ウォーリアー

 

2011年アメリカで公開された作品です。

 

ウォーリアー(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

アメリ海兵隊に所属していたトミーが町に帰ってきたところから物語は始まります。優秀なレスリング選手だったトミーの父パディも優秀なレスリングの監督でしたが、質の悪い酒乱でした。そのため、トミー、母、兄のブレンダンは父の元から去ろうとしますが、兄のブレンダンは現在の妻テスと別れたくないため父の元に残ります。トミーはパディとブレンダンのこの行いを許すことができないままでいました。そしてトミーは、ある一件を発端に海兵隊から去り、大金をつかむため優勝賞金500万ドルの総合格闘技「スパルタ」へ参加します。何としてでも優勝したいトミーは許しはしていないが、技術面では認めている父の元へ訪れます。一方、兄のブレンダンはフィラデルフィアで高校の物理教師をしていました。しかし、娘が難病に侵された際に発生した医療費が高額だったため、ローン返済に四苦八苦していました。なんとか返済するため、元総合格闘家でもあった彼は地元の小さな総合格闘技の試合に出て小銭を稼いでいました。その日は運悪く生徒の親に出場しているところを目撃されてしまい、教育に悪影響という理由から停職処分にされてしまいます。停職中でも返済は待ってくれないので、ブレンダンは返済金を稼ぐため「スパルタ」への出場を決意します。トミーとブレンダン、そしてパディは運命に導かれるように「スパルタ」というリングに立とうとしていました。

 

監督は、「ジェーン」「ザ・コンサルタント」などを手がけている、ギャヴィン・オコナー。英国人ジャーナリスト、アンソニー・ロイドのボスニア戦争を題材にした著書「My War Gone By, I Miss It So」で再度トム・ハーディとタッグを組むそうです。

 

キャストは、不愛想で歩く後ろ姿がクマにしか見えないトミー役に「マッドマックス:怒りのデスロード」「ダークナイトライジング」「ヴィノム」のトム・ハーディ。舞台にも積極的に出演しており、2004年にはイギリス版のトニー賞ローレンス・オリヴィエ賞にもノミネートされています。今作では、総合格闘家を演じるためかなりのトレーニングを積んで臨んだそうです。うん、もう後ろ姿まんまクマそのものでした(笑)。

家族思いのワーキングプア物理教師、兄ブレンダン役に「ザ・ギフト」「レッド・スパロウ」のジョエル・エジャートン。兄でスタントマンのナッシュ・エジャートンと演劇学校時代の友人らと共に「ブルータン・フィルムズ」を設立しており、2018年アメリカで公開されたシャーリーズ・セロンアマンダ・サイフリッドなどが出演した犯罪映画「グリンゴ」を製作しています。

情けないとしか言いようがない父パディ役に「サウス・キャロライナ/愛と追憶の彼方」「白い刻印」などのニック・ノルティ。オスカーに2度ノミネートされる実力のある方で、今回は酒で家庭を壊してしまった父親を見事に演じています。

 

格闘技を題材にした作品はこの作品と、ヒラリー・スワンクの「ミリオンダラーベイビー」(オスカー授賞式に着ていたジャージ素材のドレスが凄く素敵でよく似合ってましたよね!)、クリスチャン・ベイルの「ファイター」ぐらいしか観たことがないのですが、試合のシーンがとてもカッコよかったので今回はこの「ウォーリアー」を紹介します。

 

ストーリーとしてはよくある家族の再生物語なんですが、ダラダラせずにテンポよく話が進んでゆくので飽きずに観ることができます。そしてつくづく思うのですが、トム・ハーディはこういう不愛想で暴れん坊の役が本当によく似合いますよね。「はぁ(♯´Д`)?」って感じの表情がぴったりです(笑)。兄ブレンダンもいろいろと大変なんですけど、家族や友人のサポートを一身に受けているブレンダンより、孤独で影のあるトミーの方にどちらかというと感情が入ってしまいました。一人で戦っている人ほど手を差し伸べたくなるものはありません。

 

