セクレタリアト/奇跡のサラブレッド

2010年アメリカで公開された作品です。

 

セクレタリアト/奇跡のサラブレッド (字幕版)

 

ざっくしあらすじ

1970年3月30日、バージニア州最大規模の牧場メドウ・ステーブルに1頭の赤毛の子馬が産まれました。名をセクレタリアト命名されます。このメドウ・ステーブルは弁護士の妻で何一つ不自由なく過ごしてきたペニー・チェナリーが父の跡を継ぎ、手探りながらも経営を始めたばかり。しかも男社会の競馬世界で女性が戦っていくのは容易ではありませんでしたが、粘り強さと持ち前のタフさでドンドンと道を切り開いてゆきます。代表のペニーに似たのかセクレタリアトも規格外の走りを見せ、世間を驚かせる名馬に成長します。そんなセクレタリアトとペニーとその仲間たちは、アメリカクラシック3冠全制覇に向け走り始めます。

 

監督は、「パール・ハーバー」「ワンス・アンド・フォー・エバー」などを手がけた、ランダル・ウォレス

 

キャストは、肝の据わったセレブ専業主婦オーナー、ペニー・チェナリー役に「運命の女」「ストリート・オブ・ファイヤー」などのダイアン・レイン。幼いころから舞台を踏んでおり、コッポラの作品に多数出演していましたがあまりパッとせず映画からは一旦距離を置き、2002年の「運命の女」まで苦い低迷期を経験している苦労人です。今作品ではブロンドヘアで出演していますが、やっぱりブルネットヘアの方が好みです。

破天荒で気の荒い調教師ルシアン・ローリン役に「キリング・フィールド」「マルコヴィッチの穴」などのジョン・マルコヴィッチ。個性派俳優として有名な彼にピッタリなキャラクターで、今作のいいアクセントになっていました。

 

実在した最強馬セクレタリアトの映画なのですが、競馬ファンなら常識というぐらい有名な馬ですが、そうでもない人にはあまり聞きなれない名ですよね。なのでちょろっと彼について紹介します。

 

小さな頃は特に大きな期待もかけられてはいなかったようですが、調教師のルシアンに出合い鍛えられたおかげで才能を開花させました。デビュー戦はスタートの出遅れが原因で負けてしまいますが、その後のレースは6馬身差で圧勝しドンドン白星を増やします。もっとも有名なのは1973年のベルモントステークスでのレースで、逃げの戦法でレースを開始し、周囲は途中で力尽きてしまうのでは?と心配になりますがその心配は無用に終わります。なんと、2着の馬に31馬身差‼をつけて見事ゴールイン。タイムは2分42秒0のレコード記録を叩き出し、今現在もこの記録は破られていません。

そんな彼は大変よく食べる子だったようで、レース前でも厩務員が引くほど食べていたようです。性格は穏やかで調教時やレース以外は食べているか、寝ているかのどちらかだったので、その様子から「のんびり屋」とも呼ばれていました。可愛いですね。頭も良く、カメラを向けるとちゃんと決めポーズをとっていたようです。

体も大きく、心臓の重さが10㎏(平均は4㎏)もあり、病気もしていなかったようです。(死因は蹄葉炎なので、内臓疾患ではありませんでした。)

ちなみに、「事務局」の意味を持つこの名前の由来は、牧場の事務を一手に引き受けていたエリザベス・ハムに敬意を表しつけられた名とのことです。

 

配給元がディズニーなので、もっとファンタスティックなものになるかな?と思ったのですが、意外や意外ディズニー感0の作品でした。拍子抜け(笑)

 

同じような競走馬を題材にした「シービスケット」もありますが、あの作品はジョッキーに焦点を当てたものでしたが、今回はオーナーブリーダーに焦点を当てているので、競馬の裏側も観ることができます。「競馬=金」と言っていいほどお金がかかるものです。今作品でも、主人公のペニーは常にお金に頭を抱えています。

 

