グッバイ・クリストファー・ロビン

2017年公開の作品です。

 

グッバイ・クリストファー・ロビン [DVD]

 

ざっくしあらすじ

作家のアラン・アレクサンダー・ミルンは、第二次世界大戦で患ったPTSDに悩まされていました。そんな中、妻のダフネが男の子を出産しますが女の子を望んでいたダフネは子育ての大半をナニーのオリーヴという女性に託してしまいます。アランも自分の子供ではありますが上手く接することができず、筆の方も思うように進まなくなっていました。強い照明の光や大きな物音にまで怯えてしまう毎日に嫌気がさし、気分を変えるべく物静かな田舎へと引っ越します。環境が変わったことが功を奏したのか、アランは息子クリストファー・ロビンと上手く接することができるようになり、息子と遊んでいるうちに新しい物語のアイディアが思い浮かびます。しかし、その作品は後に息子クリストファー・ロビン・ミルンの生涯において大きな重荷になっていくことになります。

 

A・A・ミルン役にドナルド・グリーソン、妻ダフネ・ド・セリンコート役にマーゴット・ロビー、ナニーのオリーヴ役にケリー・マクドナルドクリストファー・ロビン・ミルン役にウィル・ティルストン/アレックス・ロウザーがキャスティングされています。

 

ドナルド・グリーソンといえば「ピーターラビット」にも出ていたので、私の中で「動物が活躍する児童書の実写作品によく出る人」と認識されました。あと、この方のお父さんも俳優なのですが、最近見た「ヒトラーへの285枚の葉書」はとても良い作品でした。

 

同じような時期にディズニーの方でクマが大活躍する作品が公開されていましたが、この作品はそのクマのせいで人生がハードモードになってしまった息子の話です。

 

ジャケットだけ見るとほんわかした作品なのかな?と思い観ていたのですが、妻ダフネが「女の子が良かったんだけどー!」とか言い出した時点で、あれ?何だか雲行き怪しくない?となり、まだ赤ん坊のクリストファー・ロビンをナニーに押し付けてパーティーに行く夫婦を観て、これは可愛らしい話ではないんだなということをようやく理解しました。

 

アランは森の中で生活していくうちにクリストファーともようやく上手く遊べるようになり、クリストファーもニッコニコで幸せそうなのですが、その温かく楽しい父と子の時間を作家であるミルンは本にします。いや、別に構わないんですよ?いいじゃないですか、あんな素晴らしい本。きっと永遠に語り継がれることでしょうし、グッズだって何億単位で売れていくことでしょう。でも、それは「息子クリストファー=お金のなる木」となってしまうことをもう少し真剣に考えるべきでしたよね。

 

本が売れた後のクリストファーの生活は激変してしまい、街に出れば皆に囃し立てられどこへ行ってもクマの宣伝に使われてしまいます。このあたりのシーンはちょっと観ていられなかったですね。ダフネ役のマーゴットが演じる非常識で、デリカシーのない母親が凄く上手くて本当に嫌でしたね(笑)。その反面、ナニー役のケリーが視聴者にとってもクリストファーにとっても心の拠り所でした。たぶん、オリーヴがいなかったらクリストファーも私も危ないところでした。

 

ただ、ミルンもダフネもクリストファーを心から愛してはいるんです。ですが、その子にとって何が重要で何を求めていて何が大切か?という子育てにおいて基礎的な部分が欠落していただけなんですよね。ダフネの女の子を望んだ理由も「男は戦争に取られるから」という理由でしたしね。でも、こういった素直で可愛らしい子供が周りの大人のせいで苦労を強いられてしまうストーリーが苦手な人には向いていない作品になっていると思います。正直、私はきつかったです。

 

ただ、可愛らしいお話の裏には壮絶なドラマがあるというのは面白いと思いますし、ディズニーのクマを観た後にこの作品を観ると現実引き戻してくれると思うので、ユアン・マクレガーとクマのキャッキャウフフな世界から抜けられないお花畑な脳内をリセットしたいとお考えの方には大変お勧めな作品だと思われます。

 

是非是非。

ポップ・アイ

2017年シンガポール・タイ製作の作品です。

 

ポップ・アイ(字幕版)

 

ざっくしあらすじ

大型商業施設などを設計してきたベテラン建築士のタナー。そんな彼も今は若手が台頭している会社では居場所がなく、妻ともマンネリ化。しょぼくれた毎日を送っていたとき、偶然にも路上で小さな頃に飼っていた象のポパイと出会います。すぐさま象使いからポパイを買い、自宅へ連れ帰りますが妻は大激怒。そんな状況が嫌になったタナーは、故郷にポパイを連れ帰ることを決意します。1人と1頭は無事に故郷へたどり着けるのでしょうか?

