ヒトラーの忘れもの

2015年デンマーク・ドイツ製作の作品です。

 

ヒトラーの忘れもの(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

1945年ドイツから解放されたデンマークは、捕虜として引き渡された15~18歳のドイツ人少年兵たちに、ドイツが埋めた200万個以上の地雷撤去を命じました。ラスムスン軍曹はその地雷撤去の指揮を担当しますが、作業に派遣されたのがまだ子供であることに多少動揺します。しかし、任務と割り切り厳しく指揮を執ります。「この浜辺に埋まっている地雷を全て撤去したら国へ帰れるぞ!」と言いながら。

 

悪者として描かれることの多いドイツ兵ですが、今回は敗戦後のドイツ兵にスポットを当てており、しかも少年兵という何とも苦々しい立場で登場しています。地雷撤去に派遣されている少年らは、元々ヒトラーユーゲントに入っていた子たちだと思われるのですが、敗戦後の彼らの待遇は悲惨なもので、やっと戦争が終わったのにもかかわらず国に帰ることも許されず、命を危険にさらしながら命令に従わなければいけなかった姿を見るのはとても複雑でした。

 

恨みや憎しみの感情がホヤホヤな終戦直後に、感情だけで命令を下すなとは、とても言えないことは百も承知なのですが、やはり何の罪もない少年たちに対して、ここまでひどい事をしなくても…。と思ってしましました。たぶんそれは私が戦争というものを知らず、本当の憎しみという感情も抱かずに生きてきた証拠なのだと痛感しました。確かにドイツが行ってきた悪行は数知れずです。なので、少年たちが苦しい状況になってもいい気味だと思うのは仕方がないこのとなのですが、うーん、難しい…。

 

今の私のような平和ボケした人間だと、「戦争中ドイツには散々なことを沢山された!でも、君たちがやった訳じゃないから。」という、ケースバイケースな考え方が適用されるのですが、経験者から言わせれば「そんなもんねぇよ!」なんですよね。「ドイツ人はみんなヤバい奴らの集まり!だから女だろうが子供だろうが関係ないね!」これが憎しみであり、戦争なんですよね。

 

ただ、その中で唯一の希望がラスムスン軍曹でした。彼だってドイツをかなり恨んでいますし、許すことなんて到底できないでしょう。ですが彼はケースバイケースな考えができる人だったので、何も知らない少年たちに押し付けて大人たちは知らんぷり。地雷で吹き飛ばされた少年を見ていい気味だと笑っていたかと思えば、自分の子供が危険な目に遭えば泣いて助けを求める。そんな人間たちを見かねて「これはやり過ぎている。」とラスムスン軍曹は言いますが、ドイツの罪を忘れるな!と返されてしまったら何も言えないですよね。

 

しかし、作業を行っているのはド素人の少年たち。地雷の扱いも知らないため、不注意によってどんどん人数は減ってゆき、最終的には14人から4人にまで減ってしまう惨状を目の当たりにするのはやるせないです。その中に双子の少年兵がいたのですが、最初、兄が不注意によって亡くなってしまい、片割れの弟が粉々になって身体の欠片すらなくなってしまった兄を「探しに行かなきゃ、見つけてやらないと。」とうわごとの様に繰り返し、結局自分も自ら地雷を踏み死を選んでしまったシーンは観ていられなかったです。戦争は終わったはずなのに、まだ終わらないなんてあんまりです。

 

今まで、戦争がテーマの作品は何本か観てきましたが、この作品は異色でした。この視点の作品ってあまりないような気がしますし、気づかされることも多くありました。ただ、やはり子供を駆り出すのはダメです。「少年兵」という単語も反吐が出るくらい嫌いです。現在「ジョジョ・ラビット」という作品が公開されているようで、評価も良いみたいですね。「ジョジョ・ラビット」を観て「いい作品だった―!」で終わっている方がいらっしゃるようでしたら、是非この「ヒトラーの忘れもの」も観てほしいです。「ジョジョ・ラビット」の中で奮闘していたヒトラーユーゲントの子たちがその後どうなっていったのかを観てください。きっと、100分前の自分と100分後の自分とではほんの数ミリかもしれないですが、考えが変わっているはずです。

 

是非是非!