少し残念なのは、セクレタリアトの出番があまりないところです。私、ペンギンの次に馬が大好きなのです。なので、この作品を観るときも「ディズニーだし、動物ものだし、馬出るし、最高じゃん?楽しみ(*'▽')」なテンションで観てしまったので、正直がっかりでした。セクレタリアト超可愛いのにあんまり出てこない(ノД`)

 

女性のサクセスストーリーものが観たい方には大変お勧めできるのですが、私のように馬が観たい!馬が好き!という方にはあまりお勧めできません。見るなら「レーシング・ストライプス」の方がお勧めです。ただ、レースシーンは迫力がありましたし、競馬にかける人たちの見えない努力や熱意、馬に対する愛情など普段知ることができない部分を知ることができるので、そういったところはとてもよかったです。

 

是非是非!

ジュノ

 

2007年アメリカで公開された作品です。

 

JUNO/ジュノ (字幕版)

 

ざっくしあらすじ

ポリタンクでオレンジジュースを飲み、3回目の妊娠検査薬ではっきりとした「+」が出てたことにより16歳のジュノは妊娠を確信します。相手は仲の良いボーイフレンドのポーリー。予想外の妊娠に多少狼狽したもののすぐに中絶を選択、親の同意なく処置することができるクリニックに予約を入れます。しかし、いざクリニックへ足を踏み入れると、不潔で嫌な空気が漂う院内での処置が不安になり中絶することを諦め、産むことを決意。親友と両親の協力のもと、地元のフリーペーパーに掲載されていた里子募集の記事から、良さそうな夫婦を発見し、産まれてくる子供をその夫婦の元へ里子に出す計画を立てます。

 

監督は、「サンキュー・スモーキング」「マイレージ・マイライフ」のジェイソン・ライトマン。ご存知の方も多いと思いますが、お父さんは「ゴーストバスターズ」のアイヴァン・ライトマンです。彼も「ゴーストバスターズ2」に出演しています。

 

主なキャストは、個性的でユーモアのセンスが冴えているジュノ役に「ローラーガールズ・ダイアリー」「インセプション」などのエレン・ペイジ。この作品での演技が高く評価されオスカーにノミネートされました。エレンといえば、クアンティック・ドリーム社の「BEYOND:Two Souls」の主人公ジョディのモーションキャプチャーと声を担当していましたね。このゲームもとても面白かったです。

娘の妊娠と里子計画にあっけにとられてしまう父親マック役に「スパイダーマン」「セッション」などのJ・Kシモンズ。「セッション」での強烈な音楽教師役の印象が強いですが、今回は個性的で突拍子もない娘にあきれ返りつつも優しく見守る良き父親を熱演しています。

綺麗好きで几帳面な里親ヴァネッサ役に「パール・ハーバー」「キャッチミー・イフ・ユー・キャン」などのジェニファー・ガーナーベン・アフレックの元奥さんってことぐらいしか知らなかったのですが、「キャッチミー・イフ・ユー・キャン」に出てたんですね。見たはずなのに覚えてない(-_-;)

 

10代の妊娠がテーマなのですが、暗い要素は無く「そんなに楽しそうにしてていいの(;´Д`)」と思ってしまうぐらい明るくポップに進んでいきます。日本だとどうしても重たくなりがちなテーマなのですが、お国柄でしょうか雰囲気は真逆です(笑)。

 

凄いなと思ったのが、フリーペーパーに里子募集の記事があること!日本じゃ考えられないですよね、なんせペットのように募集するんですから。道徳に反するような気もするのですが、生んで育てられず育児放棄してしまうよりはいいのかなぁとも思いましたが、やっぱりちょっと受け付けられないですよね(笑)。

 

あと、このジュノは学校も普通に通っちゃうんです。大きなお腹で、平然と。私が高校の時も在学中に妊娠してた子はいましたが、みんな退学処分になっていました。そういった意味では退学処分にはしない学校の器のデカさは素晴らしいなと思いました。確かに、学生でしかも10代の子供が妊娠というのはいただけないものがありますが、退学させてしまうのはその子の今後の将来の道を少なくしてしまうことになるので、私としては本人が卒業したい意思があるのであれば通わせてあげたらいいのになと思っていました。