あと、格闘のシーンなのですがとてもよく撮られていたと私は思います。本当の総合格闘技の中継を観ているのでは?と私は錯覚させられるほどでした。変なカットがなく、流れるような試合シーンだったのでより生中継っぽさがありました。スピーディーな試合展開なので演技とは分かっていても、結構熱くなります。がんばれトミー!負けるな(゚Д゚)ノとつい応援してしまいます。

 

総合格闘技」といかにも男の子が好きそうな題材なので、女の子には興味を持たれないかもしれないのですが、家族再生の物語でもあるので「格闘技別に好きじゃないから違う作品にしよ('_')」とは言わずに、なんとなくでもいいので試しに観てみるのもいいのではないでしょうか?クマのようなかわいい後ろ姿のトム・ハーディ―目当てでも損はないと思います。

 

是非是非!

チョコレートドーナツ

2012年アメリカで公開された作品です。

 

チョコレートドーナツ(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

1979年のカリフォルニアが舞台。歌手の夢を追いかけショーパブで日々歌うゲイのルディは、検事局で働く客のポールと交際を始めます。ある日ルディは、アパートの隣の部屋に住むダウン症の少年マルコが母親のドラッグ中毒が原因で逮捕されたことをきっかけに施設へ預けられたことを知ります。しかし、マルコは幾度となく施設を脱走。その姿を見て心を動かされたルディはポールにマルコを引き取り家族になりたい旨を相談し、二人はゲイであることを隠し法的手続きを行います。しばらくの間は3人で幸せな時間を過ごしていましたが、ホームパーティでポールの上司と衝突してしまい、事態は不穏な方向へと進み始めます。

 

監督は、「17歳のカルテ」「チャイルドプレイ3」のトラヴィス・ファイン。うーん、振り幅が凄い監督ですよね、「17歳のカルテ」から「チャイルドプレイ3」って(笑)。でも、どちらの作品も良かったですよね。特に「17歳のカルテ」は素晴らしかったです。ウィノナが可愛かった(*´ω`*)

 

キャストは、夢を追うゲイの歌手ルディ役に「マスク2」「バーレスク」「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」のアラン・カミング。舞台「キャバレー」でトニー賞を受賞しているほどの方なので、劇中での彼の歌は大変素晴らしかったです。実生活でもバイセクシャルを公言しており、現在は同性婚されています。

真面目でハンサムなルディの彼ポール役に「ノーカントリー」「ウィンターズボーン」のギャレット・ディラハント。主にTVドラマを中心に活躍されており、「CSI:科学捜査班」や「Xファイル」などにも出演されています。

心優しくチョコレートドーナツが大好きなダウン症の少年マルコ役に、アイザック・レイヴァ。幼いころに観たディズニーの番組がきっかけで役者を志し、障がいのある人が学べる演劇学校へ入学。今回見事オーディションに合格し出演を決めました。実は、アイザックのお母さんも役者を志していたようで、アイザックが役者になりたいと言い出した時は大変驚いたそうです。

 

アランやギャレットの演技はもちろん素晴らしいのですが、特にアイザックの演技がとてもナチュラルで心にジーンとくるものがありました。上手なんですよ、アイザック。なので、アイザック演じるマルコが母親から虐待されているシーンは直視できなかったです。「かわいそう」という言葉で片付けてはいけない悲惨さでした。

 

 常に偏見が付きまとい時には攻撃もされてしまう彼らですが、人を思いやる気持ちは大変強いものがあり、ノーマルな人たちよりも人間味があります。偏見を持つなとは言いませんが、偏見を持つ方たちの偏見の理由がいつも私は分からないのです。「何がいけないの?」と問いてみても「普通じゃない」とか「生物学的に~」とかなんだかしっくりこない理由が多いにも関わらず攻撃的。きっと、そういう人たちは納豆カレーとか食べたことない人なんでしょうね。カレーはカレー!納豆は納豆!みたいにきっちりと枠を用意してもらいたいんでしょうね。

 

