バティニョールおじさん

2002年フランスで公開された作品です。

 

バティニョールおじさん [DVD]

 

ざっくしあらすじ

舞台は1942年のフランス・パリ。街の一角にある肉屋の店主バティニョールが主人公。お人よしな彼の周りは、計算高い妻やナチス・ドイツ支持者の娘婿ピエール=ジャンなど、癖の強い人間に囲まれて生活していました。そんなある日ピエール=ジャンが隣に住むユダヤ人一家バースタイン家の存在をドイツ軍に密告します。思いもよらず摘発に協力したことになってしまったバティニョール一家は、バースタイン家が所有していたアパートなどの財産を譲り受けることになります。ある晩、ドイツ軍のレセプションを開催することになったため、バティニョールは客人を迎え入れるため玄関を開けます。するとそこには、上手く逃げたしたバースタイン家の息子シモンが立っていました。慌てたバティニョールはシモンをかくまいます。シモンは残りの親類と落ち合うため、バースタインが所有していたアパートへ戻ってきたというのです。大ごとにならないようバティニョールは必死にシモンをかくまいますが、バレるのも時間の問題です。そのため、合流したシモンの従妹サラとギラを連れてスイスへ亡命させようと決心します。

 

「タンデム」「パリの天使たち」「コーラス」などで知られるジェラール・ジュニョが監督兼主演されています。劇団「スプランティド」では脚本家としても活躍していたようです。この劇団フランスでは結構有名なんですね、初めて知りました。今作では親しみやすくいかにも「フランスのおっちゃん」って風貌がアニメキャラクターのようでとても愛らしかったです。

 

まず、クスりとしたのがバティニョールおじさんはお肉屋さんという設定です。ユダヤ人の子供を助けるのにお肉って!なんだかへんてこりんですよね。(ユダヤ教では細かな食事規定があり、豚肉やエビ・カキ・イカ・タコなどが食べられません。牛肉はOKのようなのですが、血が滴るビフテキなどはダメみたいです。)内容としては結構シリアスになりがちな題材なのですが、このようにユーモアやコメディ要素を各所に盛り込んでいるので比較的明るい気分で観ることができます。

 

バティニョールおじさんは小さな頃から働きづめで生活してきたため、学があまりありません。そのためインテリな子供たちと立場が逆転したりするのですが、この子供たちがなんとも我がままで叱り飛ばしたくなります(笑)。元は医者の一族だったため、戦争前までは何不自由なく暮らしてきた様がありありと伝わります。でも、監督はあえて可愛らしい守りたくなるような子供像を描きたくなかったようなことをインタビューで話していました。なるほど、計算だったのですね。

 

雰囲気としては「ライフイズビューティフル」を彷彿とさせますが、今作品の方がずっとリアルに当時の現状を描いていると思います。衣装だったり、セットなんかも結構細密に作りこまれていました。

 

牧歌的ではあるのですが、流されやすい一人の中年男性が自分の意志で子供たちを亡命させようと奮闘し、頼もしくなっていく姿はまるで少年が大人になるようなサクセスストーリーを観ているようでした。前半はあんなに頼りなかったのに、後半は頼もしい子供たちのヒーローになっていく姿はとても心が温かくなります。

 

ユダヤ人の迫害を題材にした作品は暗いものが多いのですが、この作品はちょうどよい濃さで描かれている印象を受けます。笑いあり、涙あり、ドタバタがありのまさに『映画』といった作品です。(ちょっと「男はつらいよ」風になってますが、内容は全く違いますよ!)ラストもどちらかというとハッピーエンドなので、ほっこりした気持ちで席を立ちたいときにお勧めです。

 

是非是非!