バベットの晩餐会

 

1987年デンマークで公開された作品です。

 

バベットの晩餐会 [DVD]

 

ざっくしあらすじ

19世紀後半、晴れている日なんてないのでは?と思うほど常に曇り空が広がる小さな漁村に、牧師だった父の遺志を継ぎひっそりと慎ましく暮らしている美しい2人の姉妹がいました。そんな二人の元に、フランスから亡命してきたバベットと名乗る女性がメイドとしてやってきます。ある日、バベットがなんとなく購入していた宝くじが見事大当たり!思いもよらぬ大金を手にしたバベットは、そのお金で晩餐会の料理を作ることを計画します。

 

監督はガブリエル・アクセルデンマークのロイヤル・デニッシュ・シアターで演技を学んでいたようなので、最初は役者を目指していたようですがその後は脚本・監督を務めるようになります。2014年にお亡くなりになっていますが95歳と大往生でした。

主演のバベット役には、ステファーヌ・オードラン。1968年「女鹿」ではベルリン国際映画祭銀熊賞、1972年「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」では英国アカデミー賞主演女優賞を受賞するなど、とても実力のある方でしたが2018年に85歳でお亡くなりになっています。

 

淡々と静かにストーリーが進み、大きな出来事としては宝くじが当選するということぐらいなのですが、小さな村に住む人々の小さなコミュニティーでの小さな争いや嫉妬などがチラチラうかがえるところがなんとも可笑しくて可愛らしくて面白いので、振り返ってみれば淡々としていたなぁと思うのですが、観ている最中はあまりそのような感覚はありませんでした。

 

主人公のバベットはパリの動乱で家族を失ってしまうという悲しい過去があるのですが、彼女は悲しみをあからさまに表に出すことはありません。むしろ、明るすぎず暗すぎず、ちょうどよい人柄で他人に好感を持たせることができる女性です。しかも、パリでは優秀なシェフでした。あの時代に、男社会でも埋もれることなく仕事ができるほどの女性なので、頭も良かったのでしょうね。ただ、この作品はそういったハリウッドなどでクローズアップされがちな部分には全く焦点を当てません。さらっと流してしまうのですが、そこがなんだかおしゃれですよねぇ。

 

あと、晩餐会だけあって料理も素晴らしく美味しそうなものばかりでしたね。普段姉妹が食べているものといえば、パンと魚をすり潰し、ドロドロにしたまるで泥のようなおかゆ。牧師であった父の影響で禁欲的な生活をしている2人の食生活はこのおかゆがメインです。村の人々も慎ましい食生活だったのでしょう、バベットが用意した食材の数々を見て恐れ慄いてしまいます。私も活きのいいウミガメを見たらちょっと引いてしまいます(笑)。

 

ですが、シェフという人は本当に凄いですよね。あのウミガメを琥珀のように美しいスープに変身させてしまうのですから、そりゃあたまげますわ。日本ではパンケーキといえば甘いスイーツとしての立ち位置が主ですが、この作品では小さなパンケーキの上にキャビアサワークリームを乗せたものが登場していました。メインとして出されていたのも日本ではあまり馴染みのないウズラとトリュフのパイ。どこからナイフを入れるのが正解のなのだろう?と悩んでしまうようなフォルムでしたが、どれも美味しそうなものばかりでした。

 

あと、この作品の中で一番食べてみたい!と思ったのが、ラム酒のサヴァランです!クグロフ型のサヴァランの中心部分にラム酒のシロップかな?をたーっぷりと注いで食べるのですが、なんともまぁ美味しそうなこと!普段ケーキ屋さんでもあまりお目にかかれないサヴァランなので、この作品でこんな素晴らしいサヴァランを見たら無性に食べたくなって仕方がありませんでした(;´Д`)

 

最後に、大金を手にしたバベットが自分たちの元を離れてしまうことを寂しく思う姉妹に、お金は全て晩餐会で使い果たし、ずっと姉妹に従えることを告げます。私はこのシーンを観て不思議な達成感を感じられました。晩餐会が終わったあとの村人たちの幸せそうな笑顔と、独り一服をするバベットの姿が尚更達成感を感じさせたのだと思うのですが、普段の生活でも料理を作り、食べた後は「やり切ったぞ!」といつも思います。「生きることは食べること」それを再確認させてくれる作品でもあります。

 

作るのも、食べるのも全てが億劫になり心が荒んでいる時に是非観てほしいと思います。見た後には「ちょっと何か作ってみようかな?」なんて気持ちになっているかもしれませんよ?

 

是非是非!