 

でも、勘違いしてほしくないのが、この作品のように10代の出産が上手くいくと思ってほしくないところです。とても明るくて楽しい映画なので、「10代で出産しても上手くいくんだな」と錯覚してしまいそうになりますが、現実はこんなにスムーズにいくはずがありません。なので、まだ学校に通っているような学生(大学生も含む)の方は全てを真に受けずに観てほしいですね。ファンタジー作品を観ているんだぐらいの感覚で観てほしいです。それぐらいこの作品には現実味はないです。

 

ただ、映画としてはとても面白いですし、ジュノの考え方がとてもユニークで賢いので観ていて憂鬱になることもなく、すっきりとします。産んでから「やっぱり自分で育てたい!」なんてことも言いださないところが特に好きです。(日本だとそういうのありがちでげんなりするのです)我が子に対する考え方がドライ過ぎない?と言われてしまいそうですが、考えているからこそできる対応なのだと私は思います。中途半端な愛情が一番人を苦しめますからね。

 

重たいテーマをコメディで描いている作品なので、真面目な人には受け付けられないかもしれないですが、何も考えずに観れるので結構お勧めです。深く考えるとこもないですし、ハッピーエンドなので。しかも97分とちょうどいい時間(笑)。ちょっと何か観たいなと思った時に最適です。

 

是非是非!

ひつじ村の兄弟

 

2015年に公開された作品です。

 

ひつじ村の兄弟(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

アイスランドに住む2人の老兄弟がいました。ずぼらで気の荒い兄キディーと真面目で羊をこよなく愛し可愛がっている弟グミ―。2人は隣同士に住み、先代から受け継いだ羊で生計を立てていました。しかし、同じような生活をしているにも関わらず2人は40年も口を利いていないのです。何かあれば牧羊犬に手紙を咥えさせて連絡を取るほど2人な仲は拗れていました。そんな羊で賑わっている村では、年に1度羊コンテストを開催しており、そのコンテストでグミ―はキディに負けてしまいます。グミ―は優勝した羊がどれほど良いものなのかを確かめるべく、キディの羊を観察します。その際に羊の様子がおかしいことに気づきます。その羊には疫病の症状が出ており、しかもその疫病は伝染病でもあったのです。グミ―は翌日、キディの羊が疫病に侵されていることを村人に知らせ、保健所に連絡を入れました。1頭疫病にかかると、もうその周辺の羊は助からないとされている病のため、村の羊たちは保健所職員の手によって全て殺処分されてしまいます。ですが、どうしてもあきらめきれないグミ―は数頭だけ地下に隠してしまいます。その羊たちが発端となり、2人の老兄弟の歯車が動き出します。

 

監督は、グリームル・ハゥコーナルソンプラハ舞台芸術アカデミー(FAMU)卒業の際に製作された「Slavek The Shit」が、2005年のカンヌ映画祭シネフォンダシオン部門に選出され、12の国際映画賞を受賞するなど才能ある監督です。今作も、カンヌ国際映画祭「ある視点部門」グランプリを獲得しています。

 

キャストは、兄キディ役にテオドール・ユーリウソン。レイキャビク市立劇場で舞台に立つベテラン俳優です。

弟グミ―役にシグルヅル・シグルヨンソン。俳優でもありますが、コメディアン・監督・脚本家など多彩な才能を持つ方です。

 

アイスランドは人口より羊の数のほうが圧倒的に多いんですね。まさに羊の国です。世界平和度ランキングや世界ご長寿(男性)ランキングで1位になるほどほのぼのとした国です。いいですねぇ(*´ω`*)

 

私はこの作品、のどかな大自然が広がる中で繰り広げられる兄弟げんかにほっこりするストーリーで終わるのかと思って観始めたのですが、結構ヘビーな内容で驚きました。

 

