アザーズ

2001年スペイン・フランス・アメリカ合作の作品です。

 

アザーズ [DVD]

 

ざっくしあらすじ

チャネル諸島ジャージー州。第二次世界大戦後、夫の帰りを待ち続けるグレースと娘のアン、息子のニコラス。3人は大きな屋敷で使用人不在の中ひっそりと暮らしていました。そこへ、3人の使用人が屋敷へ訪れます。その3人にグレースは屋敷での注意事項を話します。日光の光に弱い色素性乾皮症を患う娘と息子がいるためカーテンは絶対に開けないこと、部屋を移動するときは鍵を必ずかけること。この注意事項に不思議な顔をしながらも使用人3人は承諾します。しかし、この使用人たちが訪れてからというもの、屋敷では不可解な出来事が頻発。口酸っぱく言っていたにも関わらず、カーテンが全て取り外されていたり、物音や見知らぬ子供の泣き声などが聞こえるようになったため、グレースは神父を探しに村へ向かいます。その途中で出征したまま連絡が途絶えていた夫と遭遇し、そのまま屋敷へ戻りますが、翌日夫は忽然と姿を消してしまいました。何かかおかしいと気づき始めたグレースは驚愕の真実へ向き合い始めます。

 

監督は、「バニラ・スカイ」の元になった「オープン・ユア・アイズ」のアレハンドロ・アメナーバル。今作は、トム・クルーズが製作総指揮で参加しています。

完璧主義で神経質なグレース役に「誘う女」「アイズ・ワイド・シャット」「めぐりあう時間たち」のニコール・キッドマン。グレースのように厳しく、神経質な役が見事にハマっていました。

 

海外ホラーでは珍しくスプラッターな表現が一切無く、和製ホラーのような薄暗く精神的にくる感じの演出をしているのが斬新でしたね。特に、物置として使用している部屋でグレースがシーツを剥ぎ取っていくシーンは素晴らしかったです。あと、子供たちが色素性乾皮症という設定も良かったですよね。昼間なのに薄暗いと不自然になるところを見事クリアしていました。

 

私はニコール主演の作品の中でこの作品が一番好きです。若干充血している疲れ目の感じや、クラシカルで落ち着いたスーツは本当に素敵でした。ストーリーや世界観もドンピシャで大好きです。ミステリーの要素も入っている脚本なので、グレースと一緒になって謎を解いてく感じや、ホラーの展開もしっかり入っているのでダレるところが全くなかったのもよかったです。

 

単純な私は悪霊を退治するには一体どうしたらよいかとずっと考えていたのですが、あっさり裏切られましたね。監督の思うつぼでした(笑)。私的には大どんでん返しな展開だったので、観た当時は非常に心躍りました。

 

シックス・センス」も最後はどんでん返されましたが、「シックス・センス」とはまた違った世界観ですし、作中では終始霧がかっているので、夢の中にいるような幻想的な雰囲気がまた不安で不気味な印象を与えてくれます。

 

たった一人、現実を受け止められず困惑しっぱなしのグレースに対し、使用人たちが徐々に徐々に真実を知らせていく過程にゾクゾクが止まらなかったです。パンドラの箱を開けるときってきっとこんな感情なんだろうなと思いました。恐怖と真実を知りたい気持ちと不安が入り混じった、みぞおちがグッと底上げされるような感覚でしたね。

 

今日のように、悪天候で部屋が薄暗いような日にはもってこいの作品になっていると思います。作中と同じような薄暗い中で観ることをお勧めします!

 

是非是非!