確か、何処かの動物園でゲイのペンギンのカップルが他のカップルの卵を横取りしようとして群れから総スカンを食らっている、というニュースを目にしたことがあります。その後、彼らの元に育児放棄された卵を渡したところ2羽はせっせと温め始めたそうです。なので、この作品を観たときにすぐこの2羽のことを思い出しました。性別や血筋はあまり関係なく、気持ちがあるかどうかが重要ということを強く感じました。

 

家族の絆を描いた作品は沢山あります。お父さんがいてお母さんがいて息子、娘がいる。でもこの作品にはお父さんもお母さんも出てきません。ですが、立派な「家族」の物語なのです。最後の結末は本当にやるせなく腹立たしい気持ちにもなります。ですが、いろいろと考えさせられる作品でした。笑顔で終われる結末ではないですが観て損はないと思いますよ。

 

是非是非!

 

 

オン・ザ・ミルキーロード

2016年のセルビア映画です。

 

オン・ザ・ミルキー・ロード(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

動物が大好きなコスタ。動物たちもコスタのことが大好きで彼の肩には常に相棒のハヤブサのリュビッツァが止まっています。そんなコスタの国は隣国と戦争真っ最中。そのため彼は、前線にいる兵士たちにロバのトニーに乗ってミルクを届ける仕事をしています。コスタの雇い主の娘ミレナは美人で運動神経抜群(2階の窓から宙返りをしてコスタの肩に着地したりします!)、村の男性たちにも人気がありました。そんなミレナはコスタに想いを寄せており、戦争が終わり戻ってきた兄ジャガが結婚式を挙げる際に自分もコスタとの挙式を計画します。しばらくして休戦協定が結ばれ、村は平和の訪れに大賑わい。挙式準備も着々と進められていましたが、兄ジャガの花嫁を愛していた多国籍軍の将校が、花嫁を連れ去るため村を火の海にしてしまいます。間一髪で生き残ったコスタと花嫁は逃げざるを得なくなります。

 

監督は、「アンダーグラウンド」「黒猫・白猫」「アリゾナドリーム」などのエミール・クリストリッツァ。今回は、監督・出演も果たしています。カンヌ・ベネチア・ベルリン、この三つの映画祭全てで受賞をしており、カンヌ国際映画祭最高賞のパルム・ドールは2度も受賞している腕のある監督です。

 

キャストは、美しい花嫁役に「マトリックスリローデッドマトリックスレヴォリューション」「007 スペクター」などのモニカ・ベルッチ。元々は弁護士を目指しており、学費を稼ぐためにモデルを始めたことがきっかけで女優になったそうです。イタリア語・フランス語・英語・ペルシャ語も話せます。頭が良くて美人って最強ですね(笑)「007 スペクター」の時のボンドガールも素敵でしたよね。グラマラスな方で細過ぎないラインが綺麗です、私は彼女のどっしりとしたお尻がとても好きです(笑)

 

アンダーワールド」「ライフ・イズ・ミラクル」もそうでしたが、今回の作品もベースに「戦争」があります。ボスニア紛争を経験した監督だからこそあえてこのベースにしていると思うのですが、監督の描く戦争はポップなんです。曲調は明るいけれど、歌詞は凄く悲しいって感じです。今回の作品も、のどかでのんびりした田舎風景がとても綺麗な中で弾丸がビュンビュン飛んでいて、そこに住んでいる村人たちも呑気な人たちが多くてかなりギャップがあります。ロべルト・ベニーニ監督の「ライフ・イズ・ビューティフル」に若干雰囲気が似ている感じがします。

 

動物たちも大活躍しており、ハヤブサ・ロバ・アヒル・ヘビ・ヤギ・クマなどが名演技を披露しており、特に相棒のハヤブサのリュビッツァくんは音楽に合わせて首を振ったり、コスタがピンチになった時には助けてくれたりします。ロバくんもなかなかいい演技をしていて、ロバのトミーくんが死んでしまうシーンは思わず涙してしまいました。動物が死んでしまうシーンはどうしても涙腺が緩んでしまいます(ノД`)・゜・。

