赤い風船

1956年公開の作品です。

 

 

ざっくしあらすじ

登校中のパスカル少年が街灯に引っかかっていた真っ赤な風船を見つけ、その風船を手に取ります。パスカル少年はその風船を大切に扱い、雨にも濡らさぬようにします。すると、赤い風船は感情を持ち合わせているかのようにパスカル少年の後をついていくようになり、パスカル少年と赤い風船の間には不思議な友情が芽生えます。

 

監督はアルベール・ラモリス。商品詳細にもあるように「白い馬」の監督でもあります。この監督、結構凄い方で、ヘリコプターでの撮影中の振動によるブレを起こさないようにしたシステムを開発したり、ボードゲーム「リスク」の発案者でもある方です。残念ながら、1970年に撮影中の事故でお亡くなりになっていますが、その撮影していた作品は奥さんと監督の息子でこの作品の主人公でもあるパスカル氏が引き継ぎ完成させています。

 

ジャケットや大まかなストーリーだけだと、とっても可愛らしい作品と思っていましたが、実は結構怖い作品なんです。

 

確かに、途中まではほんわかした可愛らしい展開なのですが、近所の悪ガキ達が登場してから物語は一変し、風船が攻撃されてしまうというなんとも非情な展開になります。必死に風船と少年は逃げるのですが風船は割られてしまい、少年はひどく悲しみます。

問題はこのあとなんですが、なんと!街中の風船がパスカル少年の元へ集まり、少年を空高く舞い上げ、飛び去ってしまうのです。

 

ハーメルンの笛吹き男」を彷彿とさせるラストシーンが妙に不気味でした。可愛らしいパスカル少年と健気な赤い風船が尚更そうさせてしまうのですが、無茶苦茶複雑な気持ちになりました。

 

一つ一つのシーンはとてもビビットな質感でどこをとっても絵になるシーンばかりですし、こんな不思議で不気味なストーリーを考えつくなんて凡人ではできないです。凡人であれば、きっとラストは誰もが「よかったぁ!」と思えるようなベーシックなものにすると思います。それをあえてしないところが凄いですよね。

 

外側は綺麗で可愛いけれど、中身を見たら声にならないほど気味の悪いおもちゃ箱のような作品、と私は思っています。これは、貶しているわけではなく最高の誉め言葉です。実際「ハーメルンの笛吹き男」の話だって、何世紀にも渡り伝え続けられていることでもわかるように、パッと見は可愛らしくてもよく見ると不気味で恐ろしいものに人は惹きつけられるようになっていると思うからです。

 

是非是非