マザー!

 

2017年アメリカで公開された作品です。

 

マザー! (字幕版)

 

ざっくしあらすじ

周りに何もないド田舎の大きな一軒家に歳の離れた夫婦が住んでいました。夫は詩人でスランプ気味、妻はそんな夫を献身的に支えながら穏やかに暮らしていました。そんなある日、1人の男が夫婦の元に訪れます。妻はその男を怪しく思いますが、夫は快く迎え入れます。その男を向かい入れてから、穏やかな夫婦の生活は一変し、様々な来客が訪れ夫婦の生活を乱してゆきます。

 

監督は「レスラー」「ブラックスワン」などのダーレン・アロノフスキー。今作で主演を務めたジェニファー・ローレンスとは恋仲になりました。

 

出演は、夫のせいで家の中がめちゃくちゃ!誰が後片付けすると思ってんの⁈な妻役に「ハンガーゲーム」「世界にひとつのプレイブック」「レッドスパロウ」のジェニファー・ローレンス

スランプ気味…、だれかと話したい!刺激が欲しい!な夫役に「ノーカントリー」「007 スカイフォール」のハビエル・バルデム。顔の迫力も凄いですが、名前のインパクトも申し分ないですよね、呪文みたいだ(笑)。

そのほか、エド・ハリスミシェル・ファイファーが脇を固めています。

 

ジェニファー・ローレンスが主演でしかもスリラー系という情報のみで観たのですが、正直ちょっと話についていけませんでした(;'∀')

 

現代劇として観ていたので、中盤から「あ、なんか聖書?っぽいかなぁ~?」とはうっすらと思ったのですが、その考えを遮るようなハビエルの無神経な行動に腹が立って仕方がありませんでした。突然の来客を迎え入れて宿泊させたり、妻に何の一言もなくパーティー開いちゃうし、その客たちに家の中を壊されちゃうわでもうめちゃくちゃです。キーッ(`~´)!!普通なら、しかも自己主張がはっきりしているアメリカ人女性なら「もう、やってらんないわよ!出てくわ!」と叫んで家を出ていきそうなんですが、全く出ていくそぶりを見せないんです。

 

うむ、全く理解できない。お得意の「映画だから!(^_-)-☆」な割り切り方で強引に受け入れようと試みましたが、ちょっと無理でした(笑)。鑑賞後に特典として収録されていた監督の解説でやはり旧約聖書がベースということを知り、ようやく理解できなかった部分もかみ砕くことができました。聖書をベースに現代風にアレンジされているのであれば、何故?な部分も「聖書の世界だから」で消化することができました。

 

あと、作品の評価もチェックしてみましたが驚くほどの悪評でしたね。まぁ、これは仕方がない評価だと思うのですが、結構な方が「女性軽視」「女性差別」とのコメントをされていたのを見て「言われてみればそうかも」とやっと気づくぐらい鈍く、鑑賞中は全くそのような考えには至らなかったので、少し感心してしまいました。

 

でも、なんでもかんでも軽視だ!差別だ!と叫んでよいものか。少し違和感があります。確かにこの作品はジェニファー扮する妻を虐めすぎた感は否めないのですが、旧約聖書をベースとし現代劇に置き換えアレンジした作品、ということをあらかじめ観客に伝えてから物語を見せたらまた違った意見や考えが出てきたと思いますし、「夫婦」という「女」と「男」でキャラクターを動かしてしまったのが非難の的になりやすい要素だったかな?とも思いました。

 

ですが、このように宗教的な要素があるテーマはたぶん縛りや表現の仕方がとても難しいと思われますし、それに加えて非難されれるかもしれない要素を全て取り除いて描こうとすれば、かなり薄味のパンチの効いていない作品が出来上がってしまうことでしょう。結果的に、私はこの作品かなりパンチの効いた作品だと思いました。お国柄、旧約聖書などのものにはかなり疎いので、ストーリーや細かなポイントなど理解できない部分も多く、ストーリーの進み具合も強引すぎてついていくことができませんでしたが、記憶にはしっかり残りました。