あと、凄かったのがクマ!この作品を観るきっかけになったのが、予告でコスタがクマに口移しでオレンジをあげているシーン。このシーンはやっぱり強烈でしたね、どんなホラーやサスペンスの予告より驚きました(笑)。普通頭ごとパクっと食べられちゃいそうなのに…(;´Д`)監督曰く、ちゃんとお腹いっぱいにさせてあげて、常日頃から信頼関係をしっかり築いていれば問題ないそうです。本当かよ(-_-;)

 

あと、神話っぽい印象もあり、コスタとヘビの関係は特に神話っぽい印象を受けました。しゃべりはしないですが、行動や目でコスタに何かを伝えているというのが観ている側にも分かるってところも神話っぽい印象を強くさせていました。

 

動物や呑気な人々、陽気な音楽、となんだか童話のような世界観でありながら、戦争の悲惨さや残酷さなどもベロっと見せてくるこの対比が独特で、展開も結構ぶっ飛んでいて「???」となってしまう時も正直あります。なので、もしかしたら好き嫌いが分かれるかもしれません。ですが、動物だけでも観る価値があるので、動物好きな人は観て損はないです。

 

ハリウッド映画ばかりが大きく宣伝されるので、こういった作品に触れる機会って映画が好きな人以外あまりないですよね。レンタルショップでも置いてなかったりするのが多いです。確かに、ハリウッド系作品って楽しいですよね。私も大好きで、沢山観ます。でも、たまには普段馴染みがない国で作られた不思議な作品やとても古い時代の作品を観てみるのもなかなか面白いものですよ。

 

是非是非!

メタルヘッド

 

2011年アメリカで公開された作品です。

 

メタルヘッド (字幕版)

 

ざっくしあらすじ

母親を交通事故で亡くしてしまったT.Jと父ポールは現実を受け止められずにいました。父は依存症患者のような状態になってしまっているし、学校では虐められるわで何一つ良いことがない日々を送っていました。その日もスーパーマーケットの駐車場で虐められていましたが、スーパーのレジ係ニコールがT.Jを助けます。デカくて度が強いであろうダサいメガネを掛けた地味な女性ですが、T.Jはそんな彼女に淡い恋心を寄せます。そんなT.Jの目の前に突然ヘッシャーと名乗るイカれたメタル野郎が現れます。その行動は正に破天荒で、T.Jの祖母マデリンの家に勝手に住み始めたり、車にガソリンを撒いて燃やしたり(爆破に近かったかも(;´Д`))します。そんなヘッシャーと行動を共にしていくT.Jは前を向くことができるのでしょうか。

 

監督は、スペンサー・サッサー。彼は、CMやミュージックビデオなどで腕を磨いてきた人で、この「メタルヘッド」が彼の長編映画デビュー作になります。「かいじゅうたちのいるところ」のスパイク・リーに経歴が似ていますね。

 

キャストは、辛すぎる毎日を送っている少年T.J役にデヴィン・プロシュー。

イカれたメタル野郎ヘッシャー役に「500日のサマー」「インセプション」「ダークナイトライジング」のジョゼフ・ゴードン=レイヴィット。この作品以前は爽やかなイメージの役が多かったジョゼフでしたが、今回は長髪・ひげもじゃ・タトゥーバリバリの世捨て人ルックで登場します。短髪で少し神経質そうな感じも似合っていますが、世捨て人ルックもなかなか板についていました。セリフもほとんどFワードしかないのでは?と思うほど下品なのですが、T.Jの祖母マデリンと仲良くなったり、T.Jやニコールを助けてくれたりと結構いい奴なんです。ギャップ萌えってやつですね。私がもし男優だったら絶対オーディション受けに行くだろうなと思うほど、とてもいいキャラクターです。

冴えないスーパーレジ店員ニコール役に「レオン」「スターウォーズ」「ブラックスワン」のナタリー・ポートマン。ナタリーはプロデューサーも兼任するほど熱を入れています。オスカーを獲った後の作品にこれを選ぶとは…、流石ハーバード大卒であります。仕事のとり方が上手い(笑)。

 