 

 

メットガラ ドレスをまとった美術館

2017年公開の作品です。

 

メットガラ ドレスをまとった美術館(字幕版)

 

2015年にメトロポリタン美術館にて開催された「メットガラ」開幕までの8か月間に密着したドキュメンタリー映画です。

 

主な登場人物は、巷では「氷の心を持った女」などと言われている米ヴォーグ誌編集長のアナ・ウィンター。今回も凍てつくような言葉でビシビシとスタッフにダメ出ししています。

そして、メトロポリタン美術館衣装研究部門のキュレーター、アンドリュー・ボルトンは今回一番奔走しています。主役といって良いほどの活躍ぶりでした。

その他に、映画監督のウォン・カーウァイやデザイナーのジャン=ポール・ゴルチエカール・ラガーフェルドジョン・ガリアーノ、トム・ブラウンなどの錚々たるメンバーが出演しています。

 

観る前からアナ・ウィンターが出るというだけでなんだか緊張したのですが、鑑賞中もやっぱり緊張しました(笑)。怒鳴ったり、強い口調で話す訳ではないのですが、それがめちゃ怖い(笑)、歯に衣着せぬとは正にこのことと言わんばかりの物言いで周囲を統括していく様は、世界トップシェアのファッション誌で編集長やってるだけあるなと思いました。

 

そんなヴォーグ誌が主催する「メットガラ」は元々は内輪でしっぽりと行っていたパーティーだったものを、このアナが大規模なものへ変身させたものなんですね。なので、このパーティーに出席したいセレブは数知れず、チケットを求めてヴォーグに掛け合うセレブもいたりするほどの祭典へと成長しました。

 

この時のテーマは「中国」。首席キュレーターのアンドリューは中国へ足を運びリサーチしたり、政治的な意味合いを持ってしまう展示についてウォンに相談したりと目が回るような忙しさでした。この大忙しのアンドリューが所属しているのが、メトロポリタン美術館衣装研究部門です。

 

衣装研究部門などという部があることをこの映画で初めて知るほど、美術やファッション関係に無頓着な私には目に映るもの全てが物珍しかったです。この衣装研究部門は地下の窓もないような場所にあり、まるで倉庫のような雰囲気です。ですが、貯蔵している衣装はどれも目を見張るような美しさで、ドレスなどと言うものにまるで興味のない私ですらウットリしました。

 

「ファッションは芸術か否か」との論争もあるようですが、あの貯蔵されている衣装や展示されたドレスを見るからに、これは芸術と言っても過言ではないと私は思いました。それほど繊細で綿密に製作された服はずっと見ていたくなるような美しさと、気高さが感じられました。

 

この衣装をいかに美しく展示していくのか、これはキュレーターの腕の見せ所ですが、とっても大変そうでした。観ているこっちが胃が痛くなるほどスムーズにいかない会場設営、周囲の理解、細かな業務の多さ‼途中から「アンドリュー、がんばれ!君なら出来る!素敵だよ!」と応援している私がいました(笑)。

 

アンドリューは、彼のイヴ・サンローランのような風貌をしており、知的でやさしげで繊細な印象の方です。なので、あれだけの忙しさの中でトラブルに見舞われたら苛立ちを見せても不思議ではなかったのですが、決してそのような感情を見せずに仕事に打ち込む姿は、キャパシティがすぐオーバーしてしまう私にとって見習うべきところでした。

 

あと、アンドリューはよくトム・ブラウンのカーディガンやダウンを着用していたので、てっきりトム・ブラウンが好きなんだと思っていたのですが、実生活でのパートナだったんですね。それを知って心がほっこりしました。彼氏の作った服着てただけなんじゃん?もう、かわいいヤツめ(*´ω`*)!

 

肝心のメットガラですが、高価なドレスを着た歌手や女優や俳優、その他著名人が一堂に会する様はなんだか少し下品な印象を受けてしまいました。個人的な感想なのであまり気にしないでいただきたいのですが、上品な印象は受けなかったです。何故かというと、センスとドレスの着こなし勝負ではなく、露出で勝負!な女性が多かったのも要因かなと。もう、裸じゃない?と思ってしまうようなドレスでカメラの前でポーズをとっている姿からは気品やセンスを全く感じず、素敵な展覧会を作り上げたアンドリュー達に対して少し失礼ではないのだろうかとも思ってしまいました。収益などを考えば大成功なのでしょうが、あれだけの素晴らしい展覧会に対し、もう少し敬意を表することができる人物を招待してほしいなと感じました。

 

何か一つの目標に向かって突き進んでいくクリエイター達の姿を観るのは本当に感動します。鑑賞後は、ただの視聴者なのに自分もこの仕事に加わったかのような充実感を得られました。「ファッションが教えてくれたこと」や「ディオールと私」などがお好きな方は是非観るべき作品になっています。

 

是非是非!