 

途中で趣味の悪い演出がみられ、あまりいい気分にはなれませんがこれも旧約聖書がベースということを鑑みると、凄く気持ちの悪い演出ですが受け入れられなくもないかなと思います。「だからといって、こんな残酷な演出にしなくてもいいじゃないか!!」とお叱りの声も聞こえてきそうですが、それを言ったらスプラッター映画にもしっかり非難の声を上げるべきだと私は思います。

 

凄く面白いから絶対観てね!とは口が裂けても言えないですが、かなり攻めた作品で、悪評を恐れず果敢にクリエイトした心意気や熱意や努力がみられる映画です。そういった部分はとても素晴らしいことだと思いますし、認めてあげなければいけないところだと思います。批判を恐れて受け身な作品しか作らない・求めない人たちこそ少し改めるべきだと思います。良い部分もあれば、悪い部分もあります、平等な目をお持ちなら「良い部分」にもしっかり目を向けてほしいものです。

バティニョールおじさん

2002年フランスで公開された作品です。

 

バティニョールおじさん [DVD]

 

ざっくしあらすじ

舞台は1942年のフランス・パリ。街の一角にある肉屋の店主バティニョールが主人公。お人よしな彼の周りは、計算高い妻やナチス・ドイツ支持者の娘婿ピエール=ジャンなど、癖の強い人間に囲まれて生活していました。そんなある日ピエール=ジャンが隣に住むユダヤ人一家バースタイン家の存在をドイツ軍に密告します。思いもよらず摘発に協力したことになってしまったバティニョール一家は、バースタイン家が所有していたアパートなどの財産を譲り受けることになります。ある晩、ドイツ軍のレセプションを開催することになったため、バティニョールは客人を迎え入れるため玄関を開けます。するとそこには、上手く逃げたしたバースタイン家の息子シモンが立っていました。慌てたバティニョールはシモンをかくまいます。シモンは残りの親類と落ち合うため、バースタインが所有していたアパートへ戻ってきたというのです。大ごとにならないようバティニョールは必死にシモンをかくまいますが、バレるのも時間の問題です。そのため、合流したシモンの従妹サラとギラを連れてスイスへ亡命させようと決心します。

 

「タンデム」「パリの天使たち」「コーラス」などで知られるジェラール・ジュニョが監督兼主演されています。劇団「スプランティド」では脚本家としても活躍していたようです。この劇団フランスでは結構有名なんですね、初めて知りました。今作では親しみやすくいかにも「フランスのおっちゃん」って風貌がアニメキャラクターのようでとても愛らしかったです。

 

まず、クスりとしたのがバティニョールおじさんはお肉屋さんという設定です。ユダヤ人の子供を助けるのにお肉って!なんだかへんてこりんですよね。(ユダヤ教では細かな食事規定があり、豚肉やエビ・カキ・イカ・タコなどが食べられません。牛肉はOKのようなのですが、血が滴るビフテキなどはダメみたいです。)内容としては結構シリアスになりがちな題材なのですが、このようにユーモアやコメディ要素を各所に盛り込んでいるので比較的明るい気分で観ることができます。

 

バティニョールおじさんは小さな頃から働きづめで生活してきたため、学があまりありません。そのためインテリな子供たちと立場が逆転したりするのですが、この子供たちがなんとも我がままで叱り飛ばしたくなります(笑)。元は医者の一族だったため、戦争前までは何不自由なく暮らしてきた様がありありと伝わります。でも、監督はあえて可愛らしい守りたくなるような子供像を描きたくなかったようなことをインタビューで話していました。なるほど、計算だったのですね。

 

雰囲気としては「ライフイズビューティフル」を彷彿とさせますが、今作品の方がずっとリアルに当時の現状を描いていると思います。衣装だったり、セットなんかも結構細密に作りこまれていました。