誰にでも生きていて1度や2度「最悪な時期」ってあります。そんな「最悪な時期」を過ごしている人間たちが今回描かれていますが、特にニコールの辛さが嫌というほど共感できます。なぜ、こんなに金が足りんのだ_( _´ω`)_なぜ、こんな時に駐禁_( _´ω`)_なぜ、こんな時に事故る_( _´ω`)_と、まぁリアルな不運が連発しています。他のキャラクターが浮世離れしているので、尚更ニコールに共感してしまいます。

 

監督がインタビューで、ヘッシャーのような破天荒でフラフラしたやつにすごく興味があって憧れると話していましたが、私も同感です。憧れます、ヘッシャー。彼は、出来ないことを簡単にやるんです。私は車燃やしたりできないです、怖いから(笑)でも、ヘッシャーみたいな人って正直に意見を言うし、行動することができるんです。あまりにも辛い過去があるのか、逆に何も無いのかのどちらがだとは思うのですが、怖いもの知らずって最強ですよね。実際身近にヘッシャーみたいのがいたら絶対に関わりたくないですけど、知人のまた聞きで近状とかは知りたいタイプです(笑)

 

嫌なことや悲しい事や辛いことって沢山あって、それがたとえ些細な事でも積もり積もればやがて大きなモノになってしまって、気づいた時には手の施しようがなく、途方にくれて泣くことしかできなかったり、外に出ることができなくなってしまって一歩踏み出せない時が誰しもあると思います。色々な解決法があるはずだけど、見つけられない。そんなときに、壊して壊して壊しまくって、やりたい放題自由気ままに生きているヘッシャーを見るとどうでもよくなります。生きていればなんとかなるかと思わせてくれます。ルックスは世捨て人ですが、やっぱりジョゼフが出ている映画は爽やかで素敵です。

 

あと、作中でメタリカが沢山流れるのもポイントです。めったに楽曲提供しない彼らですが、ヘッシャーのモデルが24歳の若さで亡くなったメタリカのベーシスト、クリフ・バートンだということに感動し提供に至ったというエピソードもあります。タイトルロゴもメタリカのロゴと同じなのも微笑ましいですよね。

 

自己嫌悪に陥った時やもやもやした時、スカッとしたい気分の時に是非手に取ってほしい作品です。「どうにでもなる、大丈夫!」と思わせてくれます、なんてったってキャッチコピーが「最悪な人生にファッ〇・ユー!」なんで!

 

是非是非!

ジンジャーとフレッド

 

1985年イタリア・フランス・西ドイツ製作の作品です。

 

ジンジャーとフレッド [DVD]

 

ざっくしあらすじ

かつて恋人同士で「ジンジャーとフレッド」の名でコンビを組んでいたアメリアとピッポ。コンビを解消してから30年の月日が流れていたある日、テレビ局の企画で特別番組に出演することになりました。(日本でいう「あの人は今!」的なやつですね。)久しぶりに再会した2人は、昔の思い出などに浸りつつ切れのないダンスに不安を感じながらも本番へ向かいます。

 

監督は、イタリアを代表する「映像の魔術師」で有名なフェデリコ・フェリーニ。「道」「甘い生活」「81/2」などの作品を世に送り出しました。最初は新聞社勤務のシナリオなどを書く物書きでしたが、1950年に監督デビュー。世界的に名が広まった作品は「道」で、最近日本でも舞台が上演されたのでご存知の方も多いと思われますが、今日は「ジンジャーとフレッド」を紹介します。

 

キャストは、家庭に入ってすっかり落ちついてしまったジンジャーことアメリア役に、フェリーニの奥様でも知られるジュリエッタ・マシーナフェリーニが書いたラジオドラマに出演したのをきっかけに結婚。流産や最愛の一人息子の死、別居など悲しい出来事もありましたが、フェリーニの最期まで寄り添いフェリーニが亡くなった約5ヶ月後にジュリエッタも息を引き取りました。素敵な夫婦です。

時がたち、動きや容姿も冴えなくなってしまったフレッドことピッポ役に「81/2」「甘い生活」「ひまわり」などのマルチェロ・マストロヤンニ。2枚目も3枚目も演じることができる実力派だったため、歳をとっても役に困ることがなかった人です。同じく女性にも困ることがなく、カトリーヌ・ドヌーブソフィア・ローレンなどとも交際をしていた俳優です。スター!って感じがしていいですね(笑)。