 

監督・脚本は、カーステン・タン。短編映画で様々な賞を受賞している今注目の若手監督です。現在はニューヨークへ拠点を移し、ジョルジオアルマーニのCMなども手掛けているそうです。

 

くたびれた人の好いおじさんのタナー役に、タネート・ワラークンヌクロ。元々は音楽関係の方で歌手や作曲、プロデューサーなどを行っており、タイ国内におけるプログレのパイオニアとしても有名な方のようです。

そしてなんといっても今作で大変重要な役ポパイを演じるのは、長年セレモニーの象としてキャリアを積んできた芸達者なボンちゃんです。今回が初の映画デビューとのことですが、物怖じせず堂々とした演技を披露しています。

 

ロードムービーで象が相棒役って凄いですよね、象にゆかりがあるタイだからこそ出来たって感じの作品でした。ストーリーもざっくり聞くとよくある感じなのですが、登場するキャラクターや出来事が中々面白く、不思議でもありちょっぴり悲しくて、だけど気分は爽やかになる。ロードムービーとして私が絶対に押さえてほしい箇所をしっかり押さえてくれた最高の出来栄えでした。

 

あと、なんといっても象のポパイがすっごく可愛いくて優しくて賢い‼

よれよれなタナーとさとうきびっぽいものを食べながら歩いているシーンは、象のはずなのに何故か妙に人間臭く感じて可笑しかったですし、タナーに直射日光が当たらないように日陰を作ってあげたり、倒れたタナーに鼻から水をぶっかけてあげるなど本当に優しく賢いのがもうたまらなく可愛かったです。

 

この映画に出てくるキャラクターたちは皆、暗いものを持っていて、それは安易に他人が触れてはいけないような代物です。ですが、この映画ではその代物をどうにかしようとするわけでもなく、只々その代物を持って歩いていくだけ。捨てることもせず、よいしょっと持っていくだけなのです。ロードムービーにありがちな自分を見つける的な出来事や解釈みたいなのが一切ないところが現実味があって私はよかったなと思いました。

 

象可愛い!という軽い気持ちで観た作品だったのですが鑑賞後は意外にも結構心に残りましたし、考えさせられる作品でした。考えさせられますが、後味が悪いとかそういった作品ではありませんのでその辺りはご安心してください。

 

日本ではあまり馴染みのない象と人間のダブル主演の作品、鑑賞後はきっとあなたも象が飼いたくなることでしょう。是非是非!

 

ローズマリーの赤ちゃん

1968年アメリカ製作の映画です。

 

ローズマリーの赤ちゃん (字幕版)

 

ざっくしあらすじ

ローズマリーと売れない役者のガイの若い夫婦がアメリカのアパートへ引っ越してきます。お隣のカスタベットとミニー夫婦はかなりの世話焼きでローズマリーは若干疎ましく感じますが愛想よく振舞います。そんな生活の中でローズマリーとガイは計画的に子どもを作ろうとしますが、ローズマリーは急に気分が悪くなり失神。失神している中でローズマリーは悪魔に犯される夢を見て気分は最悪でしたがなんとか懐妊します。新しい命に喜ぶローズマリーでしたが、隣人のカスベットとミニー夫婦のお節介は度を越してきており、よく分からない液体を「妊娠用ジュース」としてローズマリーに無理やり飲ませたり、産婦人科まで強制してくる始末。周囲の異常な行動に疑問を持ち、唯一信頼できる童話作家エドワード・ハッチに相談をしますが、その後彼は不可解な死を遂げてしまいローズマリーは得体のしれない恐怖へと押し進められてしまいます。

 