酪農家にとって最も恐ろしいことは、家畜が全滅することでしょう。それが始まって早々に行われるのです。愛情いっぱいかけて可愛がり育ててきた羊たちを、処分しなければいけないという状況は、酪農を経験したことがない私ですらかなり精神的にきびしかったです。グミ―はキディの羊が疫病だと分かった瞬間、すぐさま自分の羊を連れて帰り一生懸命洗ってあげるシーンから分かるように、羊は家族でもあるのです。その家族を殺処分しなければいけない苦しさは想像を絶するものです。

 

ですが、グミ―は数頭残してしまうのですねぇ。確かに、あきらめきれないです。先代から受け継いだ由緒ある血統を絶やすわけのはいきません。その羊たちがきっかけで兄弟はまた少しずつ交流をもってゆくのですが、ここからがまた私の予想が外れました。

「えっ⁉(;´Д`)」ってリアルに言いました(笑)。そんなぁ!とも言いました、そんなラストなんです。

 

なんというか、神話っぽいともいえる感じなのですが、もやもやした気持ちで終わってしまいます。なんという言葉がこの作品に合うのか、一生懸命無い知識を絞って考えてみたのですがどれもしっくりきません。「せつない」とか「やるせない」とかそんな言葉でもないんです。かっちり合わないんです。なので、ハッピーな気持ちになりたいときや、笑顔で席を立ちたい気分の時に見る作品ではないことは断言しておきます。

 

ですが、観た後もずっと考えてしまう作品もそうそうないので好き嫌いはありますが、私はとても良い作品だったなと思っています。するめ系作品ですね。進んでお勧めはできないですが、時間が有り余っていて余裕があるときに手に取ってもらえたらいいなと思います。

 

是非是非!

ウォーリアー

 

2011年アメリカで公開された作品です。

 

ウォーリアー(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

アメリ海兵隊に所属していたトミーが町に帰ってきたところから物語は始まります。優秀なレスリング選手だったトミーの父パディも優秀なレスリングの監督でしたが、質の悪い酒乱でした。そのため、トミー、母、兄のブレンダンは父の元から去ろうとしますが、兄のブレンダンは現在の妻テスと別れたくないため父の元に残ります。トミーはパディとブレンダンのこの行いを許すことができないままでいました。そしてトミーは、ある一件を発端に海兵隊から去り、大金をつかむため優勝賞金500万ドルの総合格闘技「スパルタ」へ参加します。何としてでも優勝したいトミーは許しはしていないが、技術面では認めている父の元へ訪れます。一方、兄のブレンダンはフィラデルフィアで高校の物理教師をしていました。しかし、娘が難病に侵された際に発生した医療費が高額だったため、ローン返済に四苦八苦していました。なんとか返済するため、元総合格闘家でもあった彼は地元の小さな総合格闘技の試合に出て小銭を稼いでいました。その日は運悪く生徒の親に出場しているところを目撃されてしまい、教育に悪影響という理由から停職処分にされてしまいます。停職中でも返済は待ってくれないので、ブレンダンは返済金を稼ぐため「スパルタ」への出場を決意します。トミーとブレンダン、そしてパディは運命に導かれるように「スパルタ」というリングに立とうとしていました。

 

監督は、「ジェーン」「ザ・コンサルタント」などを手がけている、ギャヴィン・オコナー。英国人ジャーナリスト、アンソニー・ロイドのボスニア戦争を題材にした著書「My War Gone By, I Miss It So」で再度トム・ハーディとタッグを組むそうです。

 

キャストは、不愛想で歩く後ろ姿がクマにしか見えないトミー役に「マッドマックス:怒りのデスロード」「ダークナイトライジング」「ヴィノム」のトム・ハーディ。舞台にも積極的に出演しており、2004年にはイギリス版のトニー賞ローレンス・オリヴィエ賞にもノミネートされています。今作では、総合格闘家を演じるためかなりのトレーニングを積んで臨んだそうです。うん、もう後ろ姿まんまクマそのものでした(笑)。

家族思いのワーキングプア物理教師、兄ブレンダン役に「ザ・ギフト」「レッド・スパロウ」のジョエル・エジャートン。兄でスタントマンのナッシュ・エジャートンと演劇学校時代の友人らと共に「ブルータン・フィルムズ」を設立しており、2018年アメリカで公開されたシャーリーズ・セロンアマンダ・サイフリッドなどが出演した犯罪映画「グリンゴ」を製作しています。