 

よく、青春ラブストーリー系の作品で「胸がキュンとなる」って表現がありますが、私的胸がキュンとなる作品が、この「ジンジャーとフレッド」なんです。

時代に取り残された二人が新しいショウビズの舞台に戸惑ったり、昔はできていたステップが踏めなかったり、歳をとったことは分かっていても付き合っていた当初のまま相手を見ていたり、過去のいざこざをネタに終わったことなのにまた言い争ったり…。ですが、この2人はもう老いて死をゆっくりと待つだけの人生。綺麗ごとを言う世間は「まだまだ人生これから!」などと声高らかに言いますが、全ての人にそれが言えるかと問われると首を大きく縦には触れませんよね。そんな2人が古いアルバムをめくるように過ごしていく会話や表情を観ているとなんだか胸が締め付けられるのです。

 

変わりゆく時代の流れや考え方についていくことはできないし、理解しようにもあまりにもへんてこりんで受け付けることができぬまま取り残されていくけれど、同じ時を共にし、忘れられない出来事や思い出を共有できる人がいて、それが今はもう「過去」だけれど、「過去」を作れたことでもう十分なんだろうなと2人を観て感じました。

 

ラストシーンの2人の演技がとても素敵で、決して悲しくないのにどこかもの悲しさを感じずにはいられない表情やセリフは最近の作品ではあまりお目にかかれていないです。なんなのだろう、あの感じ…。うまく例えられないんですが、夏休みが終わるとか祭りが終わるみたいな、楽しいことが全て終わるときにちょっと近いかもしれません。ね?キュンとするでしょう(笑)?

 

ハラハラするアクションや難解なトリックなど派手な出来事は一切起こらない作品なので、好き嫌いが分かれてしまうと思いますが、ゆったりした牧歌的な作品も苦痛ではない方でしたら難なく観ることができます。なので、おうちデートで観るときは相手の嗜好をよく把握してから観ることをお勧めします('ω')

 

是非是非!

セブンシスターズ

 

2017年公開のイギリス・アメリカ・フランス・ベルギーで製作された作品です。

 

セブン・シスターズ(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

異常気象・戦争・難民・人口増加などでほとんどの国が無くなり、ヨーロッパ連邦が牛耳るようになった世界。異常気象の影響で作物がほとんど育たなくなったので遺伝子組み換えで乗り切っていたのですが、その作物の作用で多生児が生まれるようになります。ただでさえ人口増加なのにさらに増えられちゃたまらん!ということで、「一家に子どもは一人まで」の一人っ子政策を行い、二人目以降は、枯渇した地球の資源が回復する日まで冷凍保存するという理由で、政府が強制的に親元から引き離していました。そんな中セットマン家でひっそりと誕生したのがこの七人姉妹です。各曜日の名前を付けられ、週1回だけ自分の曜日にカレン・セットマンとして外出するという生活を続けていました。しかし、ある日長女のマンデーが外出したまま戻らないという問題が起こり、彼女たちの人生の歯車が動き出します。

 

監督はノルウェー出身のトミー・ウィルコラ。この監督、2007年にメガホンを取ったばかりなのでまだキャリアが浅いのですが、それを感じさせない見事な作品に仕上がっていました。ただ、他のサイトのレビューを観るとそんなに評価高くないのですね。というか、私が単細胞過ぎるので大抵どの作品も良かったなぁ(*´ω`*)と思ってしまうので仕様がないのですが、皆さんとても厳しい眼をお持ちなのですね…。

 

キャストは、「ドラゴンタトゥーの女」「プロメテウス」「チャイルド44」などに出演しているノオミ・ラパススウェーデン出身で、15歳から演技の勉強をしており、スウェーデン語・英語・ノルウェー語・アイスランド語デンマーク語が話せる実力派俳優です。凄いですね(;´Д`)私は日本語もあやしいのに(笑)

カレンの祖父テレンス役に「プラトーン」「スパイダーマン」「ジョンウィック」のウィレム・デフォーがキャスティングされています。

 