 

牧歌的ではあるのですが、流されやすい一人の中年男性が自分の意志で子供たちを亡命させようと奮闘し、頼もしくなっていく姿はまるで少年が大人になるようなサクセスストーリーを観ているようでした。前半はあんなに頼りなかったのに、後半は頼もしい子供たちのヒーローになっていく姿はとても心が温かくなります。

 

ユダヤ人の迫害を題材にした作品は暗いものが多いのですが、この作品はちょうどよい濃さで描かれている印象を受けます。笑いあり、涙あり、ドタバタがありのまさに『映画』といった作品です。(ちょっと「男はつらいよ」風になってますが、内容は全く違いますよ!)ラストもどちらかというとハッピーエンドなので、ほっこりした気持ちで席を立ちたいときにお勧めです。

 

是非是非!

 

 

暗くなるまで待って

1967年アメリカで公開された作品です。

 

暗くなるまで待って [DVD] [DVD] (2011) オードリー・ヘップバーン; アラン・アーキン; リチャード・クレンナ; サマンサ・ジョーンズ

 

ざっくしあらすじ

写真家のサムは降り立った空港で、見知らぬ女性から一体の人形を預けられます。不思議に思いながらも盲目の妻スージーの待つアパートへ持ち帰ります。しかし、その人形の中にはヘロインが入っており、その女はそのヘロイン入りの人形を持って逃亡している最中でした。そのヘロインを追っていた3人組の男、ハリー、マイク、カリーノはサムのアパートを突き止めます。3人は妻スージーにバレないように人形の在りかを聞き出しますが、スージーも人形のことは全く分かりませんでした。何としてでもヘロインを入手したい3人は、何も見えないスージーを恐怖へと陥れます。

 

監督は、「007ドクター・ノオ」「007ロシアより愛をこめて」「007サンダーボール作戦」などのテレンス・ヤング。この作品は007シリーズが一段落したあとに製作されたものです。ちなみに、第2次世界大戦中に負傷したところをボランティア看護師だった主演のオードリーに介護されています。

 

キャストは、不運な事故で全盲になってしまったスージー役に「ローマの休日」「ティファニーで朝食を」「シャレード」などのオードリー・ヘプバーン。今作ではアカデミー賞最優秀女優賞にノミネートされています。

知らない人からよく分からないものを貰っちゃダメだよー!な写真家の夫サム役に「ホット・ショット」などに出ているエフレム・ジンバリスト・ジュニア。「ヒッチコック劇場」や「サンセット77」などTV映画で多く活躍していた俳優です。

悪役3人組のハリー役に「リトル・ミス・サンシャイン」でアカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞したアラン・アーキン。マイク役にリチャード・クレンナ、カリーノ役にジャック・ウェストンがキャスティングされています。

 

1967年というとオードリーが一旦映画から距離を置いた時期でもあり、離婚直前の時期でもありました。そのためか、スリムな体系がよりスリムになっていた印象があります。ですが、スージーという役柄もあり、細すぎる体系も違和感なく受け入れることができます。同じ年に公開された「いつも二人で」ではとても楽しそうにしていたオードリーですが、この作品では正反対の恐怖に慄く彼女を観ることができます。

 

シャレード」もおしゃれで素敵なサスペンス作品でしたが、こちらの作品の方が本格的なサスペンススリラーに仕上がっています。全盲という設定がまず良いですよね。「見える恐怖」も怖いっちゃ怖いですが、「見えない恐怖」って相当だと思います。このスージーのように事故で突然全盲になってしまうというのも普通に考えたらかなり怖いですよね。普段何気なく見ていた日常が突然見えなくなるって恐ろしいです。それに加えて、このスージーは凶悪犯に襲われるんですからたまったもんじゃないです。

 