情けないとしか言いようがない父パディ役に「サウス・キャロライナ/愛と追憶の彼方」「白い刻印」などのニック・ノルティ。オスカーに2度ノミネートされる実力のある方で、今回は酒で家庭を壊してしまった父親を見事に演じています。

 

格闘技を題材にした作品はこの作品と、ヒラリー・スワンクの「ミリオンダラーベイビー」(オスカー授賞式に着ていたジャージ素材のドレスが凄く素敵でよく似合ってましたよね!)、クリスチャン・ベイルの「ファイター」ぐらいしか観たことがないのですが、試合のシーンがとてもカッコよかったので今回はこの「ウォーリアー」を紹介します。

 

ストーリーとしてはよくある家族の再生物語なんですが、ダラダラせずにテンポよく話が進んでゆくので飽きずに観ることができます。そしてつくづく思うのですが、トム・ハーディはこういう不愛想で暴れん坊の役が本当によく似合いますよね。「はぁ(♯´Д`)?」って感じの表情がぴったりです(笑)。兄ブレンダンもいろいろと大変なんですけど、家族や友人のサポートを一身に受けているブレンダンより、孤独で影のあるトミーの方にどちらかというと感情が入ってしまいました。一人で戦っている人ほど手を差し伸べたくなるものはありません。

 

あと、格闘のシーンなのですがとてもよく撮られていたと私は思います。本当の総合格闘技の中継を観ているのでは?と私は錯覚させられるほどでした。変なカットがなく、流れるような試合シーンだったのでより生中継っぽさがありました。スピーディーな試合展開なので演技とは分かっていても、結構熱くなります。がんばれトミー!負けるな(゚Д゚)ノとつい応援してしまいます。

 

総合格闘技」といかにも男の子が好きそうな題材なので、女の子には興味を持たれないかもしれないのですが、家族再生の物語でもあるので「格闘技別に好きじゃないから違う作品にしよ('_')」とは言わずに、なんとなくでもいいので試しに観てみるのもいいのではないでしょうか?クマのようなかわいい後ろ姿のトム・ハーディ―目当てでも損はないと思います。

 

是非是非!

チョコレートドーナツ

2012年アメリカで公開された作品です。

 

チョコレートドーナツ(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

1979年のカリフォルニアが舞台。歌手の夢を追いかけショーパブで日々歌うゲイのルディは、検事局で働く客のポールと交際を始めます。ある日ルディは、アパートの隣の部屋に住むダウン症の少年マルコが母親のドラッグ中毒が原因で逮捕されたことをきっかけに施設へ預けられたことを知ります。しかし、マルコは幾度となく施設を脱走。その姿を見て心を動かされたルディはポールにマルコを引き取り家族になりたい旨を相談し、二人はゲイであることを隠し法的手続きを行います。しばらくの間は3人で幸せな時間を過ごしていましたが、ホームパーティでポールの上司と衝突してしまい、事態は不穏な方向へと進み始めます。

 

監督は、「17歳のカルテ」「チャイルドプレイ3」のトラヴィス・ファイン。うーん、振り幅が凄い監督ですよね、「17歳のカルテ」から「チャイルドプレイ3」って(笑)。でも、どちらの作品も良かったですよね。特に「17歳のカルテ」は素晴らしかったです。ウィノナが可愛かった(*´ω`*)

 

キャストは、夢を追うゲイの歌手ルディ役に「マスク2」「バーレスク」「バトル・オブ・ザ・セクシーズ」のアラン・カミング。舞台「キャバレー」でトニー賞を受賞しているほどの方なので、劇中での彼の歌は大変素晴らしかったです。実生活でもバイセクシャルを公言しており、現在は同性婚されています。

真面目でハンサムなルディの彼ポール役に「ノーカントリー」「ウィンターズボーン」のギャレット・ディラハント。主にTVドラマを中心に活躍されており、「CSI:科学捜査班」や「Xファイル」などにも出演されています。