この作品で、ノオミは1人7役を見事に演じており、それぞれ性格・容姿が違うので撮影には時間がかかったのではないでしょうか。マンデーは野心家、チューズデーは繊細、ウェンズデーは暴れん坊、サーズデーは反逆的、フライデーはおとなしい理系、サタデーはパーティー好きで一番女性的、サンデーは仲裁役で母親的。このように様々な個性を持つ7人が国を相手にドンパチするので、ノオミのアクションが炸裂します。

 

最近の女優はアクションもこなす方が増えていますよね。アンジェリーナ・ジョリーシャーリーズ・セロンなど多くの女優が殴りあっていますが、ノオミ・ラパスのアクションは泥臭い感じがして好きです。顔つきが骨ばっていて男性的なのでそう感じてしまうのかもしれないのですが、彼女のパンチはめちゃくちゃ重そうなんです。凄く痛そう(笑)「アトミックブロンド」でのシャーリーズのアクションもスピード感があってハラハラするのですが、身のこなしがとてもしなやかで綺麗でダンスに近い感じなんですよね。どちらのアクションが良い悪いではないですが、これだけ違いがあるのは面白いです。

 

世界観はブレードランナーとハンガーゲームの世界を混ぜた感じ…、うーん伝えにくいですが、近未来なツールや装置はあるのだけれど廃墟のようなボロい建物や閉鎖的な空間が先に述べた2作品の世界観にちょっと近いと思いました。劇中で食べてるネズミだったかな?そういった珍味的なものを闇市で買っているシーンはブレードランナーっぽいですよね。

 

この作品で唯一注文をつけるとすれば、カレンの祖父テレンス役のウィレム・デフォーをもっと重要なキャラクターにして出演シーンも多くしてくれたらよかったかなぁー、とはちょっと思いました。そうすればもっと見ごたえのある作品になったような気がしなくもありませんが、話のテンポも良いですし、アクションもしっかりしていて後味も悪くない作品なので、見ごたえは十分にあると思います。

 

アクションがある作品が観たいけど何を借りようか迷っている方にはお勧めです。

是非是非!

 

 

フルメタルジャケット

1987年にアメリカで公開された戦争映画。

戦争映画で一番大好きな作品です。

 

フルメタル・ジャケット (字幕版)

 

ざっくしあらすじ

ベトナム戦争時、海兵隊に志願した青年たちは海兵隊訓練キャンプで厳しい訓練を受けることになります。そこで鬼教官ハートマン先任軍曹の人種差別バリバリな罵声、異常なまでの体罰などを駆使した「教育」で訓練生たちをしごいてしごいてしごきまくります!そんなキャンプの中では、落ちこぼれな訓練生へのいじめなどもあり、かなり閉鎖的な空間の中で訓練生たちは心身をすり減らします。その中でも落ちこぼれのレナードこと微笑みデブは、いじめられながらもジョーカーたちのサポートを得て、最終的にはハートマン先任軍曹から射撃の才能を認められるまでに成長したものの、既に微笑みデブの精神は崩壊しており、キャンプ最終日の暗いトイレでハートマン先任軍曹を射殺し自分もその銃で自ら命を絶ちます。そんな波乱な幕開けでベトナムへ送られた訓練生たちは、さらに過酷な戦場へ足を踏み入れることになります。

 

監督は「無冠の帝王」でも有名なスタンリー・キューブリックです。アメリカ出身ですが後にイギリスへ移住したため、この作品は全編ロンドンで撮影されています。なぜ、ベトナムでのロケを行わなかったかというと、プロ―モーションなどで飛行機移動が必要な場所へは行かなかったほど飛行機が苦手なので、ロンドン近辺の工場跡に、輸入してきたヤシを植えて撮影を行いました。

主なキャストは、ジェイムズことジョーカー役にマシュー・モディーン、レナードこと微笑みデブ役にヴィンセント・ドノフリオ、鬼教官ハートマン先任軍曹にR・リー・アーメイが出演しています。

 

