ロープ 戦場の生命線

 

2015年スペインで製作された作品です。

 

ロープ 戦場の生命線(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

舞台は1995年の停戦直後のバルカン半島。“国境なき水と衛生管理団”の活動家たちが井戸に投げ込まれた死体を引き上げる作業中、あともう一歩のところでロープが死体の重さに耐えきれず切れてしまったものだから、さぁ!大変!予備のロープもなく、新しく購入しようとすれば「お前らに売るロープは無ぇ!」と追い払われてしまう始末。そんな中、一人の少年がきっかけでロープを入手することができる可能性が浮上し、活動家たちは生活用水汚染を食い止めるべく、少年の自宅へ向かうことになります。

 

監督は、スペイン出身のフェルナンド・レオン・デ・アラノア。今作では、監督兼脚本を担当し、監督自身初の英語作品となっています。また、第30回ゴヤ賞では脚色賞を受賞しています。

 

キャストは、国境なき水と衛生管理団のリーダー、マンブルゥ役にベニチオ・デル・トロ。今作でサラエヴォ映画祭・生涯功労賞を受賞しています。

ベテランイケイケ活動家のビー役にティム・ロビンス、正義感溢れる新人活動家ソフィー役にメアリー・ティエリー、アシスタント的な役回りをさせられている通訳ダミール役にフェジャ・ストゥカン、マンブルゥと肉体関係を持っている気の強い美人捜査官カティヤ役にオルガ・キュリレンコが出演しています。

 

またまたhagukiブログ再登場のトロさんとティムさん!今作も素晴らしかったです!まず、配役がジャストフィットしていましたね。もうみんなこの役者以外ダメっていうぐらい合ってました。

 

トロさんのあの大きな体とお腹、最高でしたね。よく、痩せたら良くなるのにという人は沢山いますが彼は逆です。痩せちゃダメです、このままの大きさをキープして頂きたい!包容力や貫禄が無くなってしまったトロさんなんて私は嫌です。そんなトロさんの役回りはリーダーのマンブルゥでしたが、本当に活動家として動いているのでは?と思うほど妙に冷静で余裕のある演技を自然にしていました。

 

ティムさんもグループの中で一番ユーモアがあって親しみやすく、知識も豊富な調査団員をイキイキとイケイケに演じていました。実際にビーのような人がいたらずっと一緒に行動したいタイプの人でしたね(笑)。

 

停戦中とはいえ一応戦場をフィールドワークとしているので、いたるところに戦争による人の醜さや悲惨さ、悲劇がちりばめられています。そして、彼ら活動団が主に関わるのが「水」です。生物にとって必要不可欠なこの「水」の安全を確保するべく働く彼らの周りでは、理解しがたい行動でこの「水」を悪用する輩が多くいます。でも、マンブルゥは言います「これが戦争だ」。

 

一般的な戦争映画は激しい戦闘シーンや目を覆いたくなるような暴力シーンが描かれますが、この作品では戦闘シーンも流血シーンも一切ありません。ですが、その描写がない故に人間の狡さや醜さや愚かさ、弱さ、不条理さが観ている者の胸に強く突き刺さります。フィクションではあるのですが、監督の書く脚本が本当に細かく秀逸なので「これはドキュメンタリーなのか?」と錯覚してしまう部分があるので、尚更胸が痛むのだとも思います。

 

ドキュメンタリーのようだと思ったのは、シリアスな場面ばかりだけではなかったのも大きかったです。現実的に考えるとずっとシリアスな場面ばかりが続くはずがなく、人間誰しも冗談を言ったり、へっぽこな間違いをしたりするのが普通で、ずーっと真剣な表情で真面目なことばかり言っている作品の方が非現実な感じがしますよね?この作品はそのシリアスとユーモアのバランスが絶妙でした。

 

劇中で流れている音楽も、バズコックスやラモーンズなどのロックが多く使用されていたのも素敵でした。バズコックスファンとしてはちょっと嬉しかったです(*´ω`*)

 

思い通りにいかないし、未来を悲観してしまいそうな現実もこの作品ではしっかりと描かれています。ですが、鑑賞した後は不思議と前向きになることができるのです。たぶん、彼らのように全力で現地の人々の生活を守るため奔走している活動家がいるということだけで、希望はまだ目に見えるところにあるような気がするのです。

 

是非是非!