監督は皆さんご存知のロマン・ポランスキーポーランド出身のユダヤ人で、幼少期は第二次世界大戦真っ最中。家族はアウシュヴィッツ強制収容所へ収容され、自身は父がゲットーの有刺鉄線に穴をあけてくれたおかげで収容所行は免れましたが、ナチスの「ユダヤ人狩り」から逃れるための生活を強いられました。ゲットーでユダヤ人が一斉に逮捕された当時、ポランスキーの母親は妊娠していたそうです。なんだか、この作品に少しばかり影響しているような気もしなくはないですね。

ローズマリーを演じるのは、子供大好きでお馴染みミア・ファロー。彼女は最終的に14人の子供の母親になったそうで、その中の4人が実の子で後の10人は孤児で身体に障がいを持つ子も多くいたそうです。このように書くと印象が良いのでここで止めますが、もっと深く知りたい方はWikipediaへ飛んでみてください。この作品に劣らずなかなか不気味です。

 

お化けや怪物、幽霊なんてものは一切出てきません。(悪魔っぽいものはちらっと出てきますが)出て来るのは人間のみ。しかも、みーんな優しくて世話好きないい人達ばかり。怖いものなんて何一つないのです、信仰しているのが神ではなく悪魔ってだけなのです。

 

「人怖い系ホラー」の走りといった作品で、当時は特殊効果やスプラッタな演出が最大に盛り上がっていた時代だったと思いますがそれとは逆行するような演出だと思います。なんですが、まあ怖い。何が怖いって「これをやってあげるのが当たり前。」をドンドン押し付けてきくるところが気持ち悪いんですよね。あの「妊娠用ジュース」は強烈でしたね、だってヘドロじゃん!あれを断らずに飲むローズマリーも凄いですけどね。私なら絶対飲まない。

 

あと、妊婦っていう設定も巧妙でしたね。精神的・肉体的にもっとも不安定なりやすい時期のあの異常に神経質になる感じがたまらなくこの作品の世界観にマッチしていて更に不気味度を上げていた印象でした。ミア・ファローのあの痩せすぎなギスギスした感じもノイローゼ感が出ていましたね。

 

人間が悪魔の子を産むというトンデモな発想の映画なので、B級作品へ落ちてしまいそうなのですが、あえて「悪魔」という物体を表に出さないことで恐怖を煽ったのは素晴らしいと思いました。想像力が最大の恐怖ということなのでしょうが、その「想像させて怖がらせる」ところまで持っていくのを誤ると「ナニコレ(´Д`)?」となってしまいますが、その恐怖に陥れるまでの塩梅がとても上手くいった一例でしたね。

 

カルト的な人気を博した作品ですが、この作品が公開された翌年、ロマンの身に衝撃的な事件が起こってしまいます。犯人は特にロマンやシャロンに何一つ恨みはなく、人違いで殺害したとも供述していますが、この作品が引き金になった訳ではないというのも非常に気持ちの悪いタイミングです。

 

2019年8月30日にはクエンティン・タランティーノ監督作品「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」が公開されます。この作品ではシャロン・テート殺害事件のことも描かれているようです。「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド」を鑑賞する予定でまだ「ローズマリーの赤ちゃん」を未鑑賞であるのであれば合わせてご覧になることをお勧めします。きっと気味の悪さが増すと思われますよ。

 

是非是非。

エリザベス/エリザベス・ゴールデンエイジ

 

1998年、2007年に公開された作品です。

エリザベス [DVD]

 

エリザベス:ゴールデン・エイジ [DVD]

 

エリザベスが女王に即位し、その後「黄金時代」と評される時代へと向かうまでのストーリーです。

 

 

気づいたらあっという間に7月が終わってましたね。信じられない…、時間の流れが早すぎる!そして暑い_(:3 」∠)_

いきなりの気温の上昇具合に身体も追いつかなかったですね~、なんてたって我が家にはエアコンが無く扇風機のみしかないという状態。扇風機はあれども室温は下がらず30℃。その中で家事や料理をしなければいけないという灼熱地獄に突入!!就寝時も室温は下がらず、30℃の中での就寝。「そろそろ死ぬかな('ω')?」とうっすら考えながら過ごしていました。水道・電気が当たり前のようにエアコンも日本の全ての住居に必須で取り付けてほしいですね…。

 

そんな感じでエリザベスシリーズについて書いていきたいと思います。

主演は「ロード・オブ・ザ・リング」「バベル」「ブルー・ジャスミン」などのケイト・ブランシェット

エリザベスを支える重臣フランシス・ウォルシンガムには「レ・ミゼラブル「シャイン」などのジェフリー・ラッシュがキャスティングされています。

 