心優しくチョコレートドーナツが大好きなダウン症の少年マルコ役に、アイザック・レイヴァ。幼いころに観たディズニーの番組がきっかけで役者を志し、障がいのある人が学べる演劇学校へ入学。今回見事オーディションに合格し出演を決めました。実は、アイザックのお母さんも役者を志していたようで、アイザックが役者になりたいと言い出した時は大変驚いたそうです。

 

アランやギャレットの演技はもちろん素晴らしいのですが、特にアイザックの演技がとてもナチュラルで心にジーンとくるものがありました。上手なんですよ、アイザック。なので、アイザック演じるマルコが母親から虐待されているシーンは直視できなかったです。「かわいそう」という言葉で片付けてはいけない悲惨さでした。

 

 常に偏見が付きまとい時には攻撃もされてしまう彼らですが、人を思いやる気持ちは大変強いものがあり、ノーマルな人たちよりも人間味があります。偏見を持つなとは言いませんが、偏見を持つ方たちの偏見の理由がいつも私は分からないのです。「何がいけないの?」と問いてみても「普通じゃない」とか「生物学的に~」とかなんだかしっくりこない理由が多いにも関わらず攻撃的。きっと、そういう人たちは納豆カレーとか食べたことない人なんでしょうね。カレーはカレー!納豆は納豆!みたいにきっちりと枠を用意してもらいたいんでしょうね。

 

確か、何処かの動物園でゲイのペンギンのカップルが他のカップルの卵を横取りしようとして群れから総スカンを食らっている、というニュースを目にしたことがあります。その後、彼らの元に育児放棄された卵を渡したところ2羽はせっせと温め始めたそうです。なので、この作品を観たときにすぐこの2羽のことを思い出しました。性別や血筋はあまり関係なく、気持ちがあるかどうかが重要ということを強く感じました。

 

家族の絆を描いた作品は沢山あります。お父さんがいてお母さんがいて息子、娘がいる。でもこの作品にはお父さんもお母さんも出てきません。ですが、立派な「家族」の物語なのです。最後の結末は本当にやるせなく腹立たしい気持ちにもなります。ですが、いろいろと考えさせられる作品でした。笑顔で終われる結末ではないですが観て損はないと思いますよ。

 

是非是非!

 

 

オン・ザ・ミルキーロード

2016年のセルビア映画です。

 

オン・ザ・ミルキー・ロード(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

動物が大好きなコスタ。動物たちもコスタのことが大好きで彼の肩には常に相棒のハヤブサのリュビッツァが止まっています。そんなコスタの国は隣国と戦争真っ最中。そのため彼は、前線にいる兵士たちにロバのトニーに乗ってミルクを届ける仕事をしています。コスタの雇い主の娘ミレナは美人で運動神経抜群(2階の窓から宙返りをしてコスタの肩に着地したりします!)、村の男性たちにも人気がありました。そんなミレナはコスタに想いを寄せており、戦争が終わり戻ってきた兄ジャガが結婚式を挙げる際に自分もコスタとの挙式を計画します。しばらくして休戦協定が結ばれ、村は平和の訪れに大賑わい。挙式準備も着々と進められていましたが、兄ジャガの花嫁を愛していた多国籍軍の将校が、花嫁を連れ去るため村を火の海にしてしまいます。間一髪で生き残ったコスタと花嫁は逃げざるを得なくなります。

 

監督は、「アンダーグラウンド」「黒猫・白猫」「アリゾナドリーム」などのエミール・クリストリッツァ。今回は、監督・出演も果たしています。カンヌ・ベネチア・ベルリン、この三つの映画祭全てで受賞をしており、カンヌ国際映画祭最高賞のパルム・ドールは2度も受賞している腕のある監督です。

 