そして、なんといっても良くできてるなーと感心したのがラストシーンです。若干ネタバレになるので申し訳ないですが、書きます。スージーは犯人と渡り合う際に自分と同じ条件に状況を持っていくんです。その状況がタイトルにもある通り「暗闇」です。全盲であるスージーは暗闇の中で生きていて、普通の状況じゃ圧倒的に不利なんですね。なのでスージーは自分と同じ状況にするために、部屋の中を真っ暗にして犯人と戦うのですが、それがまぁ怖い。暗くて何も見えないって映画としてどうなの?とお思いの方もいらっしゃると思うのですが、心配いりません。ちゃんと怖いですよ(笑)。一瞬だけマッチの光で部屋の状況が分かるのですが、そのちょっと明るくなった瞬間がドキドキします。こう、犯人が近づいてきているのがチラチラ見えるのがもう本当に怖いですねぇ。特に大げさな視覚効果や特殊技術も使用していないのにこの恐怖感を描けるのは流石だなぁと思いました。

 

オードリーといえば「ローマの休日」や「マイ・フェア・レディ」あたりが有名で、この作品はあまり目立っているものではないのですが、私的には彼女の作品の中で1番面白く、素晴らしい演技をしている作品だと思っています。ストーリー自体は少し荒っぽいですが(知らぬ女性から人形貰って帰ってきちゃうとか)、そこに目をつぶれば大いに楽しめる作品になっていますので、見かけたら是非お手に取ってみてください。

 

是非是非!

 

 

サスペリアPART2/紅い深淵

1975年イタリアで公開された作品です。

 

サスペリア PART2 完全版(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

ある講演会で霊感のあるヘルガという女性が聴衆の持ち物などを当てていた時、「この会場内に殺人者がいる」と言って突然ヘルガが苦しみだします。「またこの殺人者は人を殺します」との予言も叫び場内は騒然としていました。一方別の場所ではピアニストのマークがリハーサルを終えた後に友人のカルロと出会い談笑していました。ふと視界に入ったアパートの窓越しにヘルガが殺害される場面を目撃。すぐさまヘルガの部屋へ向かいますが、既にこと切れた後でした。その後、警察に事情を話しているところを新聞記者ジャンナに写真を撮られ、翌日の新聞にマークの顔が載ってしまいます。犯人に顔を知られたマークは自分に危害が加えられる前に事件の真相を解明しようと動き出します。

 

監督は「サスペリア」「フェノミナ」などでおなじみのダリオ・アルジェント。今作品は、「サスペリア」より前に制作されたもので、ストーリーも「サスペリア」とは全く関係のないものなのですが、日本の配給元が「サスペリアPART2」と銘打ったほうが伸びると判断したため、あたかも続編のようなタイトルにしたとのことです。当時はなんでもアリだったんですね(笑)。

 

キャストは、殺人現場を目撃しちゃう不運なピアニストマーク役に「グラディエーター」「スパイ・ゲーム」「ギャング・オブ・ニューヨーク」などのデヴィッド・ヘミングス。俳優の他に監督業も行っており、1973年には「別れのクリスマス」という作品でベルリン国際映画祭の監督賞を受賞しています。

棒のようにスリムな新聞記者ジャンナ役に「インフェルノ」「フェノミナ」などのダリア・ニコロディ。ダリオ・アルジェントとは公私にわたるパートナーで、娘のアーシア・アルジェントも女優をやっています。脚本家でもある彼女は、「サスペリア」を企画し脚本にも参加している多彩な方です。

 

有名なホラー映画を挙げると必ずと言っていいほど「サスペリア」もあがってきますよね。確かに「サスペリア」も素晴らしい作品でしたし、つい最近リメイクされて日本でも公開されていましたよね。今作品は「サスペリア」とは違いホラーでもオカルトでもなく、サイコサスペンスのジャンルではあるのですが、ホラーといっても過言ではない怖さがありました。

 