ロープ 戦場の生命線

 

2015年スペインで製作された作品です。

 

ロープ 戦場の生命線(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

舞台は1995年の停戦直後のバルカン半島。“国境なき水と衛生管理団”の活動家たちが井戸に投げ込まれた死体を引き上げる作業中、あともう一歩のところでロープが死体の重さに耐えきれず切れてしまったものだから、さぁ!大変!予備のロープもなく、新しく購入しようとすれば「お前らに売るロープは無ぇ!」と追い払われてしまう始末。そんな中、一人の少年がきっかけでロープを入手することができる可能性が浮上し、活動家たちは生活用水汚染を食い止めるべく、少年の自宅へ向かうことになります。

 

監督は、スペイン出身のフェルナンド・レオン・デ・アラノア。今作では、監督兼脚本を担当し、監督自身初の英語作品となっています。また、第30回ゴヤ賞では脚色賞を受賞しています。

 

キャストは、国境なき水と衛生管理団のリーダー、マンブルゥ役にベニチオ・デル・トロ。今作でサラエヴォ映画祭・生涯功労賞を受賞しています。

ベテランイケイケ活動家のビー役にティム・ロビンス、正義感溢れる新人活動家ソフィー役にメアリー・ティエリー、アシスタント的な役回りをさせられている通訳ダミール役にフェジャ・ストゥカン、マンブルゥと肉体関係を持っている気の強い美人捜査官カティヤ役にオルガ・キュリレンコが出演しています。

 

またまたhagukiブログ再登場のトロさんとティムさん!今作も素晴らしかったです!まず、配役がジャストフィットしていましたね。もうみんなこの役者以外ダメっていうぐらい合ってました。

 

トロさんのあの大きな体とお腹、最高でしたね。よく、痩せたら良くなるのにという人は沢山いますが彼は逆です。痩せちゃダメです、このままの大きさをキープして頂きたい!包容力や貫禄が無くなってしまったトロさんなんて私は嫌です。そんなトロさんの役回りはリーダーのマンブルゥでしたが、本当に活動家として動いているのでは?と思うほど妙に冷静で余裕のある演技を自然にしていました。

 

ティムさんもグループの中で一番ユーモアがあって親しみやすく、知識も豊富な調査団員をイキイキとイケイケに演じていました。実際にビーのような人がいたらずっと一緒に行動したいタイプの人でしたね(笑)。

 

停戦中とはいえ一応戦場をフィールドワークとしているので、いたるところに戦争による人の醜さや悲惨さ、悲劇がちりばめられています。そして、彼ら活動団が主に関わるのが「水」です。生物にとって必要不可欠なこの「水」の安全を確保するべく働く彼らの周りでは、理解しがたい行動でこの「水」を悪用する輩が多くいます。でも、マンブルゥは言います「これが戦争だ」。

 

一般的な戦争映画は激しい戦闘シーンや目を覆いたくなるような暴力シーンが描かれますが、この作品では戦闘シーンも流血シーンも一切ありません。ですが、その描写がない故に人間の狡さや醜さや愚かさ、弱さ、不条理さが観ている者の胸に強く突き刺さります。フィクションではあるのですが、監督の書く脚本が本当に細かく秀逸なので「これはドキュメンタリーなのか?」と錯覚してしまう部分があるので、尚更胸が痛むのだとも思います。

 

ドキュメンタリーのようだと思ったのは、シリアスな場面ばかりだけではなかったのも大きかったです。現実的に考えるとずっとシリアスな場面ばかりが続くはずがなく、人間誰しも冗談を言ったり、へっぽこな間違いをしたりするのが普通で、ずーっと真剣な表情で真面目なことばかり言っている作品の方が非現実な感じがしますよね?この作品はそのシリアスとユーモアのバランスが絶妙でした。

