーノ、トム・ブラウンなどの錚々たるメンバーが出演しています。

 

観る前からアナ・ウィンターが出るというだけでなんだか緊張したのですが、鑑賞中もやっぱり緊張しました(笑)。怒鳴ったり、強い口調で話す訳ではないのですが、それがめちゃ怖い(笑)、歯に衣着せぬとは正にこのことと言わんばかりの物言いで周囲を統括していく様は、世界トップシェアのファッション誌で編集長やってるだけあるなと思いました。

 

そんなヴォーグ誌が主催する「メットガラ」は元々は内輪でしっぽりと行っていたパーティーだったものを、このアナが大規模なものへ変身させたものなんですね。なので、このパーティーに出席したいセレブは数知れず、チケットを求めてヴォーグに掛け合うセレブもいたりするほどの祭典へと成長しました。

 

この時のテーマは「中国」。首席キュレーターのアンドリューは中国へ足を運びリサーチしたり、政治的な意味合いを持ってしまう展示についてウォンに相談したりと目が回るような忙しさでした。この大忙しのアンドリューが所属しているのが、メトロポリタン美術館衣装研究部門です。

 

衣装研究部門などという部があることをこの映画で初めて知るほど、美術やファッション関係に無頓着な私には目に映るもの全てが物珍しかったです。この衣装研究部門は地下の窓もないような場所にあり、まるで倉庫のような雰囲気です。ですが、貯蔵している衣装はどれも目を見張るような美しさで、ドレスなどと言うものにまるで興味のない私ですらウットリしました。

 

「ファッションは芸術か否か」との論争もあるようですが、あの貯蔵されている衣装や展示されたドレスを見るからに、これは芸術と言っても過言ではないと私は思いました。それほど繊細で綿密に製作された服はずっと見ていたくなるような美しさと、気高さが感じられました。

 

この衣装をいかに美しく展示していくのか、これはキュレーターの腕の見せ所ですが、とっても大変そうでした。観ているこっちが胃が痛くなるほどスムーズにいかない会場設営、周囲の理解、細かな業務の多さ‼途中から「アンドリュー、がんばれ!君なら出来る!素敵だよ!」と応援している私がいました(笑)。

 

アンドリューは、彼のイヴ・サンローランのような風貌をしており、知的でやさしげで繊細な印象の方です。なので、あれだけの忙しさの中でトラブルに見舞われたら苛立ちを見せても不思議ではなかったのですが、決してそのような感情を見せずに仕事に打ち込む姿は、キャパシティがすぐオーバーしてしまう私にとって見習うべきところでした。

 

あと、アンドリューはよくトム・ブラウンのカーディガンやダウンを着用していたので、てっきりトム・ブラウンが好きなんだと思っていたのですが、実生活でのパートナだったんですね。それを知って心がほっこりしました。彼氏の作った服着てただけなんじゃん?もう、かわいいヤツめ(*´ω`*)!

 

肝心のメットガラですが、高価なドレスを着た歌手や女優や俳優、その他著名人が一堂に会する様はなんだか少し下品な印象を受けてしまいました。個人的な感想なのであまり気にしないでいただきたいのですが、上品な印象は受けなかったです。何故かというと、センスとドレスの着こなし勝負ではなく、露出で勝負!な女性が多かったのも要因かなと。もう、裸じゃない?と思ってしまうようなドレスでカメラの前でポーズをとっている姿からは気品やセンスを全く感じず、素敵な展覧会を作り上げたアンドリュー達に対して少し失礼ではないのだろうかとも思ってしまいました。収益などを考えば大成功なのでしょうが、あれだけの素晴らしい展覧会に対し、もう少し敬意を表することができる人物を招待してほしいなと感じました。

 

何か一つの目標に向かって突き進んでいくクリエイター達の姿を観るのは本当に感動します。鑑賞後は、ただの視聴者なのに自分もこの仕事に加わったかのような充実感を得られました。「ファッションが教えてくれたこと」や「ディオールと私」などがお好きな方は是非観るべき作品になっています。

 

是非是非!