まず、あの操り人形の気持ち悪さったらないです。「SAW」でも人形が出てきますけど、私としては「サスペリアPART2」の人形の方が怖かったですね。表情はチャッキーっぽいんですけど、チャッキーのような滑らかな動きはないです。でも、不気味です。私の中でこの作品の一番のツボです。

 

音楽はお馴染みゴブリンが手掛けていますが、この作中に流れる音楽もなかなか秀逸です。ゴブリン特有のあの「ミョーン!」とした感じのメロディーが胸をざわつかせます。一番初めのシーンで流れる子供が唄っている曲も、なんだか気持ち悪いんですよねぇ。「戦争のはらわた」でも一番初めに子どもが歌う童謡の「ちょうちょ」が流れていましたが、あの気持ち悪さに近いものがあります。

 

あと、個人的に好きなのは、殺人シーンが派手なとこです。最初に殺されちゃうオルガは、おっぱい丸出しでメッタ刺しにされてしまうのですが、なんだかこういうシーンは時代を感じます。あの時代って意味もなくおっぱい出しちゃうじゃないですか?「なぜ(。´・ω・)?」と思いつつもいいもの見たなという感情も同時に沸き上がるので人間って不思議ですよね。サービスってことなんですかね?

 

一応、サスペンスものなので推理的な部分もちゃんとあり、ハラハラドキドキのシーンもしっかりあるので、ダレることはなかったです。正直「サスペリア」のほうが私はダレました。なので、この作品のほうがドッキリ度はかなり高いと思います。謎が明かされていく時のシーンは「ワッ(゚Д゚)!」となりましたしね。

 

表現が難しいのですが、アメリカにはないイタリア特有の暑苦しさというか濃さが観られる作品だと思います。映像、キャスト、女優の太めのアイライン。ハリウッドにはあまりない表現も面白いですし、残酷な殺人シーンなどヒッチコックとはまた違ったサイコサスペンスに仕上がっているのも素晴らしいです。あまりレンタルで見かけることがない作品ではあるのですが、もし見かけた際は是非お手に取ってもらいたいです。

 

是非是非!

セクレタリアト/奇跡のサラブレッド

2010年アメリカで公開された作品です。

 

セクレタリアト/奇跡のサラブレッド (字幕版)

 

ざっくしあらすじ

1970年3月30日、バージニア州最大規模の牧場メドウ・ステーブルに1頭の赤毛の子馬が産まれました。名をセクレタリアト命名されます。このメドウ・ステーブルは弁護士の妻で何一つ不自由なく過ごしてきたペニー・チェナリーが父の跡を継ぎ、手探りながらも経営を始めたばかり。しかも男社会の競馬世界で女性が戦っていくのは容易ではありませんでしたが、粘り強さと持ち前のタフさでドンドンと道を切り開いてゆきます。代表のペニーに似たのかセクレタリアトも規格外の走りを見せ、世間を驚かせる名馬に成長します。そんなセクレタリアトとペニーとその仲間たちは、アメリカクラシック3冠全制覇に向け走り始めます。

 

監督は、「パール・ハーバー」「ワンス・アンド・フォー・エバー」などを手がけた、ランダル・ウォレス

 

キャストは、肝の据わったセレブ専業主婦オーナー、ペニー・チェナリー役に「運命の女」「ストリート・オブ・ファイヤー」などのダイアン・レイン。幼いころから舞台を踏んでおり、コッポラの作品に多数出演していましたがあまりパッとせず映画からは一旦距離を置き、2002年の「運命の女」まで苦い低迷期を経験している苦労人です。今作品ではブロンドヘアで出演していますが、やっぱりブルネットヘアの方が好みです。

破天荒で気の荒い調教師ルシアン・ローリン役に「キリング・フィールド」「マルコヴィッチの穴」などのジョン・マルコヴィッチ。個性派俳優として有名な彼にピッタリなキャラクターで、今作のいいアクセントになっていました。

 