 

劇中で流れている音楽も、バズコックスやラモーンズなどのロックが多く使用されていたのも素敵でした。バズコックスファンとしてはちょっと嬉しかったです(*´ω`*)

 

思い通りにいかないし、未来を悲観してしまいそうな現実もこの作品ではしっかりと描かれています。ですが、鑑賞した後は不思議と前向きになることができるのです。たぶん、彼らのように全力で現地の人々の生活を守るため奔走している活動家がいるということだけで、希望はまだ目に見えるところにあるような気がするのです。

 

是非是非!

 

ジェイコブス・ラダー

1990年アメリカで製作された作品です。

 

ジェイコブス・ラダー(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

郵便配達員として働くジェイコブ・シンガーは、ベトナム戦争での銃撃戦のトラウマから毎日悪夢にうなされていました。それと同じくして、ジェイコブの身の回りで不可解な出来事が頻発するようになります。そんなときに、同じ大隊の仲間ポールから連絡がありました。話を聞くと、ポールは自分と同じような悪夢や不可解な出来事を経験しており、自分だけではないことを確信。あの銃撃戦の日に何かが起こり、軍が何かを隠しているのでは?ジェイコブは真相を確かめるべく動き出します。

 

監督は、「危険な情事」「ナインハーフ」などを手がけたエイドリアン・ライン

キャストは、立ち上がるとワッ!デカい(゚Д゚)!なジェイコブ役に、「トップガン」「ミスティック・リバー」のティム・ロビンス。今作ではメガネ男子のビジュアルがとっても似合っていました。役者の他に「デッドマン・ウォーキング」では監督業もこなしており、オスカーにノミネートされている経験も持ちます。

ジェイコブの恋人で華奢なスタイルが素敵なジェシー役にエリザベス・ペーニャ。残念なことに2014年に肝硬変により55歳の若さでお亡くなりになっています。

ジェイコブが厚い信頼を寄せている整体師役にギャング映画の名バイプレーヤー、ダニー・アイエロ

その他、交通事故で亡くなったジェイコブの息子役で「ホームアローン」出演前のマコーレー・カルキンが出ています。

 

旧約聖書の「ヤコブの梯子」がベースになっており、旧約聖書に詳しい方が観るとまた違った印象を持つのかもしれませんが、この作品を見るまでは「ヤコブの梯子」という言葉すら知らない無知な人間だったのでおかげさまで一つ知識が増えました。

 

まず、旧約聖書というもの自体よく分からなかったのですが、要はキリスト教聖典としている「新約聖書」の元になったもので、ユダヤ教聖典としているものがこの「旧約聖書」なんですねー。へぇ~( ..)φ

ヤコブというのも旧約聖書の中に登場するヘブライ人の族長で、「ヤコブの梯子」もこの彼が夢に見た天使が上り下りしている、天から地まで至る梯子、あるいは階段。のことなんですね。ちなみに、ヤコブは英語にすると「ジェイコブ」となります。

 

なんか何処かで観たことのある世界観だなぁ。と思い調べてみたところ、大ヒットゲーム「サイレント・ヒル」はこの作品に強く影響を受けているようです。確かに、雰囲気が似ているクリーチャーがいましたわ。ちょっと納得。

 

サスペンスのコーナーに置いてあったので、サスペンスな気持ちで観ていたのですが、どちらかといえばホラーでした。ジャケットだってホラー要素満載ですよね、というかなんと秀逸なデザイン!一度見たら忘れられないです。

ストーリーも細かく骨組みがされており、観ている最中は夢なの?現実なの?妄想なの?なんなの?と混乱してしまいそうになるのですが、最後でちゃんと綺麗まとめてくれているので「結局何だったわけ(?_?)」とならずに済みます。

 

