A GHOST STORY

2017年アメリカ公開の作品です。

 

A GHOST STORY / ア・ゴースト・ストーリー(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

1軒の平屋に住む2人の夫婦。ある日、夫が自動車事故により死亡し、シーツを被ったゴーストとして妻と共に暮らした家で1人彷徨ってしまいます。

 

キャストはベン・アフレックの弟、ケイシー・アフレックがゴースト役で。ルーニー・マーラは妻役で出演しています。

 

私の苦手なジャンル「ラヴロマンス」の棚に置かれていましたが、ジャケットの可愛いオバケに惹かれて手に取りました。ハッキリ言ってそこまで期待していなかったのですが、予想を上回る良き作品でした。セリフはほとんどなく、にぎやかな作品が好きな方は8割の確率で寝てしまうと思われますが、夢の中のようなテンポにもアレルギー反応を起こさない方でしたら観れる作品です。

 

「ラヴロマンス」のジャンルではあるのですが、どちらかというと「ヒューマンドラマ」のジャンルの方がしっくりくると思いました。タイトルの通り、オバケになった男が彷徨い孤独に過ごすストーリーなのですが、本当に淋しいんです。よく、「地縛霊」というのを目にしたことがあると思うのですが、まさに、地縛霊になってしまったオバケの一生が描かれています。

 

この中で、隣の家のオバケも登場するのですが、そのオバケが言うには人を待っているけれど、その人ことは覚えていないとの事。オバケ同士のやり取りは、セリフではなく字幕での表現だったのですが、ここのシーンがとてつもなく健気で可愛らしくて、哀しいんです。オバケのビジュアルは、ハロウィンシーズンに売り出されるキャンディーのパッケージに描かれているようなもので、表情なんて全くないはずなのに何故かとても表情豊かな印象でした。あと、待ち人を忘れてしまうほどの長い年月の間ずーっと待ち続けているオバケが可哀想で可哀想で…。鼻の奥がツンとしてしまいました。

 

生きていれば先があるけれど、死んでしまったらそこまでなんですよね。「亡くなったあの人もあなたに前に進んでほしいと願っているわ。」なんてセリフもよくありますけど、きっと死んだ方はそんなこと考える余裕なんてなくて、どこに自分の居場所があるのか?どうすれば、この孤独から抜け出すことができるのか?どうすれば、大切な人と触れ合えることができるのか?このようなことを考えながら彷徨っているのだと思います。劇中は、とにかくオバケが悲しそうで、「家で一緒に暮らさない?新しいシーツも買ってきてあげるからさ!」と言ってあげたくなるほどでした。シックスセンスがもし私にあって、この作品のようなオバケだったら絶対言ってましたね。

 

怪談話でも時々あるように、何か生前にやり残した、納得できないこと、などが解消されてやっと冥土に行けるという法則はアメリカでも共通だったようで、家が取り壊しになり隣の家のオバケはやっと待ち人は来ないことを理解し受け入れ、「もう、来ないみたい。」とつぶやいてフワッと消えてしまうのですが、もう寂しく待たずに済むねぇ良かったねぇ(*´ω`*)と思うと同時に、このオバケは結局待ち人と会えなかったのかぁと思うと悲しみがこみ上げてきました。本当、とても切ないシーンでした。

 

特別派手なシーンや演出もなく、映されているのは死んだ男がオバQのような見た目になり、時空なんかも無視して彷徨うだけですが、こうやってオバケは誕生するのか!!とか、自分の居場所の重要性だったり、生きているうちにしこりは残さないように大事な人とはできるだけ話をし、想いを伝えることの大切さを再確認できる作品でした。

 

愛する人が幽霊になる系の作品だと、有名なデミ・ムーアパトリック・スウェイジの「ゴースト」がありますが、本作は「ゴースト」のようなロマンティックなストーリーでは全くないですし、セリフもほとんどないのですが、観ているうちに目が離せなくなる不思議な美しさと悲しさと光があります。可愛らしくて悲しきゴーストの行方を見届どけてあげてください。

 

是非是非!