実在した最強馬セクレタリアトの映画なのですが、競馬ファンなら常識というぐらい有名な馬ですが、そうでもない人にはあまり聞きなれない名ですよね。なのでちょろっと彼について紹介します。

 

小さな頃は特に大きな期待もかけられてはいなかったようですが、調教師のルシアンに出合い鍛えられたおかげで才能を開花させました。デビュー戦はスタートの出遅れが原因で負けてしまいますが、その後のレースは6馬身差で圧勝しドンドン白星を増やします。もっとも有名なのは1973年のベルモントステークスでのレースで、逃げの戦法でレースを開始し、周囲は途中で力尽きてしまうのでは?と心配になりますがその心配は無用に終わります。なんと、2着の馬に31馬身差‼をつけて見事ゴールイン。タイムは2分42秒0のレコード記録を叩き出し、今現在もこの記録は破られていません。

そんな彼は大変よく食べる子だったようで、レース前でも厩務員が引くほど食べていたようです。性格は穏やかで調教時やレース以外は食べているか、寝ているかのどちらかだったので、その様子から「のんびり屋」とも呼ばれていました。可愛いですね。頭も良く、カメラを向けるとちゃんと決めポーズをとっていたようです。

体も大きく、心臓の重さが10㎏(平均は4㎏)もあり、病気もしていなかったようです。(死因は蹄葉炎なので、内臓疾患ではありませんでした。)

ちなみに、「事務局」の意味を持つこの名前の由来は、牧場の事務を一手に引き受けていたエリザベス・ハムに敬意を表しつけられた名とのことです。

 

配給元がディズニーなので、もっとファンタスティックなものになるかな?と思ったのですが、意外や意外ディズニー感0の作品でした。拍子抜け(笑)

 

同じような競走馬を題材にした「シービスケット」もありますが、あの作品はジョッキーに焦点を当てたものでしたが、今回はオーナーブリーダーに焦点を当てているので、競馬の裏側も観ることができます。「競馬=金」と言っていいほどお金がかかるものです。今作品でも、主人公のペニーは常にお金に頭を抱えています。

 

少し残念なのは、セクレタリアトの出番があまりないところです。私、ペンギンの次に馬が大好きなのです。なので、この作品を観るときも「ディズニーだし、動物ものだし、馬出るし、最高じゃん?楽しみ(*'▽')」なテンションで観てしまったので、正直がっかりでした。セクレタリアト超可愛いのにあんまり出てこない(ノД`)

 

女性のサクセスストーリーものが観たい方には大変お勧めできるのですが、私のように馬が観たい!馬が好き!という方にはあまりお勧めできません。見るなら「レーシング・ストライプス」の方がお勧めです。ただ、レースシーンは迫力がありましたし、競馬にかける人たちの見えない努力や熱意、馬に対する愛情など普段知ることができない部分を知ることができるので、そういったところはとてもよかったです。

 

是非是非!

ジュノ

 

2007年アメリカで公開された作品です。

 

JUNO/ジュノ (字幕版)

 

ざっくしあらすじ

ポリタンクでオレンジジュースを飲み、3回目の妊娠検査薬ではっきりとした「+」が出てたことにより16歳のジュノは妊娠を確信します。相手は仲の良いボーイフレンドのポーリー。予想外の妊娠に多少狼狽したもののすぐに中絶を選択、親の同意なく処置することができるクリニックに予約を入れます。しかし、いざクリニックへ足を踏み入れると、不潔で嫌な空気が漂う院内での処置が不安になり中絶することを諦め、産むことを決意。親友と両親の協力のもと、地元のフリーペーパーに掲載されていた里子募集の記事から、良さそうな夫婦を発見し、産まれてくる子供をその夫婦の元へ里子に出す計画を立てます。

 

監督は、「サンキュー・スモーキング」「マイレージ・マイライフ」のジェイソン・ライトマン。ご存知の方も多いと思いますが、お父さんは「ゴーストバスターズ」のアイヴァン・ライトマンです。彼も「ゴーストバスターズ2」に出演しています。