あまり歴史ものと恋愛ものを観ない私ですが、この作品はとても好きです。と言いますか、ケイト・ブランシェットが好きなんです。いいですよね~、賢そうな(というか賢い)顔立ちが好みです。派手で気の強そうな顔立ちの女優も嫌いではないですが、品のある感じがして好きです。

 

そんなケイトが演じるエリザベス1世は、元々王位継承権は低い立ち位置から見事女王に君臨した強者で、幼いころから泥水を啜るような経験を味わって来たが故にとても用心深く、人間観察に優れていました。母、アン・ブーリンは父ヘンリー8世によって斬首刑、そのため庶子として王位を剥奪。その後王位継承権は復活したものの姉のメアリ1世からはロンドン塔へ幽閉されるなどけちょんけちょんにされながら生きてきました。しかし、けちょんけちょんとは言うもののちゃんと侍女は付いていましたし、教育もしっかり受け教養のある女性へと成長。努力を怠らず万が一に備えた生活をしていたので、たった9日間で処刑されたジェーン・グレイとは大違いでした。

 

そんな虎視眈々としたエリザベスにケイトの演技はかっちりとハマっていました。ただの幽閉されていた女性から国を代表する女王になるまでの微妙な変化や心中を見事に表現していました。特に、カトリック側の身内をドンドン処分していく様は恐ろしくもあるのですが、エリザベスがどんどん人間ではない何かになっていくようで哀れにも見えました。この時、即位前のエリザベスからは想像もできないような表情をしているのですが、その変化のつけ方か非常に素晴らしかったです。

 

即位後も根強いカトリック信者による圧力(協会に駆け込んでエリザベスに銃を突きつける若者に今や大スターのエディ・レッドメインが一生懸命演じてます)やスペインとのいざこざ、結婚問題など悩みの種が尽きない中でちょっとこれは可哀そうだなと思ったのが、お気に入りの侍女と片思いのウォルター・ローリーの結婚。

 

侍女を殴るわ罵るわの激怒っぷりで一国の女王にあるまじき行為ではあるのですが、ちょっと同情せずにはいられません。ウォルターよ、結局若い小娘が好きなんかと、年増の力あるバリバリ働く女は好かんか?そうかそうか…、ふざけるなー!(゚д゚#)ノ

ってなりますよね~、それでなくてもロバート・ダドリーとのつらい出来事があったのにまたこれかい!とはなります。

 

またこの時、メアリー・スチュアートの処刑や信用している重臣のフランシスの弟が自分の命をつけ狙うなどの災難もあり精神的にはズタボロ状態。そんな中ですがるものって言ったら仕事しかないよねってな具合で、アルマダの海戦へと望んでいくのです。

 

派手で艶やかな衣装や特殊な真っ白い化粧など、煌びやかではあるのですが、最初から最後まで一貫して心に残るのは寂しさや孤独といった感情でした。国のためにはこれしかなかったのかもしれないのですが、エリザベス1世はさぞかし寂しかったでしょう。実際晩年は鬱を患い、4日間座り込み息絶えるという衝撃的な最期を迎えているのです。まるで即身仏のよう!

幸いこの作品ではエリザベスの死去までは描かれておらず、暗い気持ちのなることはないので安心してください。

 

歴史ものですが、話の進み具合もテンポが良かったですし、音楽も素晴らしく衣装も目を見張るものがあり飽きることがない作品です。私のように歴史ものとかが苦手な人でも難なく入り込めると思うので是非是非ご鑑賞あれ。

 

ブリグズビー・ベア

 

2018年に公開された作品です。

 

ブリグズビー・ベア (字幕版)

 

ざっくしあらすじ

沙漠化した地球で父と母と小さなシェルターで暮らすジェームズ。彼の楽しみは毎週ポストに届く「ブリグズビー・ベア」のビデオ。日常に潜むあらゆる不思議なことは全てブリグズビーが教えてくれるので、ジェームズは何の疑いも持たず25歳になろうとしていたそんなある夜。警察がシェルターに押し寄せジェームズを保護し、両親は逮捕されてしまいます。実際は、25年前に誘拐され外の世界とは隔離し育てられていた被害者だったのです。初めての「外の世界」に困惑しっぱなしのジェームズ、そんな彼の唯一の望みは「ブリグズビー・ベアの最新作を観ること」それだけだった。