変なクリーチャーなんかが出て来るので不気味っちゃ不気味なのですが、何故不気味なのか、何故恐怖に慄くのか。この物語のベースが「ヤコブの梯子」この部分を考えばすぐ分かるのですが、生と死の葛藤を表現しているためなんですね。なので、安易に怖そうだから、気持ち悪そうだからだけで毛嫌いして観ない選択をしているのであればそれは大変勿体ないことをしていると思います。

 

主人公ジェイコブを演じるティムの演技もとても素晴らしく、生きることへの執着心や今まで生きてきた中での後悔や罪悪感など様々な感情が交差する役を見事に表現していました。こんなに辛い事ばかり起きていたらくじけそうになりそうなのに、ジェイコブは決して自暴自棄になったりしなかったのが印象的でしたし、死にそうになってもなんとか持ちこたえる様がタフでしたしね。

 

宗教的な要素がある作品はどうも苦手という方もいらっしゃるとは思うのですが、この作品は「ヤコブの梯子」をベースにしたというだけであり、本当に伝えたいメッセージは宗教的なことなんかではないと思います。なので、あまり気にせずに鑑賞してもらいたいです。ラストシーンは心にどっしりときますよ。

 

是非是非!

 

 

ガンモ

 

1997年アメリカで公開された作品です。

 

ガンモ [DVD]

 

ざっくしあらすじ

舞台はオハイオ州ジィーニャ。竜巻が過ぎ去り、町はズタボロ状態。猫の肉を肉屋に売り小銭を稼いだりしているソロモンとタムラーを軸に、町に暮らす人々の不精な日々を見せつけられます。

 

監督は「KIDS」「ミスター・ロンリー」などのハーモニー・コリン。この作品が初監督作品で、自身も小人男性にからむ役で出演しています。

キャストは、ソロモン役にジェイコブ・レイノルズ、タムラー役にニック・サットン、バニーボーイ役にジェイコブ・シーウェル、トッド役にクロエ・ゼヴェニー。この作品でクロエは衣装も担当しています。

 

ストーリーなのですが、全くないと言ってよいほど何もないので「どんな映画?」と尋ねられても何と答えたらよいか返答に困る映画です。ただ、ふとした瞬間のワンシーンがとても絵になる作品なので、不思議なオシャレ感が漂っています。

 

バニーボーイがハンサムで可愛らしいのですが、特にセリフというセリフが無く、只々男の子が一人でダラダラ遊んでいるだけのキャラクターですが、インパクトの強いビジュアルなので記憶には残ります。ですが、特に必要なキャラクターかと問われるとそうでもないようなキャラクターです。他の登場人物全てに言えるのですが、この作品に必要なキャラクターはいるようでいないのです。

 

メッセージ性などは全くもってなく、だらしない貧困層の白人たちのやる気のない生活風景をダラダラと見せつけられます。たぶん、なんのセンスも持ち合わせていない監督がメガホンを取っていたら本当にただのホームビデオになっていると思うのですが、ホームビデオにまで成り下がらないのは、ハーモニーの手腕なのでしょうね。

 

意味が分からないシーンばかりなのですが、強烈なシーンは数多くありました。特に、ソロモンの入浴シーンは衝撃の何物でもありませんでした。まず、入浴って身体を清める為にするものだと思うのですが、ソロモンの浸かっているバスタブの湯がドブのように不潔な色をしているのです。緑?のような謎めいた色のバスタブに浸かりながら、母が作ってくれた見るからにマズそうなミートソースパスタと固めのネチャネチャしてそうなチョコレートバーを食べているシーンは今でも忘れられません。普通であれば、気に留めるであろう部分も何事もなかったかのように流してしまうところは貧困層にありがちではありますが、なかなか強烈でした(;´Д`)

 

びっくりするほど内容もなく、メッセージ性もない作品なので、ハッキリ言って面白くはないです。(この作品のファンの方スミマセン、素直な一個人の感想です(-_-;))ですが、この作品には強烈なシーンと謎のおしゃれ感が漂っており、どのシーンをキャプチャーしても絵になります。ブランドとコラボしてヴォーグの中に広告としてワンシーンを使用されていても不自然ではない感じです。なので、この作品のようにアート的な映像作品を作りたいと考えている方にとってはお手本のような映画ではないでしょうか。