 

主なキャストは、個性的でユーモアのセンスが冴えているジュノ役に「ローラーガールズ・ダイアリー」「インセプション」などのエレン・ペイジ。この作品での演技が高く評価されオスカーにノミネートされました。エレンといえば、クアンティック・ドリーム社の「BEYOND:Two Souls」の主人公ジョディのモーションキャプチャーと声を担当していましたね。このゲームもとても面白かったです。

娘の妊娠と里子計画にあっけにとられてしまう父親マック役に「スパイダーマン」「セッション」などのJ・Kシモンズ。「セッション」での強烈な音楽教師役の印象が強いですが、今回は個性的で突拍子もない娘にあきれ返りつつも優しく見守る良き父親を熱演しています。

綺麗好きで几帳面な里親ヴァネッサ役に「パール・ハーバー」「キャッチミー・イフ・ユー・キャン」などのジェニファー・ガーナーベン・アフレックの元奥さんってことぐらいしか知らなかったのですが、「キャッチミー・イフ・ユー・キャン」に出てたんですね。見たはずなのに覚えてない(-_-;)

 

10代の妊娠がテーマなのですが、暗い要素は無く「そんなに楽しそうにしてていいの(;´Д`)」と思ってしまうぐらい明るくポップに進んでいきます。日本だとどうしても重たくなりがちなテーマなのですが、お国柄でしょうか雰囲気は真逆です(笑)。

 

凄いなと思ったのが、フリーペーパーに里子募集の記事があること!日本じゃ考えられないですよね、なんせペットのように募集するんですから。道徳に反するような気もするのですが、生んで育てられず育児放棄してしまうよりはいいのかなぁとも思いましたが、やっぱりちょっと受け付けられないですよね(笑)。

 

あと、このジュノは学校も普通に通っちゃうんです。大きなお腹で、平然と。私が高校の時も在学中に妊娠してた子はいましたが、みんな退学処分になっていました。そういった意味では退学処分にはしない学校の器のデカさは素晴らしいなと思いました。確かに、学生でしかも10代の子供が妊娠というのはいただけないものがありますが、退学させてしまうのはその子の今後の将来の道を少なくしてしまうことになるので、私としては本人が卒業したい意思があるのであれば通わせてあげたらいいのになと思っていました。

 

でも、勘違いしてほしくないのが、この作品のように10代の出産が上手くいくと思ってほしくないところです。とても明るくて楽しい映画なので、「10代で出産しても上手くいくんだな」と錯覚してしまいそうになりますが、現実はこんなにスムーズにいくはずがありません。なので、まだ学校に通っているような学生(大学生も含む)の方は全てを真に受けずに観てほしいですね。ファンタジー作品を観ているんだぐらいの感覚で観てほしいです。それぐらいこの作品には現実味はないです。

 

ただ、映画としてはとても面白いですし、ジュノの考え方がとてもユニークで賢いので観ていて憂鬱になることもなく、すっきりとします。産んでから「やっぱり自分で育てたい!」なんてことも言いださないところが特に好きです。(日本だとそういうのありがちでげんなりするのです)我が子に対する考え方がドライ過ぎない?と言われてしまいそうですが、考えているからこそできる対応なのだと私は思います。中途半端な愛情が一番人を苦しめますからね。

 

重たいテーマをコメディで描いている作品なので、真面目な人には受け付けられないかもしれないですが、何も考えずに観れるので結構お勧めです。深く考えるとこもないですし、ハッピーエンドなので。しかも97分とちょうどいい時間(笑)。ちょっと何か観たいなと思った時に最適です。

 

是非是非!