 

監督のデイブ・マッカリーと脚本のケヴィン・コステロと主演のカイル・ムーニーは中学校時代からの幼馴染だそうで、監督のデイヴ・マッカリ―はコメディユニットとしてyoutubeのチャンネルも持っているそうです。

偽父を演じたのは、あのマーク・ハミル!「ブリグズビー・ベア」のビデオの内容が若干SFチックなので、このキャスティングにはニヤリとしました。

 

誘拐・監禁モノと言えばブリー・ラーソンがオスカーを受賞した「Room」が記憶に新しいですが、本作はポップな誘拐・監禁モノとなっており、恐怖感はゼロです。主人公のジェームズの部屋なんかブリグズビーグッズで埋め尽くされており、とっても可愛い部屋なので私もここに住みたいと思ったほどでした。ジェームズが着てたブリグズビーのTシャツも可愛かったなぁ、結構本気で欲しいです。

 

25年も隔離されて生きてきた人間が、いきなり外の世界と触れ合わなければいけないなんて考えただけでも難しいですよね。ジェームズも最初は困惑してしまいますが、ここでも「ブリグズビー・ベア」の存在が彼を支えてくれます。

このブリグズビーは偽の両親の「愛の形」なんだと思うのです。方法は悪いのですが、ジェームズを純粋で想像力豊かな賢い子に育て、しっかり愛情を注いでいたことはジェームズというキャラクターがしっかりと表していましたし、逮捕されるときにマーク・ハミル演じる偽父がジェームズに掛けた言葉もジーンと来るものがありました。

 

スターウォーズシリーズでおなじみのマーク・ハミルですが、今作の演技は最高に良かったと私は思っています。何なら、スターウォーズよりいいと思います。短い出演時間ですがきっと記憶に残ります。

 

一つのことに向かって沢山の人の協力を得ながらドンドン突き進んでいくジェームズの姿は観ていて心がほっこりします。「ブリグズビー・ベアの半分は優しさでできている」と言っても過言ではないと思います。観終わった後はニッコリしたいなという気分の時にはもってこいの作品です。

 

是非是非

 

ジュリー&ジュリア

2009年公開の作品です。

 

ジュリー&ジュリア (字幕版)

 

ざっくしあらすじ

1949年アメリカ人のジュリア・チャイルドは食べることと料理が大好き。彼女は外交官の夫がパリに転勤になったのをきっかけにフランス料理を学び、その後500以上のレシピをまとめた料理本を出版し大ベストセラーになった女性です。レシピ本出版から約50年後、このジュリアのレシピを1年かけて制覇し、それをブログにしようと奮闘しているOLのジュリー・パウエル。彼女は刺激もなく、冴えない日常を少しでも変えるべく始めたブログはジワジワと人気になっていきます。

 

監督は、「ユーガットメール」「めぐり逢えたら」などのノーラ・エフロン

キャストは、粘り強く周りを明るくしてくれるジュリア・チャイルド役に「ディアハンター」「ソフィーの選択」「永遠に美しく」のメリル・ストリープ

冴えない派遣OLのジュリー・パウエル役に「魔法にかけられて」「メッセージ」「アメリカンハッスル」などのエイミー・アダムス

 

私も食べることが大好きで、映画や本を読んでいてもその作品の内容よりほんの少ししか出てきていない食べ物のことしか記憶していないときがあります。

例えば「戦場のピアニスト」は、パンとジャムをむさぼっているシーンや「ひまわり」では卵をたーくさん使ったオムレツ、「サンキュースモーキング」は星条旗が刺さったパイしか記憶に残っていなかったりします。

なので、ジュリアとジュリーが美味しそうに料理を食べているシーンは食いしん坊な私には最高でした。

 

料理や食べるだけではなく、一人の女性が自分の力でぐいぐいとステップアップし社会に出ていく過程やその難しさや葛藤も丁寧に描かれていました。特に、ジュリアが男性しかいない名門の料理学校へ入学し、周りからなんと言われようが持ち前の明るさとユーモアのセンスでどんどんと周囲の人間を虜にしていく姿には尊敬してしまいました。辛いときにユーモアで乗りきれる人ってなかなかいないと思います。

