ジンジャーとフレッド

 

1985年イタリア・フランス・西ドイツ製作の作品です。

 

ジンジャーとフレッド [DVD]

 

ざっくしあらすじ

かつて恋人同士で「ジンジャーとフレッド」の名でコンビを組んでいたアメリアとピッポ。コンビを解消してから30年の月日が流れていたある日、テレビ局の企画で特別番組に出演することになりました。(日本でいう「あの人は今!」的なやつですね。)久しぶりに再会した2人は、昔の思い出などに浸りつつ切れのないダンスに不安を感じながらも本番へ向かいます。

 

監督は、イタリアを代表する「映像の魔術師」で有名なフェデリコ・フェリーニ。「道」「甘い生活」「81/2」などの作品を世に送り出しました。最初は新聞社勤務のシナリオなどを書く物書きでしたが、1950年に監督デビュー。世界的に名が広まった作品は「道」で、最近日本でも舞台が上演されたのでご存知の方も多いと思われますが、今日は「ジンジャーとフレッド」を紹介します。

 

キャストは、家庭に入ってすっかり落ちついてしまったジンジャーことアメリア役に、フェリーニの奥様でも知られるジュリエッタ・マシーナフェリーニが書いたラジオドラマに出演したのをきっかけに結婚。流産や最愛の一人息子の死、別居など悲しい出来事もありましたが、フェリーニの最期まで寄り添いフェリーニが亡くなった約5ヶ月後にジュリエッタも息を引き取りました。素敵な夫婦です。

時がたち、動きや容姿も冴えなくなってしまったフレッドことピッポ役に「81/2」「甘い生活」「ひまわり」などのマルチェロ・マストロヤンニ。2枚目も3枚目も演じることができる実力派だったため、歳をとっても役に困ることがなかった人です。同じく女性にも困ることがなく、カトリーヌ・ドヌーブソフィア・ローレンなどとも交際をしていた俳優です。スター!って感じがしていいですね(笑)。

 

よく、青春ラブストーリー系の作品で「胸がキュンとなる」って表現がありますが、私的胸がキュンとなる作品が、この「ジンジャーとフレッド」なんです。

時代に取り残された二人が新しいショウビズの舞台に戸惑ったり、昔はできていたステップが踏めなかったり、歳をとったことは分かっていても付き合っていた当初のまま相手を見ていたり、過去のいざこざをネタに終わったことなのにまた言い争ったり…。ですが、この2人はもう老いて死をゆっくりと待つだけの人生。綺麗ごとを言う世間は「まだまだ人生これから!」などと声高らかに言いますが、全ての人にそれが言えるかと問われると首を大きく縦には触れませんよね。そんな2人が古いアルバムをめくるように過ごしていく会話や表情を観ているとなんだか胸が締め付けられるのです。

 

変わりゆく時代の流れや考え方についていくことはできないし、理解しようにもあまりにもへんてこりんで受け付けることができぬまま取り残されていくけれど、同じ時を共にし、忘れられない出来事や思い出を共有できる人がいて、それが今はもう「過去」だけれど、「過去」を作れたことでもう十分なんだろうなと2人を観て感じました。

 

ラストシーンの2人の演技がとても素敵で、決して悲しくないのにどこかもの悲しさを感じずにはいられない表情やセリフは最近の作品ではあまりお目にかかれていないです。なんなのだろう、あの感じ…。うまく例えられないんですが、夏休みが終わるとか祭りが終わるみたいな、楽しいことが全て終わるときにちょっと近いかもしれません。ね?キュンとするでしょう(笑)?

 

ハラハラするアクションや難解なトリックなど派手な出来事は一切起こらない作品なので、好き嫌いが分かれてしまうと思いますが、ゆったりした牧歌的な作品も苦痛ではない方でしたら難なく観ることができます。なので、おうちデートで観るときは相手の嗜好をよく把握してから観ることをお勧めします('ω')

 

是非是非!