ロープ 戦場の生命線

 

2015年スペインで製作された作品です。

 

ロープ 戦場の生命線(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

舞台は1995年の停戦直後のバルカン半島。“国境なき水と衛生管理団”の活動家たちが井戸に投げ込まれた死体を引き上げる作業中、あともう一歩のところでロープが死体の重さに耐えきれず切れてしまったものだから、さぁ!大変!予備のロープもなく、新しく購入しようとすれば「お前らに売るロープは無ぇ!」と追い払われてしまう始末。そんな中、一人の少年がきっかけでロープを入手することができる可能性が浮上し、活動家たちは生活用水汚染を食い止めるべく、少年の自宅へ向かうことになります。

 

監督は、スペイン出身のフェルナンド・レオン・デ・アラノア。今作では、監督兼脚本を担当し、監督自身初の英語作品となっています。また、第30回ゴヤ賞では脚色賞を受賞しています。

 

キャストは、国境なき水と衛生管理団のリーダー、マンブルゥ役にベニチオ・デル・トロ。今作でサラエヴォ映画祭・生涯功労賞を受賞しています。

ベテランイケイケ活動家のビー役にティム・ロビンス、正義感溢れる新人活動家ソフィー役にメアリー・ティエリー、アシスタント的な役回りをさせられている通訳ダミール役にフェジャ・ストゥカン、マンブルゥと肉体関係を持っている気の強い美人捜査官カティヤ役にオルガ・キュリレンコが出演しています。

 

またまたhagukiブログ再登場のトロさんとティムさん!今作も素晴らしかったです!まず、配役がジャストフィットしていましたね。もうみんなこの役者以外ダメっていうぐらい合ってました。

 

トロさんのあの大きな体とお腹、最高でしたね。よく、痩せたら良くなるのにという人は沢山いますが彼は逆です。痩せちゃダメです、このままの大きさをキープして頂きたい!包容力や貫禄が無くなってしまったトロさんなんて私は嫌です。そんなトロさんの役回りはリーダーのマンブルゥでしたが、本当に活動家として動いているのでは?と思うほど妙に冷静で余裕のある演技を自然にしていました。

 

ティムさんもグループの中で一番ユーモアがあって親しみやすく、知識も豊富な調査団員をイキイキとイケイケに演じていました。実際にビーのような人がいたらずっと一緒に行動したいタイプの人でしたね(笑)。

 

停戦中とはいえ一応戦場をフィールドワークとしているので、いたるところに戦争による人の醜さや悲惨さ、悲劇がちりばめられています。そして、彼ら活動団が主に関わるのが「水」です。生物にとって必要不可欠なこの「水」の安全を確保するべく働く彼らの周りでは、理解しがたい行動でこの「水」を悪用する輩が多くいます。でも、マンブルゥは言います「これが戦争だ」。

 

一般的な戦争映画は激しい戦闘シーンや目を覆いたくなるような暴力シーンが描かれますが、この作品では戦闘シーンも流血シーンも一切ありません。ですが、その描写がない故に人間の狡さや醜さや愚かさ、弱さ、不条理さが観ている者の胸に強く突き刺さります。フィクションではあるのですが、監督の書く脚本が本当に細かく秀逸なので「これはドキュメンタリーなのか?」と錯覚してしまう部分があるので、尚更胸が痛むのだとも思います。

 

ドキュメンタリーのようだと思ったのは、シリアスな場面ばかりだけではなかったのも大きかったです。現実的に考えるとずっとシリアスな場面ばかりが続くはずがなく、人間誰しも冗談を言ったり、へっぽこな間違いをしたりするのが普通で、ずーっと真剣な表情で真面目なことばかり言っている作品の方が非現実な感じがしますよね?この作品はそのシリアスとユーモアのバランスが絶妙でした。

 

劇中で流れている音楽も、バズコックスやラモーンズなどのロックが多く使用されていたのも素敵でした。バズコックスファンとしてはちょっと嬉しかったです(*´ω`*)

 

思い通りにいかないし、未来を悲観してしまいそうな現実もこの作品ではしっかりと描かれています。ですが、鑑賞した後は不思議と前向きになることができるのです。たぶん、彼らのように全力で現地の人々の生活を守るため奔走している活動家がいるということだけで、希望はまだ目に見えるところにあるような気がするのです。

 

是非是非!

