プルートで朝食を

 

2005年アイルランド・イギリス製作の作品です。

 

プルートで朝食を(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

教会の前に捨てられてしまった孤児のパトリック・“キトゥン”・ブレイデンは小さな頃から可愛いワンピースやキラキラしたスパンコールが大好き。ちなみに、似合うリップの色はピンク。そんな彼を里親や周りの人々は化け物扱い。そんなある日、ふとしたことから自分の母親の住所が判明、キトゥンは母を訪ねてイギリスの大海原へ旅に出ます。

 

監督は、『クライング・ゲーム』『インタビュー・ウィズ・バンパイア』のニール・ジョーダン。主演は我らがシャイ界の星キリアン・マーフィーです!

 

最近では、『ピーキー・ブラインダーズ』でゴリゴリのハードボイルドを演じており、キリアンの過去作をあまり知らない方はちょっと驚きだと思いますが、あのトーマス・シェルビーと同一人物ですぜ!しかも、来年の夏にはキリアン大好き!でお馴染みのクリストファー・ノーラン監督作品『オッペンハイマー』で主演ですよー!喜ばしいですな。

 

今作品では、見た目は男!中身は女の子!なキトゥンを演じています。この作品を撮るにあたって女性の仕草や話し方を研究し、ドラァグ・クイーンの方達と数週間過ごし彼らと一緒にクラブへ行ったりしていたそう。この他にも、劇中でキトゥンがホームレスになってしまう流れから自身もキトゥンと同じようにホームレス同然の生活を送るなどかなり綿密に役作りをしたというから役者は本当に凄いですよね。

 

凄いといえば、キトゥンの女装が綺麗!大半はクリクリのカーリーヘアの可愛い子って感じなのですが、後半の見世物小屋でのブロンド姿がとっても綺麗なんです。このような変装系の作品は役者もそうなのですが、裏方のヘアメイクだったり衣装だったりカメラワークだったり、いろいろなプロの仕事を分かりやすく体感出来る感じがします。特に女装系の作品は角度が重要な気がするので、その辺りのカメラワークは撮影監督の腕に掛かってきますし、メイクもそのキャラクターによりますが今回のキトゥンのメイクはバリバリのドラァグクイーンとは違いナチュラル目に仕上げており、その方が濃いメイクより女性らしく映っていたのでやはりプロの仕事は凄いなと思いました。衣装も時代背景が70年代ということもありレトロでサイケデリックなアイテムが多く、おしゃれが大好きなキトゥンは制服のセーターの襟もとにスパンコールやボタンやチャームを沢山縫い付けていてとっても可愛かった!あのセーター欲しい!!

 

キトゥンの生い立ちや降りかかるアクシデントはかなり悲惨なものばかりですが、性格は抜群に明るく前向き、チャーミングで彼を知れば知るほど好きになる。そんなキャラクターですが、物語の終盤リーアム・ニーソン演じる父親との対話でその性格は自己防衛故のものでもあったのだなと分かるシーンはノーマルな人間には到底理解できない苦悩や悲しみ、辛さがほんの数分で強く伝わってきます。キトゥン自身シリアスな世界はもう嫌!と言っていたように結構大変な目に遭っていても決してシリアスに受け止めようとはせず「自分の人生は物語の一部、そう思わなきゃやってられないわ。」と自分を俯瞰的に見つめていたのも印象的でした。

 

悲しいことが多すぎる今作ですが、私がかなり悲しかったのは友達のローレンスの死です。ローレンスは小さなころからキトゥンと仲良しでキトゥンを真っすぐに受け止めてくれる存在。そんなローレンスはロボットが大好きな子だったため、IRAが仕掛けた爆弾除去のロボットに近づこうとして亡くなってしまいます。親友のチャーリーやアーウィンも登場しますが、キトゥンが警察から酷い尋問を受けている最中やクラブで踊っている時にもキトゥンの心の中には楽しそうに笑っているローレンスが出てくることから、唯一心安らぐ存在がローレンスだったのだなと思うと余計泣けてくるのです。

 

悲痛なストーリーではありますが、キトゥンの明るさで作品自体はとてもポップで湿った空気感はあまり感じず、物語が後半になるにしたがって、強い陽が差し込んでいるカーテンを、一気に開けた時のような眩しさを思い起こさせる最後になっているので、少し気がめいっている時にお勧めです。

 

是非是非!