一方のジュリーは焦りや惨めさがダダ漏れなOLで、失敗するとすぐに泣きだすような女性です。ですがジュリアのレシピを作っていくにつれ、少しづつ明るい方向へ進みだしていくのですが、どうも私はこのジュリーに共感することができなかったのですよねぇ。

 

最初はブログでちょいと有名になりたい!という目的で始め、試行錯誤しながらレシピをクリアしていく姿は応援したくなるのですが、徐々にジュリアにも認めてほしい的なことをほのめかしていくのが卑しいなぁとしか思えませんでした。そりゃ、ジュリアに「不愉快だ」と言われても仕方がないですよね。

 

ジュリアはいろいろな困難を乗り越えてレシピを世に出したのに、その努力の結晶をドブに沈めるようなやり方で面白おかしくブログにされたらたまったもんじゃないです。(映画の中ではきれいな感じでブログを書いていましたが、実際はあまり品がいいとは言えない言葉を並べていたようです。)

 

ただ、メリル・ストリープはいつものように上手かったですし、エイミー・アダムスのショートヘアもとってもキュートで、「魔法にかけられて」の時よりも可愛かったです。海鮮モノが苦手な私ですが、この作品に出て来るロブスター?オマールエビ?(失念!)料理は食べてみたくなりましたし、カラフルなオーブントーストも捨てがたいです!

 

料理は苦手だけど、食べることは大好き!という人もこの作品を観たら簡単なものでもいいから何か作ってみようかな?という気分にさせてくれます。「失敗したって大丈夫!なんとかなるわ!」とジュリアが背中を押してくれます。

 

ボナペティ!

 

 

赤い風船

1956年公開の作品です。

 

 

ざっくしあらすじ

登校中のパスカル少年が街灯に引っかかっていた真っ赤な風船を見つけ、その風船を手に取ります。パスカル少年はその風船を大切に扱い、雨にも濡らさぬようにします。すると、赤い風船は感情を持ち合わせているかのようにパスカル少年の後をついていくようになり、パスカル少年と赤い風船の間には不思議な友情が芽生えます。

 

監督はアルベール・ラモリス。商品詳細にもあるように「白い馬」の監督でもあります。この監督、結構凄い方で、ヘリコプターでの撮影中の振動によるブレを起こさないようにしたシステムを開発したり、ボードゲーム「リスク」の発案者でもある方です。残念ながら、1970年に撮影中の事故でお亡くなりになっていますが、その撮影していた作品は奥さんと監督の息子でこの作品の主人公でもあるパスカル氏が引き継ぎ完成させています。

 

ジャケットや大まかなストーリーだけだと、とっても可愛らしい作品と思っていましたが、実は結構怖い作品なんです。

 

確かに、途中まではほんわかした可愛らしい展開なのですが、近所の悪ガキ達が登場してから物語は一変し、風船が攻撃されてしまうというなんとも非情な展開になります。必死に風船と少年は逃げるのですが風船は割られてしまい、少年はひどく悲しみます。

問題はこのあとなんですが、なんと!街中の風船がパスカル少年の元へ集まり、少年を空高く舞い上げ、飛び去ってしまうのです。

 

ハーメルンの笛吹き男」を彷彿とさせるラストシーンが妙に不気味でした。可愛らしいパスカル少年と健気な赤い風船が尚更そうさせてしまうのですが、無茶苦茶複雑な気持ちになりました。

 

一つ一つのシーンはとてもビビットな質感でどこをとっても絵になるシーンばかりですし、こんな不思議で不気味なストーリーを考えつくなんて凡人ではできないです。凡人であれば、きっとラストは誰もが「よかったぁ!」と思えるようなベーシックなものにすると思います。それをあえてしないところが凄いですよね。

 

外側は綺麗で可愛いけれど、中身を見たら声にならないほど気味の悪いおもちゃ箱のような作品、と私は思っています。これは、貶しているわけではなく最高の誉め言葉です。実際「ハーメルンの笛吹き男」の話だって、何世紀にも渡り伝え続けられていることでもわかるように、パッと見は可愛らしくてもよく見ると不気味で恐ろしいものに人は惹きつけられるようになっていると思うからです。

 

是非是非