 

ジェイコブス・ラダー

1990年アメリカで製作された作品です。

 

ジェイコブス・ラダー(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

郵便配達員として働くジェイコブ・シンガーは、ベトナム戦争での銃撃戦のトラウマから毎日悪夢にうなされていました。それと同じくして、ジェイコブの身の回りで不可解な出来事が頻発するようになります。そんなときに、同じ大隊の仲間ポールから連絡がありました。話を聞くと、ポールは自分と同じような悪夢や不可解な出来事を経験しており、自分だけではないことを確信。あの銃撃戦の日に何かが起こり、軍が何かを隠しているのでは?ジェイコブは真相を確かめるべく動き出します。

 

監督は、「危険な情事」「ナインハーフ」などを手がけたエイドリアン・ライン

キャストは、立ち上がるとワッ!デカい(゚Д゚)!なジェイコブ役に、「トップガン」「ミスティック・リバー」のティム・ロビンス。今作ではメガネ男子のビジュアルがとっても似合っていました。役者の他に「デッドマン・ウォーキング」では監督業もこなしており、オスカーにノミネートされている経験も持ちます。

ジェイコブの恋人で華奢なスタイルが素敵なジェシー役にエリザベス・ペーニャ。残念なことに2014年に肝硬変により55歳の若さでお亡くなりになっています。

ジェイコブが厚い信頼を寄せている整体師役にギャング映画の名バイプレーヤー、ダニー・アイエロ

その他、交通事故で亡くなったジェイコブの息子役で「ホームアローン」出演前のマコーレー・カルキンが出ています。

 

旧約聖書の「ヤコブの梯子」がベースになっており、旧約聖書に詳しい方が観るとまた違った印象を持つのかもしれませんが、この作品を見るまでは「ヤコブの梯子」という言葉すら知らない無知な人間だったのでおかげさまで一つ知識が増えました。

 

まず、旧約聖書というもの自体よく分からなかったのですが、要はキリスト教聖典としている「新約聖書」の元になったもので、ユダヤ教聖典としているものがこの「旧約聖書」なんですねー。へぇ~( ..)φ

ヤコブというのも旧約聖書の中に登場するヘブライ人の族長で、「ヤコブの梯子」もこの彼が夢に見た天使が上り下りしている、天から地まで至る梯子、あるいは階段。のことなんですね。ちなみに、ヤコブは英語にすると「ジェイコブ」となります。

 

なんか何処かで観たことのある世界観だなぁ。と思い調べてみたところ、大ヒットゲーム「サイレント・ヒル」はこの作品に強く影響を受けているようです。確かに、雰囲気が似ているクリーチャーがいましたわ。ちょっと納得。

 

サスペンスのコーナーに置いてあったので、サスペンスな気持ちで観ていたのですが、どちらかといえばホラーでした。ジャケットだってホラー要素満載ですよね、というかなんと秀逸なデザイン!一度見たら忘れられないです。

ストーリーも細かく骨組みがされており、観ている最中は夢なの?現実なの?妄想なの?なんなの?と混乱してしまいそうになるのですが、最後でちゃんと綺麗まとめてくれているので「結局何だったわけ(?_?)」とならずに済みます。

 

変なクリーチャーなんかが出て来るので不気味っちゃ不気味なのですが、何故不気味なのか、何故恐怖に慄くのか。この物語のベースが「ヤコブの梯子」この部分を考えばすぐ分かるのですが、生と死の葛藤を表現しているためなんですね。なので、安易に怖そうだから、気持ち悪そうだからだけで毛嫌いして観ない選択をしているのであればそれは大変勿体ないことをしていると思います。

 

主人公ジェイコブを演じるティムの演技もとても素晴らしく、生きることへの執着心や今まで生きてきた中での後悔や罪悪感など様々な感情が交差する役を見事に表現していました。こんなに辛い事ばかり起きていたらくじけそうになりそうなのに、ジェイコブは決して自暴自棄になったりしなかったのが印象的でしたし、死にそうになってもなんとか持ちこたえる様がタフでしたしね。

 

宗教的な要素がある作品はどうも苦手という方もいらっしゃるとは思うのですが、この作品は「ヤコブの梯子」をベースにしたというだけであり、本当に伝えたいメッセージは宗教的なことなんかではないと思います。なので、あまり気にせずに鑑賞してもらいたいです。ラストシーンは心にどっしりときますよ。

 

是非是非!