ひつじ村の兄弟

 

2015年に公開された作品です。

 

ひつじ村の兄弟(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

アイスランドに住む2人の老兄弟がいました。ずぼらで気の荒い兄キディーと真面目で羊をこよなく愛し可愛がっている弟グミ―。2人は隣同士に住み、先代から受け継いだ羊で生計を立てていました。しかし、同じような生活をしているにも関わらず2人は40年も口を利いていないのです。何かあれば牧羊犬に手紙を咥えさせて連絡を取るほど2人な仲は拗れていました。そんな羊で賑わっている村では、年に1度羊コンテストを開催しており、そのコンテストでグミ―はキディに負けてしまいます。グミ―は優勝した羊がどれほど良いものなのかを確かめるべく、キディの羊を観察します。その際に羊の様子がおかしいことに気づきます。その羊には疫病の症状が出ており、しかもその疫病は伝染病でもあったのです。グミ―は翌日、キディの羊が疫病に侵されていることを村人に知らせ、保健所に連絡を入れました。1頭疫病にかかると、もうその周辺の羊は助からないとされている病のため、村の羊たちは保健所職員の手によって全て殺処分されてしまいます。ですが、どうしてもあきらめきれないグミ―は数頭だけ地下に隠してしまいます。その羊たちが発端となり、2人の老兄弟の歯車が動き出します。

 

監督は、グリームル・ハゥコーナルソンプラハ舞台芸術アカデミー(FAMU)卒業の際に製作された「Slavek The Shit」が、2005年のカンヌ映画祭シネフォンダシオン部門に選出され、12の国際映画賞を受賞するなど才能ある監督です。今作も、カンヌ国際映画祭「ある視点部門」グランプリを獲得しています。

 

キャストは、兄キディ役にテオドール・ユーリウソン。レイキャビク市立劇場で舞台に立つベテラン俳優です。

弟グミ―役にシグルヅル・シグルヨンソン。俳優でもありますが、コメディアン・監督・脚本家など多彩な才能を持つ方です。

 

アイスランドは人口より羊の数のほうが圧倒的に多いんですね。まさに羊の国です。世界平和度ランキングや世界ご長寿(男性)ランキングで1位になるほどほのぼのとした国です。いいですねぇ(*´ω`*)

 

私はこの作品、のどかな大自然が広がる中で繰り広げられる兄弟げんかにほっこりするストーリーで終わるのかと思って観始めたのですが、結構ヘビーな内容で驚きました。

 

酪農家にとって最も恐ろしいことは、家畜が全滅することでしょう。それが始まって早々に行われるのです。愛情いっぱいかけて可愛がり育ててきた羊たちを、処分しなければいけないという状況は、酪農を経験したことがない私ですらかなり精神的にきびしかったです。グミ―はキディの羊が疫病だと分かった瞬間、すぐさま自分の羊を連れて帰り一生懸命洗ってあげるシーンから分かるように、羊は家族でもあるのです。その家族を殺処分しなければいけない苦しさは想像を絶するものです。

 

ですが、グミ―は数頭残してしまうのですねぇ。確かに、あきらめきれないです。先代から受け継いだ由緒ある血統を絶やすわけのはいきません。その羊たちがきっかけで兄弟はまた少しずつ交流をもってゆくのですが、ここからがまた私の予想が外れました。

「えっ⁉(;´Д`)」ってリアルに言いました(笑)。そんなぁ!とも言いました、そんなラストなんです。

 

なんというか、神話っぽいともいえる感じなのですが、もやもやした気持ちで終わってしまいます。なんという言葉がこの作品に合うのか、一生懸命無い知識を絞って考えてみたのですがどれもしっくりきません。「せつない」とか「やるせない」とかそんな言葉でもないんです。かっちり合わないんです。なので、ハッピーな気持ちになりたいときや、笑顔で席を立ちたい気分の時に見る作品ではないことは断言しておきます。

 

ですが、観た後もずっと考えてしまう作品もそうそうないので好き嫌いはありますが、私はとても良い作品だったなと思っています。するめ系作品ですね。進んでお勧めはできないですが、時間が有り余っていて余裕があるときに手に取ってもらえたらいいなと思います。

 

是非是非!