ジュディ 虹の彼方に

2020年公開の作品です。

 

ジュディ 虹の彼方に(字幕版)

 

 

ざっくしあらすじ

オズの魔法使い」で一躍有名になったジュディ・ガーランド。しかし、度重なる遅刻や薬物中毒などの乱れた生活により映画業界から総スカンを食らい、娘と息子を育てるべく細々と巡業をし日銭を稼ぐ日々。住むところもなく、元夫に頼らざるを得ない状態に陥っていた1968年。周りの勧めもあり起死回生を図るべくロンドンでの5週間にも及ぶコンサートを行うことを決意する。

 

もう、映画が始まった途端からじんわりと目頭が熱くなりました。げっそりと頬のコケたジュディが日銭を稼ぎ、賢明に子どもを育てようとしていたとは…。ライザ・ミネリのことは知っていたのですが、ライザの他に2人も子どもがいたのですね。この作品で初めて知りました。この作品のおかげもあってか今は修正された記事が多いのですが、数年前に彼女のことを調べたことがありました。そこには彼女についてあまり良く書かれた記事が無く、さらっと目を通しただけでは我儘で奔放な女優というイメージを根付かせるような記事が多かったと記憶しています。決してそんなことはないのに。ひどい話です。

 

そんな彼女をこの作品は救ってくれたのではないかな?と私個人は思いました。ジュディ・ガーランドという一人の素晴らしい才能を持った女優が、自分の私利私欲しか考えていない人間たちのせいでギリギリのところまで追いつめられていたという状況を分かりやすく描いていていました。作中でジュディが「あなたたち男性は何か努力をしたの?いつも私が成し遂げたことを、さも自分が成し遂げたかのように手柄にするじゃない!」というセリフがあるのですが、正に彼女の人生は手柄を横取りされることの連続だったと思います。親や映画会社から搾取されっぱなしで、自身の自由なんてどこにもない生活、挙句の果てには薬物まで無理やり与えられる始末。彼女の葬儀の時には、参列者が「やっと遅刻せずに出てきたな。」と囁かれていたなんて話もあったようで、みんなが彼女をサンドバックにしているような感覚さえあります。恐ろしい世界です。

 

ただ、彼女の力強く痛快な気分にさせてくれるあの歌唱力だけは誰にも文句を言わせない凄みがありました。晩年のあの華奢でボロボロな体を奮い立たせるように歌う姿はとても印象的です。今回レネー・ゼルヴィガーがジュディを演じ歌唱部分も吹き替え無しで挑んでいましたが、もう素晴らしいの一言に尽きます。ジュディの無知故に騙されてしまう世間知らずなところや、孤独に耐え切れず人の愛情に飢えている乾燥した感じがとても良く伝わってきました。流石レネーです。

 

「母を殺したのはハリウッドだ」娘のライザはこう言っていました。私もそれには同感してしまいます。しかし、ジュディは天性のエンターテイナーでもありました。血反吐を吐き続けながら舞台に立つのはさぞ苦しかったことでしょう。でも、ジュディはそれを選んでしまう、選ばざるを得なかったのか?本当の事は本人にしか分からないでしょう、でもジュディ・ガーランドという人は生粋のエンターテイナーであり、私の心の中にいる可愛らしいドロシーでもあるということは紛れもない事実なのです。