前半が訓練所、後半が戦場という2部構成で撮られており、前半はややコメディタッチなのですが、話が進むにつれて徐々に狂気に満ちていく様が下手なホラーよりよっぽど怖く感じます。特に微笑みデブを演じたヴィンセントの演技は卓越しており、締まりのない顔でジェリー付きドーナッツを食べていた前半とは比べ物にならない変化を見事に演じています。これに併せて、いかに戦争が人を狂わせるものかということも強烈に映し出されていました。

 

強烈といえば、リー・アーメイのハートマン先任軍曹もドンピシャなハマり役でしたね。彼は元々海兵隊に所属していた正真正銘の軍人だったため、罵詈雑言はお手の物だったようで、当初彼は演技指導で呼ばれていたもののあまりに迫力があったため急遽キャスティングされたのは有名な話です。そんなリー・アーメイですが、2018年4月にお亡くなりになられたそうです。

 

戦争映画にありがちな血生臭く、男臭い感じがほぼなく、戦場という緊迫した状況の中、なんだか頭も顔もユルい緊張感皆無の兵士たちが逆にリアルに映り、この作品を観た後に他の戦争映画を観るとなんだか胡散臭く見えてしまいました。つい最近観た「ハーツアンドマインズ」というベトナム戦争のドキュメンタリーを観ると尚更兵士たちの感じがリアルに思えます。

 

ゲームのように人を殺せるから最高に楽しかった旨を、後に除隊した元ベトナム戦争兵がドキュメンタリーで語っていましたが、フルメタルジャケットではそんな兵士たちを忠実に再現しているところも見どころの一つです。輸送ヘリのドア・ガンナーがそれをよく表しています。「逃げる奴はベトコンだ、逃げない奴はよく訓練されたベトコンだ!」や、ジョーカーの「よく女子供が殺せるな」という質問に「簡単さ、動きがのろいからな」と答え、「ホント、戦争は地獄だぜ!」と言い放つセリフは忘れられません。

 

あと、ベトナムではよくあるジャングルでの戦闘が無く、コンクリ―ト廃墟での戦闘が主なのも新鮮で(まぁ、これは飛行機嫌いな監督のせいなんですけどね(笑))、主人公のジョーカーがメガネ男子ってところも戦争映画では珍しいタイプでしたね。メガネキャラは衛生兵役が多いイメージだったので意外だなーと思いながら観ていました。ラストシーンで、レンズが炎の光で反射して眼が映らないシーンがあるのですが、それを観たときやっとメガネで正解なんだと思いました。完璧主義なキューブリックの考えることはすごいですね、流石です。

 

そして、最後に流れる曲が「ミッキーマウスマーチ」とザ・ローリング・ストーンズの「黒くぬれ!」なのですが、こんなに陰鬱で悲壮感漂うミッキーマウスマーチ聞いたことありません(笑)。不気味でしたね、ザワザワする感じ。例えると、ミサイル発射のJアラートが鳴った時と同じザワザワ感がありました。歩いているだけでも死ぬかもしれないんだという恐怖や人を殺してしまった自分への恐怖、今後普通に今まで通り暮らしていけるのかという不安感など複雑な感情が沸き上がります。エンドロールで流れる「黒くぬれ!」のあのシタールの音色とミック・ジャガーのダウナーな始まりから堰を切ったようなシャウトへ流れる様は、この作品のようでがっちりとマッチしていました。なので、「黒くぬれ!」を聞くと何とも言えない複雑な感情でいつも胸が重くなります。「地獄の黙示録」のエンドロールがザ・ドアーズの「THE END」だったのを受けてのオマージュ?だったのでは?との噂もありますね。

 

70年代後半から80年代はベトナム戦争が題材の作品が多く発表されており、この作品の他にも「プラトーン」や「地獄の黙示録」「グッドモーニングベトナム」「ハンバーガヒル」「キリングフィールド」など沢山公開されていますが、戦争映画だったら何を勧めるか?と問われると私は迷いなくこの作品を勧めます。キューブリック節がさく裂‼という作風ではないので、キューブリックを堪能したいという人にはちょっと違うかな?と思いますが、戦争映画が観たいと思っている人にはお勧めです。

 

是非是非!