 

バベットの晩餐会

 

1987年デンマークで公開された作品です。

 

バベットの晩餐会 [DVD]

 

ざっくしあらすじ

19世紀後半、晴れている日なんてないのでは?と思うほど常に曇り空が広がる小さな漁村に、牧師だった父の遺志を継ぎひっそりと慎ましく暮らしている美しい2人の姉妹がいました。そんな二人の元に、フランスから亡命してきたバベットと名乗る女性がメイドとしてやってきます。ある日、バベットがなんとなく購入していた宝くじが見事大当たり!思いもよらぬ大金を手にしたバベットは、そのお金で晩餐会の料理を作ることを計画します。

 

監督はガブリエル・アクセルデンマークのロイヤル・デニッシュ・シアターで演技を学んでいたようなので、最初は役者を目指していたようですがその後は脚本・監督を務めるようになります。2014年にお亡くなりになっていますが95歳と大往生でした。

主演のバベット役には、ステファーヌ・オードラン。1968年「女鹿」ではベルリン国際映画祭銀熊賞、1972年「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」では英国アカデミー賞主演女優賞を受賞するなど、とても実力のある方でしたが2018年に85歳でお亡くなりになっています。

 

淡々と静かにストーリーが進み、大きな出来事としては宝くじが当選するということぐらいなのですが、小さな村に住む人々の小さなコミュニティーでの小さな争いや嫉妬などがチラチラうかがえるところがなんとも可笑しくて可愛らしくて面白いので、振り返ってみれば淡々としていたなぁと思うのですが、観ている最中はあまりそのような感覚はありませんでした。

 

主人公のバベットはパリの動乱で家族を失ってしまうという悲しい過去があるのですが、彼女は悲しみをあからさまに表に出すことはありません。むしろ、明るすぎず暗すぎず、ちょうどよい人柄で他人に好感を持たせることができる女性です。しかも、パリでは優秀なシェフでした。あの時代に、男社会でも埋もれることなく仕事ができるほどの女性なので、頭も良かったのでしょうね。ただ、この作品はそういったハリウッドなどでクローズアップされがちな部分には全く焦点を当てません。さらっと流してしまうのですが、そこがなんだかおしゃれですよねぇ。

 

あと、晩餐会だけあって料理も素晴らしく美味しそうなものばかりでしたね。普段姉妹が食べているものといえば、パンと魚をすり潰し、ドロドロにしたまるで泥のようなおかゆ。牧師であった父の影響で禁欲的な生活をしている2人の食生活はこのおかゆがメインです。村の人々も慎ましい食生活だったのでしょう、バベットが用意した食材の数々を見て恐れ慄いてしまいます。私も活きのいいウミガメを見たらちょっと引いてしまいます(笑)。

 

ですが、シェフという人は本当に凄いですよね。あのウミガメを琥珀のように美しいスープに変身させてしまうのですから、そりゃあたまげますわ。日本ではパンケーキといえば甘いスイーツとしての立ち位置が主ですが、この作品では小さなパンケーキの上にキャビアサワークリームを乗せたものが登場していました。メインとして出されていたのも日本ではあまり馴染みのないウズラとトリュフのパイ。どこからナイフを入れるのが正解のなのだろう?と悩んでしまうようなフォルムでしたが、どれも美味しそうなものばかりでした。

 

あと、この作品の中で一番食べてみたい!と思ったのが、ラム酒のサヴァランです!クグロフ型のサヴァランの中心部分にラム酒のシロップかな?をたーっぷりと注いで食べるのですが、なんともまぁ美味しそうなこと!普段ケーキ屋さんでもあまりお目にかかれないサヴァランなので、この作品でこんな素晴らしいサヴァランを見たら無性に食べたくなって仕方がありませんでした(;´Д`)

 