キャストは、美しい花嫁役に「マトリックスリローデッドマトリックスレヴォリューション」「007 スペクター」などのモニカ・ベルッチ。元々は弁護士を目指しており、学費を稼ぐためにモデルを始めたことがきっかけで女優になったそうです。イタリア語・フランス語・英語・ペルシャ語も話せます。頭が良くて美人って最強ですね(笑)「007 スペクター」の時のボンドガールも素敵でしたよね。グラマラスな方で細過ぎないラインが綺麗です、私は彼女のどっしりとしたお尻がとても好きです(笑)

 

アンダーワールド」「ライフ・イズ・ミラクル」もそうでしたが、今回の作品もベースに「戦争」があります。ボスニア紛争を経験した監督だからこそあえてこのベースにしていると思うのですが、監督の描く戦争はポップなんです。曲調は明るいけれど、歌詞は凄く悲しいって感じです。今回の作品も、のどかでのんびりした田舎風景がとても綺麗な中で弾丸がビュンビュン飛んでいて、そこに住んでいる村人たちも呑気な人たちが多くてかなりギャップがあります。ロべルト・ベニーニ監督の「ライフ・イズ・ビューティフル」に若干雰囲気が似ている感じがします。

 

動物たちも大活躍しており、ハヤブサ・ロバ・アヒル・ヘビ・ヤギ・クマなどが名演技を披露しており、特に相棒のハヤブサのリュビッツァくんは音楽に合わせて首を振ったり、コスタがピンチになった時には助けてくれたりします。ロバくんもなかなかいい演技をしていて、ロバのトミーくんが死んでしまうシーンは思わず涙してしまいました。動物が死んでしまうシーンはどうしても涙腺が緩んでしまいます(ノД`)・゜・。

あと、凄かったのがクマ!この作品を観るきっかけになったのが、予告でコスタがクマに口移しでオレンジをあげているシーン。このシーンはやっぱり強烈でしたね、どんなホラーやサスペンスの予告より驚きました(笑)。普通頭ごとパクっと食べられちゃいそうなのに…(;´Д`)監督曰く、ちゃんとお腹いっぱいにさせてあげて、常日頃から信頼関係をしっかり築いていれば問題ないそうです。本当かよ(-_-;)

 

あと、神話っぽい印象もあり、コスタとヘビの関係は特に神話っぽい印象を受けました。しゃべりはしないですが、行動や目でコスタに何かを伝えているというのが観ている側にも分かるってところも神話っぽい印象を強くさせていました。

 

動物や呑気な人々、陽気な音楽、となんだか童話のような世界観でありながら、戦争の悲惨さや残酷さなどもベロっと見せてくるこの対比が独特で、展開も結構ぶっ飛んでいて「???」となってしまう時も正直あります。なので、もしかしたら好き嫌いが分かれるかもしれません。ですが、動物だけでも観る価値があるので、動物好きな人は観て損はないです。

 

ハリウッド映画ばかりが大きく宣伝されるので、こういった作品に触れる機会って映画が好きな人以外あまりないですよね。レンタルショップでも置いてなかったりするのが多いです。確かに、ハリウッド系作品って楽しいですよね。私も大好きで、沢山観ます。でも、たまには普段馴染みがない国で作られた不思議な作品やとても古い時代の作品を観てみるのもなかなか面白いものですよ。

 

是非是非!

メタルヘッド

 

2011年アメリカで公開された作品です。

 

メタルヘッド (字幕版)

 

ざっくしあらすじ

母親を交通事故で亡くしてしまったT.Jと父ポールは現実を受け止められずにいました。父は依存症患者のような状態になってしまっているし、学校では虐められるわで何一つ良いことがない日々を送っていました。その日もスーパーマーケットの駐車場で虐められていましたが、スーパーのレジ係ニコールがT.Jを助けます。デカくて度が強いであろうダサいメガネを掛けた地味な女性ですが、T.Jはそんな彼女に淡い恋心を寄せます。そんなT.Jの目の前に突然ヘッシャーと名乗るイカれたメタル野郎が現れます。その行動は正に破天荒で、T.Jの祖母マデリンの家に勝手に住み始めたり、車にガソリンを撒いて燃やしたり(爆破に近かったかも(;´Д`))します。そんなヘッシャーと行動を共にしていくT.Jは前を向くことができるのでしょうか。

