白い恐怖

1945年公開作品。

白い恐怖

 

ざっくしあらすじ

美人で真面目な精神科医コンスタンスが勤務している病院は精神を病んでいる患者を集中的に扱っています。ある日、マーチソン病院長に変わり新しい病院長エドワード博士が赴任してきます。しかし、このハンサムな病院長、白地に縞のある模様を見ると発作を起こす妙な人物で、周りは次第に彼がエドワードではないことに気づき、彼を疑いの目で見るようになります。しかし、偽エドワードに熱を上げているコンスタンスだけが彼の味方となり、二人で謎を解き明かしてゆきます。

 

監督は「サスペンスの神様」こと、アルフレッド・ヒッチコック。「サイコ」「めまい」「裏窓」「鳥」等々、沢山のサスペンススリラー作品を世に送り出した監督です。彼の作品の中では「サイコ」「鳥」辺りが知名度が高いかもしれないですが、今回は「白い恐怖」を紹介します。

 

キャストは、勉強熱心で真面目な精神科医コンスタンス役に「カサブランカ」「別離」「汚名」などのイングリッド・バーグマン、新しい病院長エドワーズ博士だと思い込んで病院に来てしまった記憶喪失のジョン役に「ローマの休日」「オーメン」でおなじみのグレゴリー・ペックが出演しています。

 

かなり古い作品しかも白黒なので、観にくいかなと思いましたが私は全く気になりませんでした。むしろ、イングリッド・バーグマンの美しさにビビッてました(笑)。あの時代であれだけ美人って凄いですよね。美容整形だってまだまだ発達していなかったあの時代に、あの顔は素晴らしい…ポーっとしちゃいます(*´Д`)ブロンド美人を出したがるヒッチコックらしいキャスティングです(笑)。同じブロンドでグレース・ケリーもかなりの美貌ですが、イングリッドの方がふっくらとした輪郭で親しみやすさがありますよね。

 

相手役のグレゴリー・ペックの2枚目ぶりも思う存分堪能できます。ハンサムって言葉がとてもお似合いで、知的で紳士的なところも素敵でした。最近はグレゴリーのようなスマートで紳士的なハンサム俳優って少なくなったような気がします。結構肉体派な男らしいマッチョメンが多い印象です。時代の移り変わりで女性の好みも変わったのでしょうかね(笑)?

 

精神病棟や精神疾患がキーとなるこの作品は当時としてはまだ物珍しかったテーマで、ヒッチコックは後に「サイコ」で精神的にちょっとヤバいマザコン殺人鬼を描いており、この作品が精神疾患を扱う最初の作品になっていると思われます。

 

自分が殺害したかもしれない記憶を蘇らせなければいけない恐怖、白地に縞を見ると無意識に発作を起こしてしまう恐怖、自分が何者なのかもわからない恐怖、追いつめられる恐怖。と沢山の恐怖によって進められていくのですが、その中で唯一癒しになるのがコンスタンスの無垢な愛情と知性です。医者ということもあり、映画でよくあるおっちょこちょいなヒロインとは違い、冷静で気転の利く女性なので観ているこっちも安心できます。

 

ダレてしまわないか心配したのですが、そこはヒッチコックらしく随所随所にハラハラさせるシーンがしっかり入ってくるのでダレることなく楽しむことができ、時間を忘れることができました。ちゃんとヒッチコックカメオ出演もあるので、ヒッチを探しながら観るのも楽しいですよ!

更に、あるシーンではサルバドール・ダリが協力しているため、より「精神」「記憶」「幻覚」などのイメージを色濃く受け取ることができます。

 

あと、私のヒッチコックの好きな箇所なのですが、最後に絶対「THE END」のクレジットがあるところと、チョイ役で出てきたキャラクターが最後にひょうきんな感じで出てきてクスッとさせて締めるところが、ヒッチコックの人柄が出ていてとても好きです。

 

蛇足ですが、「羊たちの沈黙」にてアンソニー・ホプキンス演じるハンニバル・レクターが収監されているときに身に付けている物は全て真っ白な衣装でしたよね。普通、アメリカの囚人服はオレンジのイメージですが、あえて白にしたそうです。これはアンソニーの発案で理由は、白い白衣を着て真っ白い空間の中で施術する歯科医のイメージから衣装を白にしたそうです。

確かに、この作品も病院で白衣を着た医者や看護婦が患者へ鎮静剤を打ったり、薬を飲ませたりしているシーンを観ると、白=恐怖の色というのは頷けます。

 

ヒッチコックの作品の中では目立っているかと言われるとそうではないのですが、彼がいかに目の付け所が鋭い監督だったのかということが実感できる作品だと思うので、「サイコ」や「裏窓」「めまい」などヒッチコックに少しでも触れていて、興味があるという方が観て損はない作品です。

 

是非是非!