最後に、大金を手にしたバベットが自分たちの元を離れてしまうことを寂しく思う姉妹に、お金は全て晩餐会で使い果たし、ずっと姉妹に従えることを告げます。私はこのシーンを観て不思議な達成感を感じられました。晩餐会が終わったあとの村人たちの幸せそうな笑顔と、独り一服をするバベットの姿が尚更達成感を感じさせたのだと思うのですが、普段の生活でも料理を作り、食べた後は「やり切ったぞ!」といつも思います。「生きることは食べること」それを再確認させてくれる作品でもあります。

 

作るのも、食べるのも全てが億劫になり心が荒んでいる時に是非観てほしいと思います。見た後には「ちょっと何か作ってみようかな?」なんて気持ちになっているかもしれませんよ?

 

是非是非!

 

 

ボーダーライン

 

2015年に公開された作品です。

 

ボーダーライン(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

誘拐事件の捜査がきっかけでFBI捜査官のケイトは、エルパソに身を置いている麻薬カルテルの親玉の捜査に参加することになります。エルパソでは違法な捜査が当たり前のように行われており、ケイトは面食らってしまいます。特にルール無用で作戦を進めているのが所属不明のコロンビア人、アレハンドロ。アレハンドロは高い戦闘スキルや直感が冴えており、頭の回転も速く、FBI捜査官であるケイトの権限までをも上手く利用します。そんな違法な捜査法を受け入れることのできないケイトは善悪の区別が分からなくなってゆきます。

 

監督は「プリズナーズ」「メッセージ」「ブレードランナー2049」などのドゥニ・ヴィルヌーヴ。今作ではリアルなアメリカとメキシコの麻薬戦争を描いています。

メインキャストは、何の説明もなく地獄のようなメキシコへ放り出されたバツイチFBI捜査官ケイト役に、「プラダを着た悪魔」「オール・ユー・ニード・イズ・キル」「メリーポピンズ・リーターンズ」のエミリー・ブラント

静かなる正体不明のコロンビア人アレハンドロ役に、「ユージュアル・サスペクツ」「トラフィック」「チェ」などの、ベニチオ・デル・トロが出演しています。

 

あまりメキシコという国を知らなかったので、作品を観始めたときはケイトと同じく面食いましたね。治安のよい国ではないということは知ってはいましたが、ここまでとは…。何かの広告のように死体がぶら下がっている国って一体どうなっているのだ?映画だから?と思っていましたが、テレビ番組で丁度メキシコ麻薬カルテルの取材が放送されているのを観たら映画のシーンと全く同じ風景だったので、メキシコではこれが平常運転なんだと確信しました。

 

それにしても、こういう犯罪モノの作品を観ると警察の汚いやり口がこれでもかっ!と見せられるので何も信用できなくなりますよね。カルテルも警察も大して変わらんし、どっちも怖いし(;´Д`)

 

怖いといえば、トロさんの眼つきが凄かったですね。ゴルゴも怯むんじゃないかってぐらいの殺気でした。平気で淡々とむごいことを行う感じがもう、たまらんですな。エミリーの男勝りで気の強い感じもピッタリでしたね。顔つきだとは思うのですが、優しい女性の役より、気の強い冷たい感じの役が彼女には合っていますよね。

 

一応、R15指定の作品なので、どぎつい描写も多くあるためグロ耐性がない人には不向きかなとは思います。でも、よくあるアクションやそういったどぎつい描写だけに頼っている作品ではなく、しっかりしたストーリーや技量の高い俳優たちが演じているので、重厚でリアルなクライムアクションものに仕上がっている印象を受けました。

 

続編もあるようですが、予告を観るかぎりちょっとがっかりと言いますか、あれ?こんな感じだったっけ?なんか違う…、これじゃあブルース・ウィリスが出るような作品と変わらないんじゃ…と思ってしまいました。予告だけなのでなんとも言えないですが、今作が整い過ぎていたのでハードルがどうしても上がってしまいますね。でも、トロさんは続編でもとてもカッコよかったのでその点については安心です!

 

是非是非!