 

監督は、スペンサー・サッサー。彼は、CMやミュージックビデオなどで腕を磨いてきた人で、この「メタルヘッド」が彼の長編映画デビュー作になります。「かいじゅうたちのいるところ」のスパイク・リーに経歴が似ていますね。

 

キャストは、辛すぎる毎日を送っている少年T.J役にデヴィン・プロシュー。

イカれたメタル野郎ヘッシャー役に「500日のサマー」「インセプション」「ダークナイトライジング」のジョゼフ・ゴードン=レイヴィット。この作品以前は爽やかなイメージの役が多かったジョゼフでしたが、今回は長髪・ひげもじゃ・タトゥーバリバリの世捨て人ルックで登場します。短髪で少し神経質そうな感じも似合っていますが、世捨て人ルックもなかなか板についていました。セリフもほとんどFワードしかないのでは?と思うほど下品なのですが、T.Jの祖母マデリンと仲良くなったり、T.Jやニコールを助けてくれたりと結構いい奴なんです。ギャップ萌えってやつですね。私がもし男優だったら絶対オーディション受けに行くだろうなと思うほど、とてもいいキャラクターです。

冴えないスーパーレジ店員ニコール役に「レオン」「スターウォーズ」「ブラックスワン」のナタリー・ポートマン。ナタリーはプロデューサーも兼任するほど熱を入れています。オスカーを獲った後の作品にこれを選ぶとは…、流石ハーバード大卒であります。仕事のとり方が上手い(笑)。

 

誰にでも生きていて1度や2度「最悪な時期」ってあります。そんな「最悪な時期」を過ごしている人間たちが今回描かれていますが、特にニコールの辛さが嫌というほど共感できます。なぜ、こんなに金が足りんのだ_( _´ω`)_なぜ、こんな時に駐禁_( _´ω`)_なぜ、こんな時に事故る_( _´ω`)_と、まぁリアルな不運が連発しています。他のキャラクターが浮世離れしているので、尚更ニコールに共感してしまいます。

 

監督がインタビューで、ヘッシャーのような破天荒でフラフラしたやつにすごく興味があって憧れると話していましたが、私も同感です。憧れます、ヘッシャー。彼は、出来ないことを簡単にやるんです。私は車燃やしたりできないです、怖いから(笑)でも、ヘッシャーみたいな人って正直に意見を言うし、行動することができるんです。あまりにも辛い過去があるのか、逆に何も無いのかのどちらがだとは思うのですが、怖いもの知らずって最強ですよね。実際身近にヘッシャーみたいのがいたら絶対に関わりたくないですけど、知人のまた聞きで近状とかは知りたいタイプです(笑)

 

嫌なことや悲しい事や辛いことって沢山あって、それがたとえ些細な事でも積もり積もればやがて大きなモノになってしまって、気づいた時には手の施しようがなく、途方にくれて泣くことしかできなかったり、外に出ることができなくなってしまって一歩踏み出せない時が誰しもあると思います。色々な解決法があるはずだけど、見つけられない。そんなときに、壊して壊して壊しまくって、やりたい放題自由気ままに生きているヘッシャーを見るとどうでもよくなります。生きていればなんとかなるかと思わせてくれます。ルックスは世捨て人ですが、やっぱりジョゼフが出ている映画は爽やかで素敵です。

 

あと、作中でメタリカが沢山流れるのもポイントです。めったに楽曲提供しない彼らですが、ヘッシャーのモデルが24歳の若さで亡くなったメタリカのベーシスト、クリフ・バートンだということに感動し提供に至ったというエピソードもあります。タイトルロゴもメタリカのロゴと同じなのも微笑ましいですよね。

 

自己嫌悪に陥った時やもやもやした時、スカッとしたい気分の時に是非手に取ってほしい作品です。「どうにでもなる、大丈夫!」と思わせてくれます、なんてったってキャッチコピーが「最悪な人生にファッ〇・ユー!」なんで!

 

是非是非!